スパンダムの将来設計
「ねぇ、スパンダム。貴方はいつまで独身でいるの?」
「…お前がそれを言うのかよ」
「私は聞いちゃいけなかった?」
「んなこたぁ、ねぇけどよ」
相手はお前以外考えられねぇんだよ
大人気ない二人
カクの様子がおかしい。どうしたの?と聞いても誤魔化されてしまう。
「スパンダム、カクに何かあったか知らない?」
「しらねぇよ」
極々普通に応えられ、それ以上の追求は出来なかった。
……けれど私は見てしまった。
カクに私の写真を見せ、なにやら言って泣かせているのを。
呆れた私は、こっそりカクに謝って、スパンダムを無視することにした。
これもたいぶ大人気ない対応だ。
彼女の成長
「お前、六式覚えたのか」
「大げさよ。まだ指銃が出来ただけじゃない」
「それでも十分超人の部類だぞ」
「実はむちゃくちゃ頑張りました」
拾ったときは、おれより弱い、凡人だったはずなのに。
ピクニック(1)
「おーい、そこの姉ちゃん」
「あ、大将お疲れ様です」
青キジさんは、時折私と会話を楽しんでくれる。すごくいい人というわけでもないが、とても居心地いい人ではある。
「はい、お疲れさん。お前、今日も勉強かい?」
「そうなんです。まだまだ知らないことがたくさんあって、もうてんてこ舞いですよ」
「あららら、そりゃぁ大変だな。手伝ってやろうか?」
「……途中で青キジさんは寝るでしょう?」
「あー」
痛いところを突かれた、とでも言いたそうな顔で視線をそらされる。
「んじゃぁ、息抜きでもするか?」
「へ?」
ほい、と手渡されたのは、どこぞの島でやっていると言う、大型自然公園の案内誌。見上げれば笑顔。
「ちびども連れて、明日辺りどうよ?」
頷いたのは言うまでもない。
ピクニック(2)
「姉さん、はい」
「ありがと。んー、みんなほとんど欲しいんじゃない。最初から焼き増ししてた方が早かったかな?」
「そうかもね」
ルッチはどこか楽しそうに笑う。
私もつられて笑って、そして写真を二人で覗き込む。
「ねぇ、ルッチ。これいつ撮ったの?」
「え?」
ひときわ楽しそうに笑う、ルッチのアップ写真を指出す。
多分、ブルーノ辺りが撮ったのだろう隠し撮りっぽい一枚。
ルッチは写真を見ると、顔を一気に赤く染め上げた。
「ルッチ?」
彼は動きを止めて、答えてくれない。
ピクニック(3)
「三枚と、五枚と、二枚と、一枚と」
「なに数えてんだ?」
「んー? この前のピクニックの写真。見る?」
「……おい、いつ行ったんだ」
「青キジさんが帰ってきたとき」
「青キジって! お前! ちょっ!」
スパンダムは、なぜか成人以上の男性と私が会うと、ひどく動揺する。
いつのまにか連れてこられた、某会議
「あの、すごくすごく疑問なんですけど」
「ん?」
「私、なんでここにいるんですか?」
居並ぶ七武海の面々を前にして、おつるさんに聞いてしまう小市民な自分。おつるさんはそんな私を見て、気にするなと簡単に言ってしまう。いや、これ気にしないんだったら私、きっと元帥すらも暗殺できると思うんですけど。それくらい度胸ないと無理ですって。
「ふむ、怖いか」
「怖くない海兵がいたら、私はその人を尊敬申し上げます……ッ!」
「青キジを尊敬するのかい、珍しい」
「今はスパンダムすら崇拝できそうな心境ですよ!」
ルッチとカクのケンカ(1)
「で、どうしてそうなったの?」
目の前の二人は、口をつぐんでそっぽを向く。最近は反抗期なのか、どうにも言うことを聞いてくれない。
「ブルーノ、何が原因か知ってる?」
その場にいたお兄ちゃんに聞いてみるが、ブルーノは苦く笑うばかり。
「姉さん、男にはそういう時期があるから、放っておいていいよ」
「放って置けるもんですか。場所が場所な訳で、私は怒る権利があります」
そう、場所が場所なのだ。私の私室なのだ。
いくら許可さえ取れば出入り自由と言ったって、そこでケンカする事もないでしょうに。
「で、今日は何が原因なの?」
ルッチとカクは、口をつぐんで知らんふり。
ルッチとカクのケンカ(2)―ケンカの内容―
「お前な、いい加減姉さんの部屋に居座るのは止めたらどうだ」
「止めんぞ。姉さんはいいと言うたんじゃ」
「姉さんが良いって言っても、それにも限度があるだろ。考えろ」
「ルッチは焼きもちを焼いておるだけじゃろ! 遠まわしに言わんでも分かるわい!」
「なんだと! 誰が焼きもちを焼いてるって言うんだ! 訂正しろ!」
「ルッチの焼きもち焼き! 嫉妬深い男は嫌われればいいんじゃ!」
「うるさい! 姉さんもお前の面倒なんか面倒だろうに! ガキの癖に!」
「男の嫉妬は醜いわい! 姉さんも大変じゃ!」
ルッチとカクのケンカ(3)―カリファの感想―
「姉さんも大変ね」
「ん、なにが?」
カリファの入れてくれるお茶を飲んでいると、目の前に座った彼女は呆れたようなため息を吐いた。そして私を見ると、ああ、そうなのねと物憂げにお茶を飲む。
「そうか、姉さんだからなのね」
「だから、なにがそうなの?」
カリファはどこか哀れむような目つきで私を見ると、そっと抱きしめてくれた。カップを落とさないようにテーブルに置くと、その手が私の背を撫でる。
「私、姉さんが大好きよ。他の皆も、姉さんが好きよ」
「私もカリファと皆が大好きよ」
にっこり笑って告げると、カリファは嬉しそうに笑い返してくれた。
けれど部屋を出て行く間際に、「だからなのよ」と疲れたような声が聞こえた気がしたのは、私の気のせいだと思いたい。