詩77
あやめの池にて
2011.6.22
雨の降るなか
あやめの池を
二人の若い男女が覗いている
一人は傘を畳んで
二人は一つの傘におさまって
仲良くあやめの花を観ている
あやめはいたく雨に打たれて
ぐったり花びらを垂れている
二人は何時までも
池を離れずにいる
雨はいよいよ強く降ってくる
それでも二人は
離れずに眺めている
二人は本当に花を観ているのであろうか?
花は二人に見えているのだろうか?
二人の眼まなこはどこか上の空
それでも やはり二人には
──花は見えている!?
そう 花は見えているに違いない
誰よりも見えているに違いない
二人の脳裏には
確かな花の記憶が刻まれている
雨はいっそう強く降っていて
二人は なおも
池を離れずにいる
雀
2011.7.3
屋根の上で
雀が囀っている
雀の囀りはいつも楽しそうだ
雀は絶えずアッチコッチと
忙しく体を動かし、頭を動かし
時には
首を傾げたりもするが
雀は忙しくて
悲しむ暇がない
人間は時間をもてあまし
考え悩んだりするが
雀にはそんな時間はない
せわしく
時間を引っかきまわし
引きちぎり
過去も未来も雀にはない
雀にあるのは
ただ現在だけ
今を生きて楽しむだけ
夏休みの小学校
2011.8.11
夏休みの小学校では
ひまわりの時間が
しずかに過ぎている
にぎやかな子どもたちの姿は消え
校庭では
蝶々が蝶々を追っかけている
ひまわりの時計には
針がないので
だれもチャイムを鳴らせない
トンボが一匹
ブランコにとまって
休憩をとっている