門司半島をグルッとなぞり、新北九州空港往復サイクリング敢行! 
                                                 
栗秋和彦

 日中の残暑はまだまだ厳しいが、朝夕はめっきり涼しくなり、季節の移ろいはそこはかとなく忍び寄ってくる。一方、喧騒の渦に包まれた北京オリンピックも本日で終焉を迎えたし(観なくてもいいのに、気になってTVにかじり付くんだよねぇ)、課題の残ったお盆の多客輸送も峠を越し、昨夜から今朝にかけて某地区の大がかりな切替工事も泊り込みで見届け無事終った。公私ともにひと区切りついたところで、次なる懸案事項に取りかかることにしたのだ。もちろんオフタイムの話だけどね。


 実は今春、3/23に “サイクルツアー北九州 IN 「関門周遊」” なるイベント(※1) に元同僚の金子兄と申し込んでいた。門司港レトロを始終着に門司半島をグルッと廻り、新北九州空港を往復する70kのサイクリングは、風光明媚な関門海峡を愛で、新門司の山河を駆け抜けて、長大な空港連絡橋を渡り新空港まで乗り入れて往復する、斬新かつ身近なコース設定と手頃な距離に食指が動いた。もちろんイベントに乗じないとなかなか腰を上げることもないので、それなりに期待して当日を迎えたが、無情の雨では走る気にもなれず、潔く棄権の途を選んだ。一方、主催者側も70kコースは取り止めて、近場を走る30kの部に集約して実施した模様。その意味で1回限りゆえちょっと大袈裟だが、幻の70kコースになってしまったのだ。


となると逃した魚は大きく、未練がましく一度はなぞってみたいと思う訳ですね。そしてこの思い、相棒の金子兄も同じに相違なかったが、彼の場合は後日一人で淡々と実行に移し、走りきってしまったところが己と大きく違った。相棒(筆者)に何の連絡もなく走ったという意味で不言実行なのだが (おっとあげつらうつもりはござらん)、その時のコース周辺の印象を「特に空港手前の田園地帯の道すがら、菜の花満開の中のポタリングが白眉だった」と賞賛していたのも記憶に残った。

 ならばこの宿題、いつかは片付けておかなければ落ち着かないし、己にとってこんなロングライドは7年前(01年5月)ツールド国東120kに出場して以来なので、夏の終わりの一大エクササイズとして不足のあろう筈はなく、意を決して再び金子兄に同行を願ったのだ。

 さてその同行者のいで立ちはエレガント&クラシカルさで人目を引いた。グレーのソックスに黒のニッカボッカ風パンツ、黄色のウィンドフレーカーを身にまとい、小ぶりのディバッグを斜めに背負う様は往時のモダンディズムを一身にひけらすかの如く。併せてバイクも30年前のビアンキのロードレーサーと言うからヴィンテージの域を凌駕している。まさに彼の風貌・風采にピッタリ合わせたようなバイクであって、見事に人車一体となって青年期にタイムスリップしたような雰囲気が漂っていたが、これがまっこと尊いのだ。加えてエンジンも想像以上に屈強で、いったいこの馬力、何処から来るのか、と訝るほどに。還暦おじさん、恐るべしだったのだ。

 結果、道中満遍なく引っ張って貰うことになったが、重いギヤをぐいぐい回し、特に向かい風でのグリップ位置は一貫してドロップバー下部を持つスタイルに徹し、後から見ると彼の体形とも相俟って、なるほどまんまる流線型は理に適っている。と同時に風の抵抗を最小限に抑えながらも、我が重量級MTBを引っ張ろうとする強い意志が感じられ、あっぱれと言うしかなかった (あぁ、有り難や)。

      
          夏雲と青い海、海上連絡橋を北上する金子兄 三態 (空港ターミナルビルまであとわずか)

