詩88
  スケッチ
            2012.6.28
雨上がりの
アジサイの葉の上を
蝸牛が這っている
蝸牛は角を出している
─愛らしい威嚇
にっこり笑って
太陽は
また雲に隠れた

       余白のために


   雲の顔
           2012.6.15
窓に白い雲が
ぽっかり浮かんでいる
ぼんやり眺めていると
雲は人の顔になってくる
雲の顔は ほほえむ
それは もう歳をとることのない
友の顔
ああ なんという穏やかさ
君をおそった運命の過酷は
その顔にない
君は天の人となり
ほほえみかける
そして ぼくの孤独をなぐさめ
寄り添おうとする
君の顔が
歳をとらないのは悲しいが
とまれ
君に会えるは幸せーーー

    親友 牧典功の面影に
   示現
            2012.6.30
紫陽花の花を見ていると
人の顔に見えてくる
それは一つの顔
でも まだ誰の顔でもない
その誰のものでもない顔に
わたしは
次々に顔を重ねていく
母の顔
父の顔
親友の顔
叔父たちの顔
祖母や祖父の顔もーーー
(それらはもうこの世にいない人の顔)
すると
不思議なことに
顔は 輝きはじめ
次第にはっきりとした
一つの顔になってくる
それは──仏の顔


   スケッチ
             2012.7.3
ふりしきる雨の中
アジサイの花が咲いている
わたしは
窓に寄ってそれを眺めている
アジサイの花は
首をしきりにふって
うなずいている
─何をうなずいているのか?
雨のふる日は 憂鬱で
わたしは とても不満なのだがーーー
アジサイの花はうなずいている
雨の降る日もまた好し 
好し




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