特別寄稿その2     さい果ての露天風呂 
                                   坂井久光
 昨年7月〜8月にかけて北海道の山旅の途中、知床半島の名峰、日本百名山の一つ羅臼岳へ登る為、立ち寄った「地の ホテル」の近くの谷間に図らずも良い露天風呂へ入る機会を得た。

 日本山岳会北海道支部創立80年記念例会の暑寒別岳登山に合わせてついでに北海道の未踏の一等三角点や百名山を登る計画であった。暑寒別岳を皮切りに、三頭山、ピンネシリ、利尻岳を登って、斜里岳をすまして斜里駅から岩尾別へ最終バスで向かい、「地の ホテル」へ漸く日没頃到着、一泊して翌朝7月22日、ユースホステルからバスで来た若い人達の一団と一緒に羅臼岳へ出発。弥三吉水場で休んで次いで銀冷水の水場で一服して雪渓を登ったが、一行中のひとりが落伍して遅れたのを皆で励まし合って羅臼平に着いて一休みして弥々山頂へ向かって登って行ったが、直下で雷雨に出会い、軽装で来た一行の一人は雨具がないので、私のヤッケを貸して傘を持たせた。

 私は別に雨具を持っていたからである。流石に山頂直下の岩場は険しく濡れねずみで一行が登頂したが、雨で写真も撮れず。三角点は岩に埋めこまれた金属標で三等であった。

 昔山と渓谷に水野氏の表を信用して一等三角点百名山の一つに拳げたことがあり、恐らく二等とおもっていたが三等であった。 勿論展望も何も空しく、寒さに震える一行は早々下山にかかったが、下山途中で道が分からず、私が指図して元気な学生を先に偵察に出して這い松の中に道を見つけて無事羅臼平へ下山。

 しばらくして雷雨は去り、一同漸く私と学生のバーナーで湯を沸かして一同にコーヒーを飲ませたら忽ち元気を取り戻して往路下山した。女子学生も混じっていたが、ホテルの前でバスの来るのを待ち、男達は近くの谷間に湧く露天風呂へ行き、汗を流して、さいはての旅情を十二分に楽しんだ。

 一行は別れを惜しみ、私の名や住所を聞いて、私の手帳に記名して別れたが、一行の中の福岡の学生の車に便乗して宇都呂へ行き別れて、バスで斜里へ行き駅前旅館で一泊。翌日汽車で弟子 へ行き、バスに乗り換えて阿寒湖へ行き雄阿寒岳へ登った。 翌日阿寒富士へ登り、更に函館へ行き大千軒岳や奥尻島の神威山や札幌の札幌岳、室蘭の室蘭岳やトムラウシを登って8月上旬、小樽からフェリーで舞鶴経由帰京して長い山旅を終えた。(編集部註:字の判読不能部分を空欄にしています)