詩78
希望の輪
2011.4.? 2011.8.20
多分高校生たち
街角に横一列に並んで
何かの募金をしている
四角い箱を首からぶら下げて
何度も何度も丁寧にお辞儀をして
道行く人々に呼びかけている
どこか遠い国の
被災者に送るのだと───!
ああ
無垢の善意
ぼくらは度々このような光景を
目にする
彼らの集める金は
いかほどになるのだろう
多分 有名人の巨額の寄付などには
はるかに及ばないだろう
それでも国中で集められた金額の
総計は
かなりのものになるらしい
名もなき彼らのささやかな善意と
そして
その努力に報いようとする
これもまた名もなき多くの人々の
ささやかな善意───
これはもう金額の問題ではない
これは手をつなぐ者たちの
地球を巡る連帯のあかし
人類の未来を予知する
希望の輪
この春 そのような善意が
巡り巡って
遠い国々から
今度は日本に送られてきた
───復興へのメッセージとともに
東日本大震災にあたって
朝日をあびて
2011.9.7
朝日をあびて
若い女性が
足どりも軽くやってくる
多分 母になったばかり!
赤ん坊を
前に抱えてやってくる
丸々と太って重そうに見える
赤ん坊を
軽々と抱えてやってくる
そう 実に軽々と
まるで重さがないかのように
彼女は抱えてやってくる
この不思議
愛の力
万有引力の力はかなわない
鳩
2011.9.17
朝、窓を開けると
一羽の鳩が
羽根を落として
飛び去っていくのが見えた
私は急いで
表に飛び出して
その羽根を拾い
手のひらにのせた
その羽根をしばらく
眺めていると
鳩はまた舞い戻ってきて
私の中に住みついた