詩81
   駅前の噴水に
               2011.11.15
わたしが長い旅から帰ってきたとき
お前は
いつも美しい虹をかけて
わたしの帰還を祝ってくれた

わたしが遠い旅に出発する、そのとき
お前は
しきりに身を揺すって
わたしの旅立ちを見送ってくれた

わたしは老いてもう旅をすることはない
それでも
わたしは度々此処にやってくる
わたしの旅をお前に語るために
  
          大分駅前の噴水          

  黄金の時
             11.12.12
銀杏の並木道を
女が歩いてくる
毛皮のコートを身にまとい
ひとりやってくる
銀杏の落ち葉の
黄金の絨毯の上を
軽やかに しとやかに
貴婦人のようにやってくる
美しい羽根飾りの帽子───
その顔はまだ見えない
落ち葉が小鳥のように
舞って
黄金の時が輝いている

だが
女はなかなか近づかない
美しい羽根飾りの帽子は
いっこうに近づこうとしない
その顔は見えない
いつまでたっても
いつまで待っても
そう
黄金の時はすすまない
時は永遠に止まっている
─────額縁の中では
   パロディー
            2011.12.8
わたしは鳥篭の絵を描く
鉛筆か
あるいは クレヨンで

ただし
鳥篭の戸は開けておく

そして待つ 辛抱強く
するとどこからか鳥が飛んできて
鳥篭の中に入る

そこでわたしは鉛筆でそっと戸を閉める

鳥はやがて鳥篭の中で歌いだす
美しい声で

明るい森の
メロディーを
快活に
楽しげに
嬉しげに
いつまでも
歌い続ける

だが 歌声は
次第に
重くなり
暗くなり
悲しくなる

そうしたら
わたしは消しゴムで戸を消して
鳥を逃がしてやる

鳥は飛び去っていく
一枚の羽根を残して
    鳥がいた証拠にと

わたしは
鉛筆でその羽根を丁寧に描いてから
羽根を取り出し
絵にサインを入れる
─────その羽根で

  ジャック・プレヴェールの「鳥の肖像を
  描くために」のパロディー
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