詩85
  メンタル スッケチ
                2012.4.1
菜の花のなか
ひとりの少女が蝶々を追っかけている
蝶々はやすやすと手を逃れ
てふ
   てふ
       てふ
と逃げていく
少女はそれでも懸命に
蝶々を追っていく

昼間見た光景を
ぼくはベットで
また思い出す
目を閉じると
ぼくの目の中で
少女は
まだ蝶々を追っかけていく
どこまでも
      どこまでも
ぼくは目を開ける
すると 少女は消えたが──
蝶々はなおも
てふ
   てふ
      てふ
と飛んでいて
こんどは
ぼくが蝶々を追っかけていく
遠い遠い思い出の中へと
 
     「少年の日の思い出」
     スケ
   スケッチ
                2012.4.6
草土手の斜面で
子どもが
タンポポの絮を吹いて
飛ばしている
土手の上では
お母さんらしきひとが
それをあったかく見守っている
タンポポの絮は
次々に飛んで
川を渡っていく
無事に向こうの世界に
渡っていけるのか
途中で落っこちはしないかと
土手の上の
お母さんは
多分 そんなことも心配しながら見ている
母親というものは
何かとよけいな心配をするものだ
から


   四葉のクローバ   
               2012.4.6
その昔 ぼくの彼女は
しきりに四葉のクローバを探した
その後 ぼくらは別れたが
四葉のクローバが見つからなかったせいでもない

いまの妻も
よくクローバの四葉を探す
四葉のクローバは見つからないが
ぼくらはまだ別れずにいる

クローバの四葉が見つかるかどうかは
偶然、あるいは確率による
確率は神のふるサイコロ
神はサイコロを楽しむ

そこで
人もまたささやかだが
神の遊びを真似してみる
自分の運命を見ようと

反歌
クローバの四葉を探すわが妻の
         若き日の癖いまも変わらず
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