詩96
   偶感
              2012・12・15
時が過ぎゆく
ああ 時が過ぎてゆく
落花が舞うとき
もっとも
それがはっきりわかる

時が過ぎゆく
ああ 時が過ぎてゆく
落葉が散るとき
もっともっと
それがはっきりわかる


    落ち葉
                2012.12.30
わたしは珈琲を飲みながら
窓の外を眺めている
窓の外では
しきりに落ち葉が散っている
いま わたしは虚しい気持で
それを観ている
すると───
落ち葉は
こころの中にも
降ってきて
だんだん 溜まり
わたしの空虚なこころは
やがて 落ち葉で一杯になる
溜まった落ち葉は
わたしの中で
乾いた声を発し
冬を想い起こさせ
わたしの想念を
ひたすら暗鬱にしようとする
わたしは
この落ち葉に火をつけて
燃やしたいと思う
そして
命の炎を燃え立たせたいと思う
   冬の川にて
              2012.12.30
冬の川に
子どもがふたり
大きな石をかかえては
ほうり込んでいる
ふたりは多分兄弟
大きな石をかかえては
かわるがわる
競うようにほうり込み
甲高い声をあげている
川原には
他に人影はなく
冬の川には
すぐに死んだような静寂がもどってくる
子どもたちは
その静寂に耐えかねて
より大きな石をほうる
だが またすぐに静寂──
枯れ葦原には
白鷺が一羽凍ったように立っていて
動こうともしない

      散歩の途中に目撃して


   水仙    
             2013.1.14
庭より
剪ってきて
妻が
水仙の花を活けている
透き通ったガラスの花瓶に
活けられた
水仙は
みな少しうつむいている
恥らっている
     初めて会ったときの
             妻のように
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