早春の丹沢山2012.3.24〜25

3月24日 曇り時々みぞれ
 豊田駅にて鈴木君の車にピックアップしてもらい、40kmほど車を走らせた塩水橋ゲートが本日の登山のスタート地点。ここは標高415mくらいだが、付近の沢にわずかな残雪が見られるあたり、上部の積雪量が想像される。

 まずは林道を本谷川伝いに25分ほど上がっていったところが、天王寺尾根の取り付き(標高565m)で、杉・ヒノキの植林帯の急勾配を登っていくと、辺りに次第に残雪がその量を増してくる。

「雪国・仙台のこの時期、雪深いため例年山はお休みで体力も低下しておりますが、最近通勤に自転車を使うようになったせいか、春先のこの時期としては体調がすこぶる良いですよ」、「私も、いよいよ残すところあと1年になりました。終の棲家は、東京、関西、大分など、いろいろ考えますね」などと、鈴木君の近況などに耳を傾けているうちに次第に雪深くなり、おまけにみぞれが降り出し、快適な陽春の丹沢を想像していたのに、結構な春山の出迎えとなった。

 
     天王寺尾根上部の残雪帯を行く

 塩水橋のゲートから約4時間で丹沢山(1587.1m)山頂に建つみやま山荘着。山荘の周囲は積雪約1m。当初予定では最高峰の蛭ヶ岳まで往復3時間のピストンのつもりであったが、みぞれとあってはその気が萎えてしまい、山荘にて遅めの昼食をつくったのち、今宵の宿でもある山荘にそのまま落ち着くことにする。

 この山荘は蔵書が豊富で、前回泊まった時は自炊コーナーでのんびり談笑したり、思い思いの山岳書を取り出したりとゆっくりした山小屋の過ごし方ができた。今日ここに早く落ち着くことにしたのも、そのような山小屋の過ごし方を期待したからなのだけれども、山荘のおかみによると「今日は布団2枚に3人よ」とのことで、しばらく本など読んでいるうちに、気が付けば次から次に登山者が入ってきて、思惑がはずれてしまった。

そういえば前回は平日の登山だった。そんなわけで、そそくさと2階上段に割り当てられた自分の布団に引っ込んでしまった。それでも東京緑山岳会の創立30周年記念誌「登攀」の中に、我が青年時代の登高会を重ね合わせたり、その稀有な生き様に惹かれる、クライマー・森田勝の足跡を垣間見たりと、それなりに山小屋ならではの楽しみ方ができた。

 夕食までの時間、与えられたわずかなスペースに陣取り、お決まりの、政治、経済、年金、健康問題、震災、原発とひとしきりの話題が出尽くした後は取り留めのない話で旧交を温めた。夕食は焼き肉、高野豆腐にご飯とみそ汁、それにモモのデザートまで付いて首都圏の山小屋の食事にしてはまあまあであった(一泊二食で7000円)。



3月25日 晴れ

 昨日と打って変わった快晴。しかし風は強い。山荘から目と鼻の先にある丹沢山山頂に立つと、強風が春霞を吹き飛ばしてくれたのか、眼前に富士の威容が迫る。記念写真を撮ったのち、右手に富士山を遠望しながら凍てついた稜線を足元に注意しながら約1時間で塔ノ岳着。ここからは、三浦半島から関東平野一円が眼下一望のもとだ。地元住人・鈴木君の説明に耳を傾けながら江の島、東京スカイツリーなどなど、一つ一つ確認していく。

              
                 日当たりのよい南西面に残雪はなし

 塔ノ岳からは進路を東にとり新大日から長尾尾根経由で昼前に塩水橋ゲートに着き、2日間の山行を終えた。

                 
                                今回の案内人

 丹沢山は今回が二度目。一度目は、季節は4月、大倉尾根経由で蛭ヶ岳の山頂を踏み、みやま山荘泊、翌日、新大日から表尾根〜ヤビツ峠まで歩いた。今回二度目で丹沢山塊の東面の概念が少しだけ頭に入ってきた。この山は当初想像していた以上に奥深く、特に蛭ヶ岳から西面など、まだまだ魅力ある山域が拡がっている。

 首都圏に最も近い、岩登りや沢登りできる山域とあって、歴史的にも興味深い。例えば、旧制中学時代山に目覚めた松濤明が親しんだのもこの山域だし、奥山章、安川茂雄など第二次RCCの青春群像が応召前エネルギーを注ぎ込んだのも西丹沢雨山峠一帯であった。そういう色々な先人とこの山域との関わりを知るにつけ、しだいに西丹沢方面に気持ちが傾いてきた。彼らに思いを馳せるためにも、今後とも、主に初冬〜初春までの間に、機会あるごとに、この山に足を踏み入れたいと思う。

 鈴木君には前回12月の両神山に続いて今冬二度目の関わりであった。あらためて感謝感謝、である。(2012.4.4,狭間記)

(コースタイム)3/24 塩水橋 3/25 みやま山荘6:51→塔ノ岳7:57→新大日8:47→キュウハ沢分岐10:47→天王寺尾根取り付き点11:19→塩水橋ゲート11:42

                          トップページへ