やはり素晴らしい「菊理媛」・・・しかし思い切って燗をつけてみたら・・


2001年11月3日(土)

 「菊理媛」を飲む小さな集まりがありました。

 この「菊理媛」というのは「くくりひめ」と読むのだそうですが、石川県の「菊姫」の最高級の大吟醸酒の10年貯蔵のものでして、価格は、なんと1升5万円!!

 要するに、5万の酒なんかなかなか個人では手が出ないが、5人集まればなんとか楽しめるではないかという趣旨の会。

 で、これがその「菊理媛」なのです。グラスに注ぐとき思わず持つ手が震えちゃいました。だって一滴の価格を考えると・・・。
 さて会場となったのは大分市中央町、通称「相生町の通り」にある「塙」というお店を借りての「菊理媛」を楽しむ会です。

 このお店は料理も勿論ですが、このようにお酒のためのグラスはしゃれた切子の色違いなど、なかなか気合いが入っているのです。

 最初に豆腐が出てきて、白子、ハモを炭で焼いて、カキを焼いて、酒飲みの好みを十分に考えた料理が次々と出てきて、ふだんあまり食べない私も、食べる方にけっこう忙しかった。
 さてお酒の方の感想です。

 事前に想像していた「黒吟」の味わいとは、ぜんぜん違いました。酒の色もうっすらついている程度で、思わず「色も味も、なんか菊姫のイメージじゃないね」とつぶやいてしまいました。

 「黒吟」は、人によっては顔をしかめるような老ね香が売り物であったりするのですが、この「菊理媛」はそれをほとんど感じないのです。もちろん、口に含んで回してみるとふわっと老ね香が立ち上がって来ますが、黒吟のそれとくらべると無いに等しいという印象です。
 酒質はすごくすっきりキレイで、キリッとした品がありますが、アル添のせいかどうもピリッと舌を刺激するようなアルコール味があるのが不思議です。10年の古酒なのに・・・・。

 それが、だんだんと温度が上がってくると違った。常温に近づくとむしろ柔らかく膨らむ感じなのです。で、これって燗上がりがいいのかも知れないね、と。じゃあ燗つけてみようかと、思い切って・・・やりました。

菊理媛に燗をつけてみたら・・・

 結論としては、冷やして飲むより燗の方がいいかも、と。

 熱燗にすると味も香りも何もとんでしまうのですが、それでもあまりバランスは崩れず、温度が下がると、ほとんど元に戻っていく感じ。酒の素性がいいのですね。強い酒というか、熱燗という虐待にりっぱに耐えて復活する力のある酒です。

 そして、燗冷ましがまた、いいバランスで・・・。旨味が出て、程良くアルコール臭がとんでくれるのです。
 上の写真のように、左側「義侠」の40パーセント、平成1年のものが相手でしたので、もちろんこれも燗つけてみました。

 冷えているときは、私の好みとしては「義侠」です。「菊理媛」はアルコールっぽい味がどうしても気になったのです。

 しかし、温度が上がるにつれてその印象は逆転する感じで、常温以上になると、「義侠」はやや雑味が出て来る感じなのに対し、「菊理媛」はますますキレイな、なんというか研ぎ澄ましたような玲瓏な感じが強まるのが不思議です。
 「義侠」は、熱燗には比較的向かないと思いました。温度が上がるに従って少しづつバランスが崩れていきます。また燗冷ましは、いささか飲むに耐えないレベルでした。でも、もったいないから全部飲んじゃいましたけど。

 その「燗上がり」のいい「菊理媛」ですが、実は箱にはこのように書いてあるのです。

 (で左側、それ以上はドクターストップ! ですな。)
 表示としては、「必ず冷やしてお飲み下さい」と。

 熱燗にしたとか知ったら怒るやろうなあ・・とか言いながら、こんなこともサカナにして楽しみました。

 メーカーのほうの、この酒はこのようにして飲んで貰いたいという希望はそれなりに理解できるのですが、でもそれだけでは面白くないと思うのが酒飲みの酒飲みたるユエンです。

 私としては、新しい発見をしたと思っているのですけど・・・。
 さて、料理に何を選ぶかにもよると思いますが、「義侠」は、あきらかに何にでも合う食中酒と思いました。主張はあるのですが、食べながら飲めるのです。ただし燗はむかない。

 しかし「菊理媛」は、あきらかに相手を選びます。難しいです。
 何か「私だけを選びなさい」と主張しているような酒です。でも燗つけても飲めるというか、むしろ良くなる面がある。

 もう2度とできそうもない、面白い経験でした。会費以上にぞんぶんに楽しんだ感じです。

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