|
| 性行為感染症(性病:STD:Sexually transmitted disease)とは |
性行為(SEX以外でもディープキス、ペッティング、フェラチオ、クンニリングス、アナルセックス等も含める)によって感染する全ての感染症をさし、性行為が最も通常の感染様式であるものをいいます
|
|
| 疫学 |
|
日本では欧米先進諸国と異なり急増傾向にあります。
各疾患ごとに増加傾向は異なりますが、若い世代を中心に性の開放化が大きく進んだ反面、性行為感染症の知識や性教育が追いついていない事が大きな要因といえます。一般に「ピル飲めば生でHして大丈夫」というような言葉にもあるように性行為に対して「避妊」のみにしか知識が普及しておらず「行為感染症の予防」という知識が著しく欠けている事が大きな問題でもあります。
欧米先進諸国では小中学校時よりコンドームの重要性を徹底して教え込んでおり、欧米の若者の多くは避妊というよりも感染症予防としてコンドームを持っていることが普通ともなってきています。このため欧米先進諸国では一般に性行為感染症は横這い、または減少傾向となっています。
また日本の性風俗店では、欧米と異なりいわゆる「本番行為」以外の「素股」「フェラチオ」「アナルセックス」等が多く、「本番行為」を行わない事で、ただ避妊さえすればよいという理由でコンドームを使用しないで直接陰部の接触を行うサービスが横行している事も感染の拡大を招いているともいえます。
|
|
| 当院での治療対象疾患 |
| 感染経路はそれぞれ疾患ごとに異なりますが、いずれも接触感染(皮膚や粘膜の接触で感染する事)を基本としています。 |
|
|
| 疾患の説明 |
| それぞれの疾患の感染経路、症状湯、診断検査、治療に関し簡単に説明します。 |
クラミジア感染症(クラミジア尿道炎・膣炎) |
- (感染経路)
- 性交・オーラルセックス、キスなどにより粘膜に感染します。感染部位は尿道(男性のみ)、膣内(女性のみ)、咽頭(男女とも)。相手が咽頭感染している場合、通常の口づけでは感染する可能性は低目ですが、ディープキスの場合は感染率が高くなります。
- (症状)
- 感染2-3週間の潜伏期を経て発症しますが、自覚症状が出にくいという特徴があります(男性は30-50%、女性は70-80%が自覚症状を感じないといわれています)。
- 男性の場合は、排尿時の痛みや違和感、かゆみがでる症状や、尿道から白色透明な膿が出ることがあります。
- 女性の場合はおりものが増えたり、下腹部の痛みや違和感、性交時の痛みが出ることが事がありますが、よほど進行しないかぎり自覚症状は見られません。
- 治療せずに放置しておくと、クラミジアが体内深部に進行し、男性の場合は尿道経由で前立腺炎・副睾丸炎(精巣上体炎)・肝炎・腎炎になる事があります。女性の場合は子宮頸管炎・卵管炎になり、進行すると骨盤腹膜炎になったり肝周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis症候群)をひきおこしたり、不妊の原因となる事もあります。また産道感染により、新生児が結膜炎・肺炎を発症することもあります。
- 自覚症状にとぼしいため、感染に気づかず保菌している場合が多々あります。
- 咽頭に感染するとのどが痛くなり痰が増えたり発熱を認めることもあります。
- クラミジアに感染していると、他の性行為感染症やHIV(3-4倍)の感染率が飛躍的に高くなります。
- (診断法)
- 男性は初尿を検体としてクラミジアの遺伝子を調べるPCR法が一般的です。
- 女性は膣に感染するため、検査用の綿棒を使って膣、子宮頸部よりの検体で検査します。
- (治療・予防)
