会友・栗秋正寿君のこと
 栗秋正寿君は弱冠29歳の青年である。中高年層主体の我が‘山のいで湯愛好会’のホームページの登場人物としては、ややそぐわないと奇異に感じる向きもあろう。何といっても彼はマッキンリー、フォレイカーなど冬のアラスカ・極北の山に、それも単独でこれまで幾度となく挑んできたし、これからも挑み続ける‘アルピニスト’である。冬のアラスカといえば、マッキンリーに逝った孤高の登山家・植村直己、この不世出のアルピニストさえも拒んだ冬のアラスカ・マッキンリーに、だ。

 彼は単独で数カ月間に及ぶ冬の登攀に必要な数100kgにもなろう装備・食糧を、信じられないような忍耐・根気強さの果てに担ぎ上げ、黙々と前進キャンプを上げていく。そしてまた、想像を絶するくらいの気長さでせっせと雪洞を掘り続ける。

 それでいて、何の気負いもてらいもない。冒頭、彼のことを「冬のアラスカの山に挑む」と表現したが、彼にとってアラスカの冬の山々を目指すことは「挑戦」ではなく、‘冬のアラスカと、いやアラスカの大自然と同化する’ことのように思える。

 来る日も来る日も、いつ回復するとも知れぬ、猛烈なブリザードの吹き荒れる時は、雪洞の中でハーモニカを吹き、俳句を詠み、詩をつくる・・・・・自らを‘山の旅人’とする由縁はこの辺にある。

 こんな彼と我が会のおつきあいは、栗秋和彦会員の甥っ子ということをきっかけに始まった。叔父・和彦の命とあればこそ、ということもないではなかろうが、それよりもむしろ彼の方がおゆぴにすとの生き様に興味、共鳴を覚えた部分もある。山に関して両者間には、ジェネレーションギャップを超えるほどの共通認識があるということだろう、と勝手に都合のよい解釈をしている。

 いずれそのうち彼は、自らのホームページの中で、紀行・記録とともに自身の生き様、考え方を発信していくことになろうが、当面、当山のいで湯愛好会ホームページに‘居候’していただく。彼と私たち‘おゆぴにすと’のおつきあいを通して知り得た、彼に関するいろいろなことをこのホームページで紹介していきたい。
 私たちおゆぴにすとは、山の旅人・栗秋正寿君を見守りたい。(2002年1月、挾間記)

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