詩9
詩人
2004.10.16
詩が生まれると
詩人は大急ぎでそれを書き留める
大抵は メモ用紙か何かに
つまり
詩は書かれる以前に
すでに心にある
この論を突き詰めていけば
詩が心にあるが
「詩を書かない詩人」
という逆説も成り立つ
そして
そのような詩人がきっと沢山いる
逆に
上手に言葉巧みに書かれているが
あまり心が感じられないという
詩にもよく出会う
そのような
「詩を書く詩人」もいる
そして 恐れる
それが自分ではないかと
「蝶」
2004.10.30
疲れた通勤の帰り道
立ち寄った書店で
ふと手にとった詩集
何気なくめくったページに
「蝶」
という詩があった
わずか三行の短い詩であったが
こころは
蝶のように自在で
言葉は 輝いていた
たった一つのその短い詩のため
私は専門書をあきらめて
ついに「詩集」を買った
詩集を手にすると
蝶のように軽やかになり
足は地を離れていった
やまなみハイウエー
2004.11.3.
招く芒のなかを疾走する
一台のオープンカー
サングラスを掛け
髪を靡かせ
カーステレオに
ジャズを響かせ
ぐいとアクセルを踏み込めば
世界は
永遠に 青春の輝き
前方に 誘惑する白い雲
追いかけても
追いかけても
どこまでも 逃げていく
空5
2004.11.6
いつも見上げる
青い空を
何処までも上っていってみても
何もない
青い色など存在しない
空の色など空にない
空に空の色などないことは
誰もがすでに十分に
知ってはいるが
地上に立って見上げれば
やはり青い空がある
大空を仰いで思う
その不思議
凡夫にあまる大きい謎
観自在菩薩はとき給う
「色不異空」
「空不異色」