秋晴れの平尾台〜貫山クロカンの一部始終を喧伝するの巻        栗秋和彦

玄海トライアスロンクラブ(以下、TC) の登山部世話人、Oさんからクロカンの案内が来た。冒頭は平尾台から貫山(712m)往復のクロスカントリー開催を淡々と紹介していたが、その末尾の「食事は秋の味覚の秋刀魚を焼き、新米を炊きます。ビール有り」の記事に目が留まった。なるほど有り体に言えば、秋晴れの下、爽快な風を友に、貫山登山(クロカンとは言ってもレースもどきにガツガツ走りはしないさ・・・・と思っていた)で汗を流して、打上げはジューシーな炭火秋刀魚を肴に野天宴会が待っている、と瞬時にイメージするわな。当然、この一点に食指は動き、参加を決定。もちろん主題のクロカンは付録と心得ての参加だから、主客転倒の思い込みは甚だしくも、この種栗秋流の感性は揺るぎ難く、仕方あるまい(と多少開き直りの感あり?)。

    
             平尾台概念図                先ずは中峠を目指して

そして平尾台は新道寺集落の高台に位置する会場(スタート&ゴール地点)のひらおだい自然塾の家まで、駆け上がると、快晴の下、羊群原が点在する山々の眺望を欲しいままに、そのロケーションに改めて感服仕り候なのだ。

一方、ホスト&スタッフはいつものO&Mコンビで、既に炭火おこしや調理準備に余念がなく、こちとらはただただ畏敬の念を表すのみだ。で、三々五々集まってきた参加者はクロカンの部が己を含めて総勢10名。ハイキングの部はクロカン参加のM兄の妻子3名といった、おそろしく少人数かつアットホームな催しであって、これじゃシリアスに走る訳ないよなぁ、と思うんであります。

 

           
                ノコンギク                            羊群原の景

そこで門司えすかるご組の内田姐と1.5kほど先の茶ケ床園地までは車で入り、彼の地点からゆるゆるスタートしようと安易に流れたのだった。

ところがフタを開けてみると車組は我々のみ。他の者は会場からいきなりの激走こそなかったが、全行程を早駆け走で締めくくるのは当然と言った様子ありあり。心意気の差は歴然であった。まぁそれでも通過ポイントの茶ケ床園地までは我々が(当たり前か)先着し、ハイキングの面持ちでカメラやら飲料、着替えなどの準備を整え、いざトップ!で出発したのであります。しかしスタートそうそう、もう追っ手?(トップ)は迫って来ており、あっという間にかわされてしまっては、声をかけることも出来なんだ。そしてN、KおじさんやM兄などに次々とかわされ、あれよあれよとついにはドンジリ。加えて思っていたより坂はきつく、大事をとって右足首に装着した簡易ギブスもしっくりいかず(※1)、秋晴れの爽快なロケーションとは裏腹に、じくじたる思いの序盤であったのだ。しかしそれでもNTTの中継塔まではけっこうな登りに耐え、微速前進の体ながら走り通したおかげで、我が内田姐さんにやっと追い付き、転じて最後部グループに昇格。後は草原状の尾根道を、それなりにせわしく、わらわらと登っては、先行組になるべくあけられないように頑張ったつもり。気持を萎えさせる訳にはいかなかった。

    
          草原を駆け上がるシリアスランナーたち                         貫山山頂にてしばしまどろみ

というのは、少しはレースモードに切替えて踏ん張るとか、あのおじさんには負けたくないとか、そういった葛藤感ではなく、先行組の面々も往路、貫山までは覇を競っても、この天高く馬肥える秋空、絶好のハイキング日和にすこぶるの眺望を約束された彼の山頂では、遊び心を膨らませて、しばしまどろむのではないか、ならばあまり遅くならず追随して、皆で記念写真の一枚なりとも撮らなければなるまい、との使命感?にも似た思いがあったのだ。その意味では途中、名も無き(オミナエシ?、キキョウ?、ノコンギク?)秋の草花を愛でつつ、のんびり散策したいとの誘惑を断ち切るのに、えらく難儀だったことを吐露しておこう。

そしていよいよ鞍部から貫山への登りにかかると、まもなくトップとすれ違った。しかもその表情は真剣そのもの。まさにレース真っ只中の面持ちとあっては、ハイキングもどきと考えた我がヨミの甘さは気恥ずかしいばかり。更に続々と駆け下りてくる面々も闘志みなぎり、ボクはただ場違いなシチュエーションから抜け出せないまま黙って見送るしかなかったのだ。う〜んなるほどこの催し、遊び心はレース後の小宴会に押し留めて、本命・クロカンはキッチリとメリハリつけて楽しもう、という玄海T.C のポリシーを如実に反映させており、その意味では全体としてシリアスさは控えめながらも、バックボーンの据わった催しだったのだ。

  
       新北九州空港島と連絡橋も指呼の距離に  


                                            
                                                       ↑四方台から岩山へ快適ラン二題↓
                                            

おっと、そうは言っても我が道を行く最後部コンビの身では、今更挽回劇は望めない。しかしそれなりに速足は心がけたつもりで、中高年ハイカーたちの何組かはかわした末に、(鞍部から)草原の急登9分ほどで頂に到達。ならばレースに賭けた皆の分まで眺望を楽しまなくては申し訳なかろう、と気持ちを切り替えて6年ぶりの山頂に居座った。

