詩97
   冬の虹
               2013.1.15
何気なく
窓の外を眺めたとき
冬の虹をみた
虹はすぐに
消えた
わたしはそれを
だれかに告げようとはしなかった
わたしは確かにみたのだが
でも それは
幻のようでもあった
幻であれ
現であれ
冬の虹は
きょうのわたしの心の風景を
美しく彩った

わたしはそのことを
思い出しながら
夢路についた

 反歌
冬の虹消えゆくときに見しことを
      思ひ出しをり夢路の前に


  水仙
 その2
              2013.1.20
老妻が
庭から剪ってきた
水仙を
水盤に活けている
手は生き生きと動いている
手は若々しく働いている
ああ
手は若い
ぼくのネクタイを結んでくれた
ときのように
人に言うべきことでもないが
 
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   水仙 その3
              2013.1.22
里に帰ったときの
里の土産は
水仙だった
新聞紙につつんでくれて
母は
──田舎には何もないから
と 何か恥らって
持たせてくれた
わたしには水仙は何よりも有難かった
それは 妻を喜ばせたから

母は
すでに亡くなってしまったが
妻は好んで今でも
水仙を飾る
妻が
形見の陶器の壺に活けた
水仙を見ていると
その花をかしげた姿が
わたしには
何か恥らってでもいるかのようにみえる
あの時の母のように


  冬休みのグランドで
           2013.1.23
冬休みの
子供たちのいないグランドを
落ち葉が
走っていく
落ち葉は
北風に吹かれ
勢いよく走っていく
時々休憩もするが
すぐにまたダッシュして
広いグランドを
誰にも邪魔されないで
走っていく
ああ
わたしも
あのように走ってみたい
何にも邪魔されないで
思い切り走ってみたい
───人生のグランドを