 一方でコースの描写となると、自宅(大里)を始終着に国道199号から門司港レトロを突っ切り、和布刈(めかり)公園の突端を廻り、田野浦からは旧道峠道(県道72号)を白野江へ抜け、新バイパス道の大積トンネル〜柄杓田トンネル経由で新門司工業団地 (の一角、阪急フェリー乗り場)までがおよそ1時間。ここまでは序盤から中盤にかけてなのでまだまだ元気、かつホームコースゆえに淡々とペダルを回したが、田野浦海岸からの南下ルートは概ね追い風だったことも快適サイクリングの要因足り得たものと思う。

 で県道25号を経て葛原4丁目交差点から曽根へ入り、旧空港前を通り東進するまでは、交通量も多く何の変哲もない一級道だったが、途中でやおらこれを北へ取り、間道を曽根新田に入ったところからが、未知のゾーンとなった。それは一気に田園地帯のポタリング気分に浸るコースとも取れたが、おっとしかし「ポタリング気分」は表現上のアヤであって、現実は人も車も通らない農道上を、ビアンキおじさんの強力な引きや、負けじと前を伺うMTBおじさん (筆者のこと) がしのぎを削る、一対一の主戦場だったのだ (ウソです!) 。

      
              空港ターミナルビル玄関口でおじさん二態

とまぁけっこうなスピードで駆け抜けたのは事実だが、折角の田園地帯、あぜ道に咲く草花を愛で、周防灘から吹く潮風に身を委ねるぐらいの余裕が欲しかったのが偽らざるところだったね (とても言い出せる雰囲気じゃなかったけど)。

 とそんなこんなで新空港への取り付け道路へ入ると、左斜め前方 (つまり北風だわね) からの向かい風に阻まれて、前途は一転してスピードダウンを余儀なくされたが、長い橋を渡り切り空港ターミナルビルを目前にしたラスト2kは猛烈な向かい風で時速10kにも満たなかったように思う。さしものビアンキおじさんも風に抗う術はなく、完成された流線型でも人力の限界を味わったに違いなかろう、嗚呼。まさに海上は白波が立ち、遮るもののない洋上空港は天気晴朗なれど波高しだったのだ。

 さて時は昼どき、空港での昼食小宴会の後、当たり前だけど復路はまったくの裏返し。空港橋を渡り、曽根新田に入るまではス〜イ、スイ! しかし以降は自宅まで北西ないし北方へ進路を取ることになり、概ね向かい風との格闘が続いたが、新門司から大里へ半島を横断する最後のたかだか105mの鹿喰峠(トンネル)が、疲弊した身体にえらく堪えて、なかなかの難儀ライドで締めくくったのだ。まぁその意味で達成感はそれなりにあったと結論付けたいが、ビアンキ金子兄のアシストがあっての完走だったことは言わずもがな。次なるロングライドに誘って貰うためにもここは“ヨイショ!”しておかなくてはなるまいて(と強がりはここまで。本当に感謝していますよ)。

(※1)市制45周年記念行事の一環として「元気発進!北九州」をテーマに、サイクリングを楽しみながら正しい交通ルール・マナーを身につけ、地域の魅力をゆっくりと堪能できる新しいサイクリングイベントを11月に開催することとなったが、そのプレイベントとして催された。
 (コースタイム) 門司・上馬寄(自宅) 9:52⇒門司・黄金町(金子宅) 9:59 10:01⇒(小森江からR199経由)⇒門司港駅前10:15⇒和布刈(塩水プール前)10:22⇒(田野浦経由)⇒田野浦・白野江線旧道(県道72号)の峠10:38⇒白野江旧道・新道合流点10:45⇒(大積トンネル〜柄杓田トンネル経由)⇒新門司阪急フェリーターミナル10:59 11:03⇒(県道25号)⇒葛原4丁目交差点11:21⇒(曽根新田経由)⇒新北九州空港ターミナルビル12:03 (昼食小宴会) 13:03⇒往路を折返し⇒葛原4丁目交差点13:38⇒(県道25号)⇒畑分岐14:00⇒鹿喰トンネル14:11⇒自宅14:21 by MTB  総距離70k
(参加者)栗秋、金子
 
                         (平成20824)

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