その4 青野山・璧湯・生竜温泉
 山を一つ入れようということで、青野山(850.4m)を組み込んだ。豊後中村の商店街を抜け、山道へ入る。ラクに登れると思っていたが、意外と手こずる山だった。長女を背負っていたK氏は、途中でダウンして引き返す。Sと二人で頂上へ向かう。岩が露出している所は避けるようにして登って行くと、やがて草原状の頂上部分へと出た。明確な頂上地点は分からずじまいだった。下りは面倒くさくなって谷を真っ直ぐに下っていったら、草原が切れて、薮漕ぎとなった。やがて、杉林に出て、道まで出る。車の所まで戻ってきたときにはかなり汗をかいていた。さて、一風呂あぴるか。壁湯が近い。

 壁湯は宝泉寺温泉の1キロ手前、玖珠川の支流町田川河畔の岸壁から湧き出ている天然の洞窟温泉である。共同湯もあるが、有名なのは旅館「福元屋」が所有している洞窟温泉の方だ。入浴料100円を払うと脱衣篭を貸してくれる。その篭を持って川の方に下りて行く。
 先客が4人いた。みんなおばあちゃんたちだった。岩肌についたコケをながめながら入る。露天のためか湯は少しぬるめのようである。温泉は洞窟の奥の方、岩間から湧き出ている。澄みきった湯だ。おばあちゃんたちと世間話をしながら缶ビールで乾杯。

 途中で買った弁当を湯に浸りながら拡げて食べる。そうして30分くらい入っていたろうか。随分長いこと入っていたようで、身体全体がふやけてきた。この温泉はぬるめなので長く入っていられる。どうも長時間入って、身体の芯からジワッとあったまる、汗をかく、そんな入り方をする温泉のようである。おばあちゃんたちは小1時間近く入っていた。

 壁湯から生竜温泉に行ってみた。宝泉寺の手前にある、前から気になっていた温泉だ。共同湯があると聞いていた。ゲートポールをしていた老人に聞いてみると、風呂はあるが部落の共同湯で他所の人間は入れない、というが、大分からわざわざ入りに来たんだというと、組長に断わればよかろう、と教えてくれた。組長の許可をもらって入る。
 この生竜組の共同湯は、浴槽が3つあり、熱いの、やや熱いの、といった風に分かれていた。何人もの人に頭を下げ、口をきいてやっと入れただけに、格別な味わいがあった。それにしても、「生竜組」やら「組長」やら、何だかとてもオカシな気分であった。(昭和58年3月6日‥編集部注、この入湯記録についてはおゆぴにすと第1号「組長に仁義を切った生竜温泉」にも詳述されている。)

                        back