城ケ岳登山と山菜の宝庫・城ケ岳・雨乞林道に遊ぶの巻 
             栗秋和彦
 G.Wは我社のかき入れ時である(最近はめっぽう厳しいけれど)。しかしその間も隙間を縫って時間は確保し、山野へ繰り出すプランも同時進行せねばならないが、今年のG.Wの天気予報にはことごとくはぐらかされた。実際、3日の憲法記念日は週間予報では完全な晴れだった。「ならば加藤御大が率いる念願の大障子〜前障子トレッキング隊に参加だ!」と、前々からの計画を実行すべくすっかりその気になっていた。ところが決行日を翌日に控えた2日、その予報は何の予告もなく、「雲りのち雨」に変わっていたのだ。標準行動時間7時間余りを要し、岩場の連続するこのルートでは雨模様は天敵であって、ひとときの大障子熱は急速に醒めてしまったのだ。

 そこで早速、加藤隊長に伺いを立て「延期」の命を引き出したが、当然のごとくボクの黄金週間の唯一の野外スケジュールはぽっかりと空いてしまったのだ。ムムム、これは単身の徒があえて居残りを画策して決めたスケジュールであって、単に「空いた」と宣うだけでは済まされぬゆゆしきことなのだ。そして翌3日は予報どおり午前中は曇天で推移。複雑な面持ちのまま部屋の掃除、洗濯等で過ごしたが、当然だけど空白を埋めるには至らなかった。

 そこで天候は気になるものの、同じくぽっかり空き組の挾間、高瀬を誘って近場の山をやろうと話はすんなりとまとまったのだが、行き先は挾間に委ねた。MTBを駆って、ここ1、2年近場の山々に出入りしているのは彼をおいて他にいないし、最新の情報をそらんじていよう、との思惑であって、その結果が城ケ岳に落ち着いたのだ。しかし近場とは云っても使える時間はもう午後の半日、あまりのんびり構える訳にはいかなかった。

 さてその城ケ岳方面へは庄内町平原を起点とする城ケ岳・雨乞林道から入ることとした。このルートは挾間が今年1月からMTBを駆って数度探索したところなので、案内人としてはうってつけなのだ。また「おゆぴにすと」のホームページにも、「峠・源流紀行」として記されているので詳述はそれに譲るが、一言で言えば雨乞岳から城ケ岳へと連なる広大な尾根の南側をうねうねと西進しているので、概して明るく開放的である。
     
 しかし先ずは地勢よりも目の前の植生に注目しよう。(車中から)この林道の切り取り面を注意深く眺めながらじわじわ進むと、「今が盛りよ!」とばかりにタラノメやウドが我々を待ち受けているのだ。となれば農耕採取民族の血をまっとうに受け継いで識別能力の高い挾間、高瀬をその役に専念させ、運転は栗秋が担当するのがもっとも効率がよく、まっとうな役どころであって、あれよあれよの間に春の山菜黄金コンビで袋はいっぱいになり、車は遅々として進まずということになったが、満面の笑みがそれを印象づけたのは言うまでもない。
       
 そしてところどころで手を休めて目を南へ転じると障子〜烏帽子〜鎧岳と伸びる大分・大野郡境の山々が意外にも近く、その奥には先に機会を譲った大障子〜前障子、更には祖母・傾山系が望まれたが、大障子以遠の峰々は山腹を覗かせているだけで上部はいずれもガスに覆われ、連なりは想像するしかなかった。
     

「う〜ん、かの山はガスの中じゃあ、中止して結果オーライじゃった」と負け惜しみに似た発言が誰とはなく漏れたりもしたが、一様に気になっていた証左でもあろうぞ。そしてこの道すがら南尾根を回り込む位置から東へ見遣ると大分市街も臨むことができた。そしてその一隅に米粒の如く白く輝く物体が認められるのだ。「何やあれ、ビニールハウスのオバケじゃ」と形容しても不思議ではないほどよく目立ったが、これこそ出番を1ケ月後に控えたワールドカップ会場のビッグアイそのものであったことも付け加えておこう。
     
 さて林道は雨乞岳と城ケ岳の谷あいをへつり、城ケ岳の南尾根を大きく回り込んで由布院方面へ高度を落としていくが、その一角に城ケ岳の登山口はある。とは言っても小さな導標と切り取り部の斜面に地味な階段をしつらえただけなので、目立つ登り口ではない。先ずは鬱蒼とした杉林の急斜面をジグザグに登り、雑木林に変わるとほどなく陰陽石に出る。
            
     
 しかしこれも岩を取り巻く薮の勢いが強いので(陰陽の云われとなる)輪郭は明瞭とは言い難く、興味をそそるには至らない。ここからはいくぶん斜度もゆるくなり栗やカエデなどの低木林を摺り抜けて高度を稼ぎ、最後はカヤトの群生を分けて頂に立ったが、途中からはすっぽりと霧で覆われて楽しみにしていた眺望はさっぱりで残念しごく。まぁ今日の天候ではいずこの山でも望むべくもなく、それを承知の登山ではないかと云われれば、雨に遇わなかった分だけもうけものだったのかもしれない。
            
     

 で下山ルート(林道)は由布院方面を途中から左折して、庄内・湯布院町境の国道210号に出る。下山後の一点、目指す「かわにし温泉(湯布院町川西集落)」は由布院方面へ10qほど溯らなければならないので、この湯が目当てなら林道を直進してまっすぐ由布院盆地に下りたった方が得策であろう。

とそれはともかくこの「かわにし温泉」、国道210号を由布院方面から下って来るとJR久大線のガードをくぐってすぐ、国道沿いにあるが、ボクにとっては初めての湯である。川西集落の公民館(集会所?)や物産店と一緒の敷地にあり、町営の共同湯は外見はこじんまりとしているが、浴室は思ったより広く手足を伸ばしてゆっくりと浸った。

 また入浴料100円はいまどきとてもリーズナブルで、アルカリ性単純泉47.8℃がこんこんと湧き出ては流れ去る、正統派の山里の共同湯であろう。であればたとえ半日であろうと、久しぶりに山野を歩き、山頂も稼ぎ、山菜を採り、仕上げに一級の山のいで湯に浸るという、ひな型的「おゆぴにずむ」実践の山旅は充実感溢れるものだったと、皆の胸の内を代表して申し述べたい。挾間・高瀬両兄そうだったよね!
        
(コースタイム)城ケ岳・雨乞林道の登山口13:33⇒陰陽石13:51〜55⇒(ワラビ狩りを含む)⇒城ケ岳14:12 20⇒(ワラビ狩りを含む)⇒陰陽石14:37⇒登山口14:50                       (平成14年5月3日)

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