オオヤマレンゲを求めて
                   加藤英彦

 昨夜は「祖母傾完全縦走を称える会」でおおいに盛りあがり寝たのは12時すぎていた。それなのに今朝は4時すぎには起こされた。部屋のテレビはサッカーのイタリアーポルトガルの一戦のLIVEをやっている。

 あれやこれやでくじゅうクラブをでたのは8時30分をすぎていた。
幻の花、この時期にしか咲かない花 オオヤマレンゲに会いに登るメンバーは塩月君、渡部さんと私の3人だ。

 オオヤマレンゲが九重に咲いているのは昔から知っていた。東千里から法華院に下る白口谷コースで中学生のころ見た記憶がある。又鳴子岳の斜面にあるともきいていた。それがことし大峯山に登り八経ヶ岳のオオヤマレンゲが鹿の害で絶滅にひんしているとききおよび、九重のそれはどうなっているかときになりだした。

 たしか1999年の6月27日大雨注意報のなか、アシックスの重広さんの企画の「ふるさと名山探訪」で大雨の中大船に登り北大船より大戸越におりるときにその花にであっている。そのときは大雨で花を観賞するなんていう余裕もなかったがその斜面には何本かの木があるとはわかっていた。

 さて天気も心配されたがなんとかもちそうだ。台風も西へそれている。大船林道のゲートまえから登り出す(9時15分)数日前の梅雨前線の大雨のため道がかなり荒れている。大水がここまであったことを示すかのような木の枝などがひっかかった状態のところがそれでわかる。3人快調にとばす。1時間で林道終点の駐車場。

 そこから平治をまくルートへ。坊ヶつるからのルートと合流するとそこから上は道が雨のためえぐれており歩きにくくなっている。大戸越着ここまで2時間5分だ。つい先日まではあれほどの大勢の登山客でにぎわったところだが梅雨どきのこの日は誰一人いない。

 しばしの休止。いよいよ北大船への登りにかかる。道はますます悪くなる。おおきくえぐれた状態になっており両方が崖のようでたかいところは2mぐらいもありそうにえぐれている。

 もうすぐにオオヤマレンゲにあえるのだとおもいながら、なおものぼる。しかしなかなか姿がみえない。船底のような崖下からみあげてみるが目につかない。たしかこのへんだったと7年前の記憶をたどる。しかしみつけられない。もう今年は終わったのか、それとも先日の大雨で散ってしまったのか、不安がよぎる。それとともにあるきにくいルートに手をやき腹もへってきた。さてどうするか。もすこし登ってみよう。荒れた岩まじりのみちはなおもつづく。

 ついにがれた沢のようになったところにでる。すると行く手の泥の中に白いはなびらが埋まった状態でおちている花をみつける。拾ってみるとまさにオオヤマレンゲのはなびらだ。よしあるぞ!上を見ていこう。するとそれから10mくらいのぼった左ての崖の上に見つけることができた。おもわず「あった」とさけんだ。やはりこのルートにはまちがいなくさいていたのだ。夢中で木の方に登る。まさに探していた花だ。匂いをかいでみる。香水のようだ。まったく表現することができないくらいな、なんとも言えない香りだ。僅か2本だけしかもここだけにしかないのだ。

          
                   ‘九重の貴婦人’との対面(バックは三俣山)

 夢中でシャッターをきる。花びらが小ぶりだ。歩いている下から見上げてもみつけにくい。葉っぱで花がかくされた状態で見えにくいのだ。しばしの観賞ののち花をまえに足場のわるいがけのようになっているところで昼食とする。

 貴婦人にめぐりあえた感激に1本のビールで乾杯だ。しばしの間その貴婦人との対面を楽しむ時間となった。しかしわかれの時はきた。丁度この位置が大戸越と北大船との中間くらいだ。このまま北大船に登ることとする。

 そこからはなおもくずれた沢の歩きにくい石のかさなった状態の登りである。振り返って花のあった方向を見ると緑の濃いなかに白い花がそこだけ見える。あとはどこにも白い花はみえない。まさにその2本の木だけしかないのだ。ほんとうに貴重な花である。それにめぐり合えただけでも幸せである。

             

 そしてそのガレ場を登りきってすぐの左手にももう1本の木があったが,花は1輪しか咲いてなかった。

 北大船1時着 段原経由大船には登らずに坊ヶつるへ。この下りのルートがまた大雨のため荒れている。崖がえぐれた状態で歩きにくい。石が露出しておりすべての土がながされたと言った状態だ。

 1時間で坊ヶつる着。ここも梅雨場のため閑散としている。法華院により暮雨コースにて下山(3時50分)。

 吉部の弘蔵岳久君にあい立ち話、先日の大雨は昨年の大雨とおなじくらいひどい雨だった。花もそのためよくないのでしょうとのことでした。

 先週もはいった馬子草(まごそ)温泉にて汗をながし今日のいい思いでをもって帰途についた。
                              (2006.7.9)

        ひこさんクラブトップページへ       おゆぴにすとトップページへ