詩95
小石
2012.11.9
何気なく小石を拾った
なぜか捨てがたく
その小石を手のひらにのせて
眺めていた
すると 一つの記憶が
よみがえってきた
幼い日
小石を投げて遊んだ記憶
小石は逸れて
一人の少女の頭にあたった
ああ、あのときの少女の顔───
あの少女はいま何処に
わたしは小石をギュと握りしめた
───記憶を握りつぶすように
枯葉
2012.12.8
師走の街角を
わたしは歩いている
わたしの前を
枯葉が音をたてながら
忙しく走っていく
枯葉は風に追われて
つぎつぎと
走ってきては
追い越していく
わたしの脚にまといつくのもある
わたしはふと思い出す
あの シーンを
昔観た 白黒映画のワンシーンを
枯葉が孤独な主人公の脚にまとわりつく
あのシーンを
そしてまた思う
今のわたしを
久住 2012年11月19日
2012.11.19
晩秋の
高原
なびくススキの
彼方に
横たわる阿蘇
今日の阿蘇五岳は
あいにく 雲を被り
まるで 横たわる巨人が
布団を着ているようだ
その根子岳の上
それは横たわる巨人の
顔のあたり
雲間から漏れる陽光が
斜めにさし
金色に照らしている
ああ この光景の神々しさ
わたしは
思わず掌を合わせた
そして思う
阿蘇は
横たわる大きな仏だと
偶然出合った光景をとどめる