詩86
  春の川 スケッチ
          2012.4.10
春の川原で
こどもたちが
石を投げて遊んでいる

石を投げて
こどもたちは
春の流れを確かめている

春の流れは怒らない 
やさしく石を受けとめて
ゆったりと流れていく

あまりにゆっくりなので
今度は こどもたちは
石を投げて急かせている
  
  こどもたちがいつまでも石を投    げるのに興じて


  スケッチ
        
2012.4.9
桜の樹の下に
乳母車が置いてある
母親らしき人は見当たらない
乳母車の中では
赤子がぐっすり眠っている
赤子は洟提灯を灯している
花は盛りを少し過ぎたころーーー
花びらが
一枚
ひらひらと舞ってきて
寝顔にとまった
      蝶のように
  菜の花と蝶  スケッチ
           2012.4.14
菜の花の上を
蝶々が二羽飛んでいる
くっついたり 離れたり

二羽の蝶々は恋人同士?
恋人たちに
世界は輝くーーー

二羽の蝶々が
いま 飛んでいるのは
黄金の花の上


  五月の朝
           2012.5.12
朝、目覚めると
どこかで鳩が鳴いている
団地の無数の屋根々々の
どこかの屋根の上でーーー
誰の屋根の上だろう
わたしは暇な想像をめぐらす
目には見えないが 鳩は
心には見える
そう 鳩だけが
わたしの心にはっきり見える
どこかの誰かの屋根の上で
鳩は いつもと変わらない
平凡で退屈な
一日の始まりを告げている
爽やかな五月の朝
鳩は 団地全体に
しっかりと
「平和」を告げている


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