新春の高崎山と別府・ヒッ・パレに嵌まった合同山湯行  

                                             
栗秋和彦

 平成19年最初の山行はひこさんクラブ″の企てにおゆぴにすと″も便乗するカタチで高崎山に決まった。両方の会長を務める加藤兄の肝入りで成し得たものだが、南面肩の駐車場まで車で上れば30分とかからない、軽いノリで登れる山なので、気分はラクチンである。しかしさすがにひこさんクラブ″とてそんな行程を組む筈はなく、西大分から原神社〜城ノ腰経由で山頂を踏み、下りは銭瓶峠から旧道を東別府へまっしぐらと、けっこうな距離を稼ぐハイキングコースを設えていて、なるほどと納得した次第。そしてそれよりも目を引いたのが、新年会と銘打った下山後の打上げ場所、ヒットパレードクラブ(以下、ヒッ・パレ)であった。別府は竹瓦温泉近くのエンターティメントスポットとして老若男女を問わず、最近ブレークしている由、歌って踊って酒も飲めるというので、まぁライブハウスの趣か、或いはダンスホールに似たイメージを持ってはいたが、ついぞ機会がなかった。豊後の国の娯楽事情を知る上でも恰好のスポットらしいので大いに食指が動いたのだった。

       
 まぁしかし表向きは東別府までのコースの秀逸さを称えよう。海抜0mから山に登って、高崎山を縦断踏破し、また海抜0mまで下りてくる歯切れの良さ。しかも下りたところには歴史ある浜脇温泉共同浴場群が点在して、さてどこに浸ろうかと迷ってしまいそう。こんなシチュエーションが尊いのだ。そぅ、今年の抱負(※1)で述べたように「Cおゆぴにすととして・・・・これまでの享楽的山湯行を見直し、「風景の巡礼者」を目指す。しかし初志貫徹のためには「こだわり編集長」や「ガブリエル氏」などからの誘いを断ち、身を清めストイックな生き様が求められる」 と書いた。

 なるほどその意味からは低山ながらも変化に富み距離もなかなか。府内と別府を繋ぐいにしえの街道もウォッチングできるし、趣のある山歩きになる筈で享楽志向には当たらないと自らに言い聞かせ、快晴の下JR西大分駅に下り立ったのだ。(フフフ..でもやっぱりヒッ・パレは気になるわぃ)

 
         山頂での小宴会風景

 で腰痛持ちの松田氏の見送りを受けて、総勢20名ほどで出発。にわか合同登山ゆえ面識のない人も多々おり、遠巻きに伺うも熟年集団は一様にかまびすしい。人見知り激しい己にはとてもこの輪には入れぬぞと思いきや、それぞれのペースで三々五々の歩きらしい。ならば自然とおゆぴにすと″のみの集団になってしまうし、加藤兄の指図でのっけから一の坂〜上白木コースを採ったので、本隊とは別れてしまい「こりゃ、おゆぴにすと御一行様新春ハイク」の趣になってしまったのだ。しかしそれも原神社まで。参拝の後は隊列を正し、以降は老若男女?入り乱れての集団ウォーキングの体裁となった。つまり少しばかりは緊張しつつも合同ハイクの体をなしたのであります。

 さて今、高崎山を望見しつつ回想すると、北面の通称「別院の岩場」には昔、挟間、高瀬兄らと足繁く通い詰め、冬の岩と雪を目指してトレーニングに励んだ時期があった。うんうん、青春の残像が鮮やかに甦るが、傍から見れば頂など目もくれず、中腹でうじうじ?していた訳だ。一方、南面からは齢30台半ばにファミリーハイクで一度きり。しかも肩に位置する駐車場まで車で乗り付けての登山だったので、登路の記憶よりも山頂でのランチタイムや子供たちとバドミントンや木登りに興じたことの方が印象に残っている。つまり朝な夕な仰ぎ見てきた身近な山にもかかわらず、中途半端な登り方しかしていなかったのだ。その意味では、今日で一応の落とし前を付けられるものと計算も働いたが、そんな大仰にこだわる内容ではないか。

 まぁそれはともかく、20名を超える集団ともなれば、やはり束ねられるものではなく、しばらく歩くと長蛇の連なり。前後一望は適わず、中腹の清心寺で集結して後は山頂まで再スタートを切ったが、めいめいのペースは変わらず山頂では先着グループから最終到着者まで30分近く間隔があった模様。全員集合時点では加藤や大平兄などは既にほろ酔い加減で饒舌しきりであったが、このご両名は普段も同様なので読みにくいことは確かであろう。

 とそんなこんなの山頂大宴会は酒のストックが切れたところでお開きとし、大平兄直伝の「農大ダイコン踊り」で幕としたのだ。まぁ早い話、新春の高崎山の自然を愛でるより、頂で宴会を張り気勢を上げる方に力点が置かれたのは明白であって、享楽志向への誘いを断ち切るには、はっきり言ってメンバーが悪かった。一筋縄ではいかないところが人生なのよねぇ。(おっともう肯定してしまっていいのか?)