- どこに感染しても治療法は同じで、ニューキノロン系(クラビット等)、テトラサイクロン系(ミノマイシン等)マクロライド系(ジスロマック等)の抗生物質を1-2週間内服する事で完治できます。治療後、症状は数日で軽減しますが、完全に死滅していない事があるので、医師の指示通り服用する必要があります。また、薬に耐性のある耐性菌も増加しているので、薬の効果をみるため週一回の通院が必要です。途中でやめた場合ぶり返したり、菌が薬剤に対して耐性を持ってしまい症状が悪化したり、治りにくくなることがあるため、医師から完治の診断が出されるまで定期的に通院することが重要です。
- 特定の性行為パートナーがいる場合は、パートナーの検査も必要です。
コンドームの着用である程度予防することができますが100%ではなく、口から口への感染は防げません。一番の予防法は不特定多数との性行為の自粛です。
|
淋菌感染症(淋菌性尿道炎・膣炎) |
- (感染経路)
- 性行為・オーラルセックスにより感染します。性交や性交類似行為以外で感染することは稀ですが、極めて稀に、大衆浴場など共用椅子よりの感染もあります。感染部位は、咽頭・性器(尿道、膣)などの粘膜のほか、子宮頸部、直腸などの内膜や、眼の結膜を侵すこともあります。出産時に母子(垂直)感染を起こすこともあります。
- (症状)
- 感染後数時間から数日で発症します。咽頭の場合は咽頭炎、性器の場合は、淋菌性尿道炎(男性のみ)、淋菌性膣炎、子宮頚管炎(女性のみ)を起こします。
咽頭の感染では、あまり症状は見られないことがあります。
- 男性の場合は多くは排尿時や勃起時などに激しい痛みを伴います。しかし、場合によっては無症状に経過することも報告されています。
- 女性の場合は数週間から数カ月も自覚症状がないことが多く、症状があっても特徴的な症状ではなく、単なる膀胱炎や膣炎と診断されることがあります。放置すると菌が子宮頚管、子宮内膜、卵管と進み、骨盤腹膜炎、肝周囲炎に進展する事もあります。骨盤腹膜炎による骨盤内の炎症は、卵管周囲の癒着を生じ不妊や子宮外妊娠の原因となることがあります。
- 咽頭や直腸の感染では症状が自覚されないことが多く、特に咽頭炎は性行為の多様化による口を使ったオーラルセックスで感染し増加しています。
- 新生児は出産時に母体から感染する(母子感染:垂直感染)ことがあり、両眼が新生児結膜炎となり、早く治療しないと失明するおそれもあります。
- 血液中に淋菌が進入すると心臓の内部へ感染し淋菌性心内膜炎を発症する場合もあります。
- 淋菌感染症は何度も再感染します。
- (診断法)
- 男性では初尿または尿道分泌物(膿)の淋菌を確認することにより診断します。尿道分泌物(膿)をスライドグラスにとり淋菌を染色して顕微鏡で観察する検査方法や、尿中の淋菌を核酸増幅法により確認するPCR法が一般的です。女性では子宮頚管分泌物中の淋菌をPCR法で検査します。
感染している女性のうち淋菌を確認できるのは60%程度。男性の感染者の場合は陰茎からの分泌物サンプルを調べれば90%以上で診断がつきます。のどや直腸の感染症が疑われる場合も、これらの部位のサンプルを採取し培養検査を行います(口腔内にはナイセリア属の常在菌がいるためPCR法は偽陽性が出るため適しません)。また、淋菌感染症では血清診断法は有用ではありません。
- (治療・予防)
- ペニシリン系(トロビシン筋注等)の抗生物資の投与で治癒します。完治まで定期的受診が必要です。自己判断で途中で通院をを中止すると、再び淋菌が勢いを盛り返し、完治しないだけでなく耐性菌の出現を誘発してしまう場合もあります。ただし近年は抗生物質の乱用から高い耐性を持つ耐性菌が蔓延しつつあります。耐性菌に感染した場合は、治療が長期にわたる可能性があります。このため国や地域により有効な抗生剤が異なります。
- 予防はコンドームの着用、不特定多数の異性との性行為の自粛が重要です。また、患者だけでなくその接触者にたいする早期診断と治療開始も重要です。
|
