■防衛施設局が住民を尾行
米兵外出二日目も米兵の集団外出の様子を記録しておくために、
私、浦田は家庭用のビデオ機で撮影をしていたのだが、
安心院五重の塔を米兵らが訪問した後、
福岡防衛施設局職員が一時間にわたって住民を尾行するという前代未聞の事件が起きた。
安心院五重の塔の視察を終えた米兵らを載せたバスは
随行する防衛施設局の車とともに次の訪問地へと向かった。
一台だけ白い施設局らしき車がその後も駐車場に残っていて、
私たちが出るとすぐにその車も私たちにあわせるかのように出発した。
なんか変だなと思ったので、車を脇に止めると、追い抜いて行くのだが、
しばらく行った先の路地の左脇に車を停めて待っている様子。
こちらが抜いていくと、またウインカーを右に出して後ろをついてくる。
ところで私たちは、その日はもう監視行動をやめて休憩して帰ることにしていた。
安心院五重の塔の所で、久々にKさん夫婦に会ったからだ。米軍が行くコースは前日、一通り確認していたので、
Kさん夫婦とともに近所の喫茶店でお昼休みをとって帰ることにしていた。
そうとは知らぬ施設局は結果的に大きな問題行動をとることになる。
Kさんお奨めの喫茶店についた私たちは、そのお店の駐車場に車を停めて、喫茶店に入った。
後ろをついてきた施設局の車は、さすがに同じ駐車場に止めるわけにもいかないと思ったのか、
私たちを横目に走り去った。喫茶店のテーブルについた後、もしやと思って喫茶店の外に出てみると、
ちょうど折り返して帰って来た施設局の車が目の前を通るところで、
中に乗っている五人の施設局員らは私と目があって、「あっ」と口をそろえて開けている。
いまどき、こんな「尾行」はテレビの刑事ドラマでも見たことないゾ。
見ていると、私の前を通り過ぎた施設局の車は道路の向かい側にある大分銀行の安心院支店の駐車場に入った。
これはひとつ直接確認してやろうと思って、車から出てきた一人に話しかけた。
「失礼ですが、防衛施設局の方ではないですか」
「そうです」
「ボクに着いてきているんですか」
「はい」
「ボクがどこに行くかを知りたいんですか」
「はい」
臆面もなく彼らは尾行していることを認めた。なんだかバカらしくなって、
「どこにも行きませんよ。ボクらはそこでお茶飲んで帰るだけです。
さあ、これでボクがこの後どうするかもわかったんだからもういいんじゃないですか」
と言って、私は喫茶店に戻った。
しかし、三十分ほどの食事をすませ、喫茶店を出ると、なんと、さっきの施設局の車がまだ駐車場に停まっていた。
今度は一緒に食事してたKさんが近づいていって、
「五人も乗ってるの。なんのための尾行なの?」
と尋ねたがが答えない。その後、私も近寄っていって話しかけた。
「広瀬さん(現地対策本部長)の指示ですか」
「まあ、一応組織として」
「組織として?」
「はい」
「広瀬さんの指示ですね」
「はい」。
・・・と、これまた組織的行為であることを彼らは自ら率先して認めてしまった。
公人である防衛施設局職員が業務時間内に組織的に、私人である私たち市民を尾行監視することは大問題であり、
私たち市民が税金によって動いている施設局や米軍を監視することとまったく意味が違うことを伝え、
この尾行監視行為を中止するよう抗議をして帰った。
しかし、それでもなおしばらくの間、バックミラーには施設局の白い車が見え隠れしていた。
その夕方、今後こんなことが日常化してはならないので、抗議文の一枚ぐらいは出しておかねばと、
バタバタと文章をこしらえて、施設局にファクスした。
すると、いつもは全くこちらの問い合わせなどにはのらりくらりの施設局が
その日の夜に謝罪の電話をかけてきた。相手は戸田福岡防衛施設局長だった。
さらに翌朝、これまたその施設局長本人が謝罪のために直々に現れた。
施設局長は尾行についてはこれを認め平謝りするのだが、では具体的にどういう経緯で
尾行監視に至ったのか尋ねると、
「まあ、ひとつこうして謝罪に来ているということでご理解いただいて・・・」
と口を濁すばかり。一時間近く、ああだこうだとやりとりしたがまったくらちがあかず。
結局は「一つ穏便に」ということらしかった。