 下山コースは駐車場まで戻り、由布・鶴見の山なみを眼前に仰ぎながら林道を銭瓶峠へ。ここからは東別府へ急降下する旧道を辿ったが、これがまた趣のある道。路傍のそちこちに佇むお地蔵様群は石仏とも石祠ともとれるが、今はひっそりと人びとの記憶から遠ざかり、忘れ去られているかの如く。片や庭木の手入れに余念のないおじさんに声をかけ枝ぶりを誉めると、恰好を崩し応対してくれる人の良さも、旧道沿いにひっそりと暮らす市井の民の温かさが伝わってこようというものだ。一方でくねくねと曲がったこの道路は急激に高度を落とし、右手に迫る高崎山はますます高く、ヨットを浮かべた別府湾はその視界をどんどん広げて我々を呼び込んでいるかのように。日頃見慣れているJR日豊線や国道10号からの車窓風景とは一重も二重も違うところがこのコースの非日常性を際立たせてくれる。ボクは少なからずこの景に酔ったのかも知れなかった。

 さて下山後の浜脇温泉入湯は三方に分かれた。JR東別府駅そばの東町温泉共同浴場、湯都ピア浜脇内の浜脇高等温泉、それに湯都ピア浜脇から朝見川を渡ってすぐの日の出温泉共同浴場。再開発前の浜脇高等温泉を知る者にとっては、今更衣替えした湯都ピア浜脇は敬遠したいし、ここも加藤兄の意向に従い日の出温泉に浸った。歴史を感じさせる湯屋の設え、100円を投じ湯番の人懐っこいおばあちゃんと二言三言、階段を数段下った半地下のシンプルな湯船、そして熱々の単純泉が別府の共同浴場のスタンダードであり、大

 
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        ニッポン国の温泉文化の象徴、日の出温泉共同浴場二題

袈裟に言えばニッポン国の温泉文化の象徴なのだ。しかもこの象徴の湯は簡単には入らせてくれないのがミソで、「熱いのは我慢すべし、むやみやたらに薄めることまかりならん!」が正しい入浴法と喧伝されているので少なからず身構えてしまう。それでも(誰に断わる訳でもないが)少しの加水は許していただき、我慢、忍耐の世界を彷徨った。う〜ん、まさに六根清浄(ろくこんしょーじょう)を唱えるかの如く、この湯はやっぱり精神修養の湯だったのだ。

 で精神修養はまだまだつづく。仕上げはヒッ・パレにて六根清浄を唱える宴だ(ウソです)。まぁ噂どおりのエンターティメントスポットだったのは間違いないが、先ずは我が団体20名ほどが楽に収容できるレトロ調のカラオケルームで、宴の始まりだ。さんざん飲み食いしながら機を待ち、潤ってきたところで歌い始めるのだが、これは基本中の基本でいわば第一ステージ。けっこうな運動量と熱々の湯浴みを経ての宴席なので、皆さんどうしてもピッチは早いし、(カラオケで)声は荒げる?わと上機嫌だ。もちろん己もこれに乗り遅れてはならじと興にのっての立ち振る舞いに没頭しますね。そうこうするうちに本命の第二ステージ開幕を告げる館内放送で歓声が上がる。部屋から一歩出たホールでオールディーズナンバーを網羅した生バンド演奏の始まりだ。50〜60年代を席巻したプレスリーのナンバー、ハートブレイクホテルやグッドラックチャームなどが専属の歌姫によって次々と披露され、更にはベンチャーズナンバーのダイヤモンドヘッドをエレキのボリューム一杯に奏でれば、その迫力と懐かしさが、遠く青春の血湧き肉踊るさまざまなシーンを想い起こさせ、感慨に浸るに充分なのだ。

加えて申せば演奏途中に周りをそぉっと伺うと、けっこうな数の若者たちがボルテージを上げ、リズムを取りながら聴いていたのもちょっとした驚きだった。オールディーズは中高年の専売特許ではなかったという事実が新鮮だし、老若男女を取り込んだこの社交場の熟成度が別府、いや豊後の国の大衆文化に深く根を下ろしつつあることを改めて思い起こさせたのだ。そぅこの宴席は享楽志向を増長させるものではなく、彼の地の文化を推し量るアンテナショップ的役割を肌で感じ取るために有為だと思っているが、惜しむらくはせっかくの生演奏に合わせて踊ろうとする若者が殆どいなかったこと。このあたりの熟成度向上はこれからの課題として残るんだろうな。まぁ加藤兄みたいに出ずっぱりで踊るのも何だけど...なんて。おっとこれはオフレコでっせ。

 閑話休題、日頃は利便性を優先させるあまり、車を使っての山行が圧倒的に多いのが現実であろう。しかし今回のように往復鉄道利用の山旅は、コースも変幻自在に取れるし、頂で小宴も張れ、里の湯に浸った後は心おきなく大宴を張れるところに大きな魅力があるんだ、と改めて思う次第。その意味からはもっとこの種のコース開拓を図るべきであろう。ならば手前ミソですが、心地よい汗と感慨に残る山旅は是非鉄道で、と推奨したところでおしまいとしたい。

(※1)山のいで湯愛好会HPのトピックス欄、「おゆぴにすと新年の抱負」参照
(コースタイム)JR西大分駅9:10→(一の坂〜上白木経由)→原神社参拝10:08 30→清心寺11:12 26→駐車場(登山口)11:44→高崎山12:16(昼食小宴会)13:54→駐車場14:18→銭瓶峠14:32 40→JR東別府駅15:35 45→(浜町・日の出温泉共同湯入湯+朝見神社参拝)→別府・ヒット・パレード・クラブ17:45(新年大宴会々場) 歩行距離約24km

(同行者)加藤夫妻、挟間、高瀬、大平他総勢21名(ヒッ・パレのみ松田参加)

(平成19年1月7日)

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