内閣総理大臣 小泉純一郎 様
防衛庁長官 石破茂 様
有事関連3法案の廃案を求めるとともに、平和憲法の精神に基づき、
友好対話による平和的外交をねばり強く行うよう日本政府に対して求めます
私たちは日頃、軍事基地や演習場の周辺に暮らすことを余儀なくされている地域の住民として、今回の有事3法案成立に向けた強行な進め方に対して、強い憂いを持っています。与党3党と民主党は、有事3法案の修正に合意しましたが、その修正案については、国会での十分な審議cや国民的議論を経ることなく、今国会での法案成立に向けて性急にことを進めています。しかし、この修正案は、与党3党と民主党によって合意されたからと言っても、これまでも指摘されてきた有事3法案の持つ、危険な本質を寸分も変えるものではありません。
1.戦時における基本的人権の制限を認めることに変わりはない
民主党の修正案によって、「人権尊重規定」として、基本的人権について政府原案で「制限は…必要最小限」という部分が、「最大限に尊重されなければならない」と修正されましたが、憲法がこれまで保障してきた基本的人権の「制ァ限」を戦時において容認するお墨付きを与える規定であることに変わりありません。
2.アメリカの「先制攻撃」による戦争に、日本社会全体を強制的に総動員する仕掛けはそのまま。
そもそも今回の有事法案は、99年に日本で成立した米軍に対する協力法「周辺事態法」の限界Eに強い不満を持っていたアメリカからの強い圧力を受けて出てきたものです。法案では、「武力攻撃が予測されるに至った事態」でも有事法制が発動されるとしていますが、これではアメリカが東アジアにおいて戦争を起こした場合に、実際に日本が武力攻撃を受けていない段階におい「ても、「武力攻撃が予測される」と認定すれば、有事法制が発動され、アメリカの戦争に日本社会全体が協力を強いられるという危険性は変わらず残っています。
3.国会は歯止めにならず
「国会の関与」という点でも、民主党提案により国会決議で対処措置を終了させる規定はヘ入ったものの、政府案の、「対処基本方針」を国会にかける前に閣議決定のみで実施に移せるという問題点に歯止めをかけなかったこと、「予測」認定だけで法案が発動できるという問題点がそのまま残された点でも、国会には事前チェック、歯止め機能が与えられていません。
4.D報道の自由や、国民の「知る権利」が誓約されかねない。
武力攻撃事態法案では、NHK、NTTなど公共機関や公益的事業者を「指定公共機関」にして戦争協力を義務づけ、首相の統制下におくとしています。さらに民間報道機関もこれに含まれる可能性を否定していません。戦時には権力による情報の管理、統制により、真実の報道がしばしば危機に直面します。かつての第二次大戦下の「大本営発表」が国民の眼を覆い、国家の命運を誤り、甚大な被害をもたらしたことを忘れてはいけません。
私たちの故郷、大分では5年前より米海兵隊の実弾砲撃演習が開始され、周辺事態法や有事法制を先取りするかたちで、自治体や民間業者、自衛隊を総動員しての訓練が行われてきました。しかも年を追うごとに、軍事機能の強化、軍事車輌の通過する道路の拡張、演習場周辺の地域に対して移転保障措置が出され、地元住民を不安に陥れてきました。さらに、この法案が成立し、発動された場合に、地域住民はこれまで以上の負担を強いられるのではないかとの不安を抱かざるをえません。また有事法制が発動された場合に地域住民の人権侵害や被害の実態が報道もされず、改善されないという事態が起きるのではないかと私たちは大きく懸念しています。この不安は、私たちだけではなく、沖縄を初めとする全国の基地や演習場周辺住民に共通するものであろうと思います。
よって、私たちは、この有事関連3法案の廃案を求めるとともに、平和憲法の精神に基づき、
友好対話による平和的外交をねばり強ュく行うよう日本政府に対して求めます。