詩80
白鷺
2011.10.9
白鷺が一羽
水辺に佇んで
じっと水面を見つめている
静かな時間が流れ
秋の午後の日差しがやわらかに
照っている
白鷺は動かずに
いつまでも立ち続け
澄んだ水面には
美しい姿が映っている
──軈て
白鷺は飛び立ったが
水に映った白鷺の影は
まだ暫く川面をさ迷い続けている
白鷺は影を置いていったらしい
────あまりに美しいので
七瀬の淵にて
落ち葉
2011.10.15
落ち葉が
散っている
私はベンチに腰掛け
それを眺めて
無為の時間を過ごしている
落ち葉は
目の前をせわしく舞って
散り
なぜか、私の心を乱す
───私は眼を瞑る
それでも
落ち葉は散り続ける
今度は
私の心の中で
また一枚、また一枚、また一枚と
絶え間なく繰り返される落下
果てしのない凋落
いたく私の心はかき乱される
私は想いをいたす
すると、死が、
あまたの人の死が
重なって見えてくる
叔父たちの死、
恩師の死、
同僚の死、
親友の死、
そして、今まさに死に赴こうとしている
母の姿
───私は眼を開く
落ち葉は やはり
相も変わらず
一枚、一枚、また一枚と
秋の午後の柔らかい日差しを受けて
静かに舞って散っている
だが 私は気付く
この落ち葉を優しく受け止める
手があることに
全ての落下を受け止める
大地の大きな手があることに
庄内カントリーパークにて
ある森の池
2011.10.29
この森の奥深くに
ひっそりとある池
ひねもす
空を映し
雲を映し
静かに湛えて
鏡のごとし
秋くれば
いつもやってくる
白鷺一羽
己が姿を
映し見るため
青少年の森の池