詩82
   電信柱 
               2012.1.10
窓から見える
由布と鶴見の
二つの峰
寄り添うように
並び立つ その姿は
仲むつまじき夫婦のよう
日々 見せつける
その姿に
わたしはいつも比翼連理の
夫婦の理想を重ねる

ところで───
この眺望を阻む
一本の電信柱
丁度二つの峰の真ん中あたり
そう 丁度真ん中あたりに
意地悪にそびえ立つ
一本の電柱
あさましく風景を割き
        目の邪魔をし
憎らしくも
比翼連理の姿を打砕こうとする
常々 わたしは
この電柱をうとましく思うのだが───

だが この電信柱に
喝采を送りたくなるときがある
────いつもいつも眺めていると

       邪魔な電信柱に

  ある肖像画
   レンブラントの自画像に
               2012.1.19
一枚の肖像画

その唇は
微笑んでいるのか
或いは
嘲っているのか

その目は
何かを訴えているのか
或いは
虚ろなのか

その顔全体は
安らいでいるのか
或いは
悩んでいるのか

不条理に満ち満ちた
その顔の主は
いったい誰なのか

額に刻まれた
一本の
深い皺──

ああ
その顔は
誰のものでもない!
 
─反歌

歩み来し道異なれど老ひの顔  
         額に刻む皺は似るかな
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