つまりは北面眼下には苅田、下曽根の町並みと陽光を受けてキラキラ光る周防灘の広がり、その中央には来年3月開港する新北九州空港島と連絡橋も手に取れるがごとく。また北西へ転じると企救山塊(足立山〜戸ノ上山)の鈍重さも見逃せない。そして西方は雑木が邪魔してスッキリとは言い難いが鉄都、八幡のシンボル・皿倉山から福智山に累々と壁のように峰々が連なっている様は雑木越しでも充分俯瞰できる。いやまだまだ、南〜南東の方角は間近にたおやかな平尾台の広がり、遠景に英彦山〜犬ケ岳の稜線、東方には貫山から高度を落して少し抗ったかのようにピークを成す水晶山と、その背後に行橋の市街を見下ろすといったあんばいで、この秀逸な眺望抜きには貫山の魅力は語れない、とボクは我が境遇も忘れて山頂からの眺望に改めて酔いしれたのだった。

さて頂には先客が大勢、いずれもオジ・オバグループばかりで、昨今の中高年登山ブームを象徴するような登山客相だが、走り屋(の末席の己)の出で立ちに興味津々の様子。何かと質問攻めに遇い、彼らの好奇心を大いに満たしてやったのは言うまでもない。なるほど疾風のごとく折り返して行った、我がシリアスグループの皆さんへは、聞こうにも聴かれなかった訳で、その意味でこのレースのスポークスマン役をまっとうしたことになり、スイーパーとしての存在価値はそれなりにあったものと思う。とそれにしてもこののどかな頂での彼らの生態?は、平和・日本を象徴する光景だなぁ、と改めて思い出るのだ。

で、復路はラスト三番手のY姉を拾い、確固たる最後部グループを編成。ゆるゆると鞍部まで引き返し、そのまま突っ切って四方台へはわずか。日曜とあって吹上峠や茶ケ床園地方面から続々と登って来る、ハイカーの多さに多少のオドロキは隠せなかったが、風爽やかに、視野には羊群原を取り入れて、まさに草原漫歩(走)とはこのことであろう。トーゼン気分はよくズンズン突き進み、なだらかに落ち込んだ谷間へ降りると、再びの中峠に至った。となると我がスタート地点の茶ケ床園地までは、一気呵成に下りきるのみであって、ハイキングとも言えるこの山旅は最後、ちょっぴりクロカンの様相を醸し出して締めくくったのだった、フーフー。

ちなみに(我々を除いた)シリアスクロカン部門は、およそ10k余りの行程をトップは1時間03分余り、後続も10分以内で走破した模様。ならばこの高低差を考慮すれば、なかなかの激走だったことが伺われのだ。

 

    

     あぁ麗しの秋刀魚殿                  心地よい疲労感、秀逸なロケーション、人生の小さな幸せ

閑話休題、冒頭で喧伝した以上、本命「秋の味覚・秋刀魚&新米」大会の描写も試みなくてはなるまいが、この臨場感をうまく表現できるかはなはだ心もとなくこの点、あらかじめ断りつつ進めたい。でロケーションは繰り返しになるが、快晴の下、羊群原が点在する丘陵地帯を眺めながらの野天のテラス。いくばくかの疲労に包まれて木陰のテーブルに陣取ると、ひんやりと乾いた空気が心地よい。その傍らでは秋刀魚を焼く煙がたなびき、副食の団子汁はグツグツと煮込み真っ最中とあって、期待感は高まるばかりなり。そしてやぁやぁ、野人シェフになりきったO兄の号令で、次々とジューシーで熱々の秋刀魚が振舞われ、ビールの喉越しとともに、その高邁で素朴さを併せもつ、秋の味覚に我が身は翻弄され、しばし言葉を失ったのだ。

まさに「時間よ止まれ!」の心境であったが、秀でて旬な食材もさることながら、この小宴会の魅力は @野天で秀逸な環境 A心地よい疲労感 B快晴、快適な体感温度 C少人数でアットホームな雰囲気 D溢れる遊び心 が見事に組み合わさった結果といえるぞ、と当たり前のことを今更ながら感服したのであります。とすると確信犯的なこの小宴会を目論んだ、玄海のO、M兄をはじめとするおじさんたちの仕業には、謝々の念とともにホトホト参ったということを表明しておかねばなるまいね。

(※1)不整地の走行には不安が残り、未だ手放せないが、この時は締付け過ぎて血行不良だったか。
(コースタイム)ひらおだい自然塾の家(平尾台自然観察センター隣)9:45⇒(車)⇒茶ケ床園地(駐車場)9:50 56→(中峠経由)→NTT無線中継塔10:14→貫山と四方台の鞍部10:27→貫山10:36 40→鞍部10:45→四方台10:48→中峠11:03→茶ケ床園地11:10 12→ひらおだい自然塾の家11:23
                                                 (平成17年10月16日)

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