猫の心筋症について

 

最近日々の診療のなかで特に気になる病気があります。猫の心筋症です。

 

心筋症とはその名のとおり心筋(心臓の筋肉)が異常を起こす病気です。

20年前と比べてこの心筋症という病気がかなり増加しているような気がします。もちろん以前と比べて室内飼い、避妊、去勢の普及のおかげで長寿な猫ちゃんが増えたのが大きな要因だとは思います。人と同じように猫ちゃんでも高齢になればなるほど心臓病のリスクが高くなるのは当然なのですが・・・・

心筋症には大きく分けて拡張型、肥大型、拘束型、があります。

拡張型は心筋が薄っぺらくのびて心室が拡がりすぎて、肥大型は逆に心筋が厚ぼったく腫れすぎ心室が狭くなりすぎて、拘束型は心筋が線維で硬くなりすぎて、いずれも心臓から十分な量の血液を送り出すことができなくなります。心不全をおこすのです。

拡張型は以前は”タウリン”という栄養素の不足で発生することが多かったのですが、キャットフードの改良とともに発生は少なくなり、現在では特発性といわれる原因不明の場合がほとんどを占めています。肥大型、拘束型、も正確な原因は不明です。

発生原因が不明なので、簡単に予防はできません。もっと問題なのは、どの型の心筋症も初期にはほとんど症状がないということです。というか、病状が潜行して末期にならないと症状が出てこない、症状でてからではほとんど長生きできない(いわゆる手遅れ?)状態なのです。

症状としては急な元気消失、食欲不振、荒い呼吸、腹部の腫れ、など。心臓に血栓ができると動脈に詰まって後ろ足が急に立てなくなる、痛がる、異様な大声で啼く、などがあります。

治療としては、心臓の負担を軽減する血管拡張剤、強心剤などの対症療法が中心となり根治は望めません。

できるだけ早く病気に気づいて早く治療を開始することが長生きのために大事となります。

尚、この病気は初期では聴診で正常と区別つかないことが多いようですので、できるだけ定期的に(6ヶ月間隔ぐらい)胸部レントゲン検査、超音波検査を受けていただいたほうがいいようです。

 

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