詩16
    窓
               2005.2.20
窓にあるのは
白い雲
雲の形が面白く
何時までも飽かず見ていた
幼年期

窓にあるのは
白い雲
雲の形が龍に見え
消えるまで飽かず見ていた
少年期

窓にあるのは
白い雲  ひと
雲の形が女に見え
うっとりと飽かず見ていた
青年期

窓にあるのは
白い雲
雲の形が母に見え
懐かしく飽かず見ていた
壮年期

窓にあるのは
白い雲
何時まで見てても白い雲
思うのはただそれだけの
今の吾
          

  或る風景
           2005.2.26
丘の上に並び建つ
二つの高層ビルに
挟まれて
一つの尖った峰が聳える
今日は
粋な帽子を被っている



   粉雪の舞う街角
                  2005.2.26
粉雪の舞う街角
女がひとり立っている
恋人を待つのであろうか
いつまでも立っている

粉雪の舞う街角
彼女はいつまでも立っている
手袋の手を擦りながら
辛抱づよく立っている

粉雪の舞う街角
雪はしだいに激しく
冷たく頬を打ちつづけるが
待ち人はまだ現れない

粉雪の舞う街角
いよいよ激しく舞う雪片
嘗て 僕も女(ひと)を待たせた
同じ場所


   故里の小さな橋
                2005.3.5
故里の小川に架かる
小さな橋
此処から
私の旅は始まった

隅田川に架かる橋
瀬戸の大橋
いくつもの橋を渡り
私は旅を重ねた

遠くはセーヌに架かる橋
ロンドン橋
心をときめかし渡った
数々の橋

だが
いつも心にあるのは
故里の小川に架かる
小さな橋
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