上記、クラミジア尿道炎(膣炎)と淋菌性尿道炎(膣炎)は約40%で同時に感染してい
ます。このため検査、治療を両者同時に施行することがあります。
|
梅毒(梅毒トレポネーマ感染症) |
- (感染経路)
- 主に性行為・オーラルセックスにより感染、皮膚や粘膜の微細な傷口から侵入し、進行によって血液内に進みます。これ以外にも母子感染(垂直感染)、血液を媒介(輸血など)とする感染もあります。母子感染の場合、子供は先天梅毒となります。
- (症状)
- 感染後約3週間で発症します。治療しない限り体内に残り、最終的には死亡します。現代において先進国では、抗生物質の発達により、第3期、第4期に進行することはほとんどなく、死亡する例は稀となりました。
- [第1期];感染後3週間〜3ヶ月の状態
- トレポネーマが侵入した部位(性器、直腸、口)に1pほどのしこり(無痛性の硬結で膿を出すようになり、これを硬性下疳と言う)を生じます。しこりはすぐ消えますが稀に潰瘍となります。また、股の付け根の部分(鼠径部)のリンパ節が腫れてきますが、痛みがほとんどないため、その症状に気がつかないこともあります。そのまま放っておくと症状は自然に消失します。6週間を超えるとワッセルマン反応等の梅毒検査で陽性反応が出るようになります。
- [第2期];感染後3ヶ月〜3年の状態
- 全身のリンパ節が腫れる他に、発熱、倦怠感、関節痛、バラ疹と呼ばれる特徴的な全身性発疹、外陰部や肛門周囲のイボ状の丘疹など、いろいろな症状が現れます。この症状が、現れたり、消えたりを、約3年間ほど繰り返すといわれています。出来ては消えるので、治ったと錯覚してしまう人や、たいした病気ではないと思う人も多く、治療のチャンスを逃すこともあるようです。感染して5〜6ヶ月後には頭髪が薄くなってくるため、これを隠す目的でヨーロッパでは16世紀頃からカツラが大流行したといわれます。
- [第3期];感染後3〜10年の状態
- 筋肉、骨、内臓にゴムのような腫瘍(ゴム腫)が発生します。鼻骨が侵され、鼻が陥没することもあります。また、この状態になってしまうと治癒は不可能となります。
- [第4期];感染後10年以降の状態。
- この時期には、症状もかなりすすみ、心臓、血管、脊髄、神経や脳まで梅毒に侵されています。症状は、大動脈瘤、痴呆、進行性マヒなどとなって現れます。
中には大動脈瘤が破裂して死亡することもあります。
(診断法)
- 検査方法は、梅毒かどうか血液検査で確認します。但し、血液検査は感染してから6〜8週間経過しないと
きちんとした判定が出来ないので注意が必要です。
- (治療・予防)
- ペニシリン系の抗生物質の投与で治癒します。治癒に要する期間は2〜8週間です。なお、感染してから1年以内の梅毒を治療した場合、初日だけ38度台の高熱が出ることがありますが、菌が一気に死滅するための反応熱であり心配ありません。
- 予防はコンドームの着用、不特定多数の異性との性行為の自粛が重要です。
|
性器ヘルペス |
- (感染経路)
- 性器ヘルペスは単純ヘルペスウイルスの感染でおこる病気です。 最近では20歳代の感染が多いと言われています。
ヘルペスは、目や口の上半身や、性器などの下半身に感染しますが、中でも性器に感染したものを、性器ヘルペスと呼びます。その多くは性行為によって感染するので、性行為感染症の1つとされています。直接性行為により感染する以外にも、疲れていたり体調が悪いときにおこることもあります。妊娠中にこの
病気に感染すると、出産時に産道で感染する(母子感染:垂直感染)恐れがあります。又、今は症状がなくても、疲れているときや、
風邪などの病気から抗生物質を服用するなど、身体の抵抗力(免疫力)が著しく低下することで、再発する
こともあります。
- (症状)
- 初感染の場合、3日〜7日の潜伏期間をおいて症状が現れます。発熱や倦怠感が起こり、次に米粒大
(1mm〜2mm)の水ぶくれが、女性は外陰部や膣に、男性は亀頭包皮にできます。水ぶくれはすぐに破れ、
じくじくした潰瘍へと変化します。下着が触れたり、排尿をするだけで、痛みを感じるようになります。
中には足の付け根のリンパ節が腫れることも あります。この症状は2〜3週間続きます。感染者の相手
(セックスパートナー) の69%が無症状という報告があるので、無症候性 (症状が出ない)
性器ヘルペス患者が多く隠れていると考えられます。
- (診断法)
- 検査方法は、特有の水泡と浅い潰瘍の所見で、おおよその判断がつきますが、正確な診断をするために血液検査を行うこともあります。また、不顕性感染の場合は血液検査で判断します。
- (治療・予防)
- 抗ヘルペス剤 (バルトレックス、ゾビラックス) の内服と抗ヘルペス剤軟膏塗布の両方を行います。しかしながら、神経節などに潜伏感染しているヘルペスウイルス対して抗ヘルペス剤は無効で、疲労やストレスなど抵抗力が低下したときに再発します。近年(2006年9月13日厚生労働省認可)、年6回以上再発する患者さんに対し、低容量抗ヘルペス剤の長期内服(6ヶ月から1年間)による再発抑制療法が保険適応となり効果が期待されています。
- 予防はコンドームの着用、不特定多数の異性との性行為の自粛が重要です。また、患者だけでなくそのパートナーや接触者にたいする診断と治療も重要です。
|
ヒトパピローマウイルス感染症(尖圭コンジローマ) |
- (感染経路)
- 性行為によりヒトパピローマウイルスが性器に感染し発症します。多くの場合は、性器にイボ状のものが多数でき、増えたり大きくなったりします。カリフラワー状になることもあります。
- 尚、子宮頸がんの原因とされるウイルスもヒトパピローマウイルスですが、コンジローマとは型が違い、がんになることはありません。(コンジローマ:6、11型、子宮頸がん:16、18型)。
|
 |
|
|
トリコモナス原虫感染症 |
- (感染経路)
- 寄生虫の一種であるトリコモナス原虫が、性行為によって膣内に入り込むことによって感染します。 あまり多くはありませんが、性行為以外に、公共施設の脱衣場、お風呂のいす、便器、タオルなどで感染することもまれにあります。 また、この病気にかかると、膣の自浄作用が低下して、他の感染症に感染しやすくなります。
|
 |
- (症状)
- 女性は外陰部にかゆみが生じ、黄色っぽいおりものが増えます。おりものは、緑色っぽくなったり、泡状になった
りすることがあり、いずれもきつい匂いがします。外陰部がただれ、膣壁に出血が見られる場合もあります。
このようなときは、膣の粘膜が赤く腫れ、発疹ができていたりするため、性交渉時の膣の痛みや少量の出血
を起こすことがあります。病気が進行すると、尿道炎や外陰炎を起こし、排尿の時や歩くときに痛むように
なります。男性はほとんど自覚症状がありません。
|
 |
- (診断法)
- 検査方法は、女性の場合は、検尿や専用の綿棒(スワブ)で膣や子宮頸管分泌物を採取して検査をします。女性の場合はほとんど検査による痛みはありません。
- 男性の場合、検尿や細い綿棒状の物(スワブ)を外尿道口より入れて分泌物を培養する方法が一般的です。この病気はクラミジアの逆で、男性にはほとんど自覚症状がありません。このため、感染していると気づかないままに女性にうつしていたり、女性からうつされていることがあります。女性の側に感染が確認された場合は、必ずパートナーにも検査を受けてもらって下さい。
- (治療・予防)
- 治療法は、フラジール(メトロニダゾール)膣錠とフラジール内服薬の併用で、2週間ほどで治ります。膣のほか、尿路に侵入して潜伏することがあるため、膣錠だけでなく、内服薬も必要になります。 男性は内服薬の服用のみです。 男性には自覚症状が乏しいので、女性自身が留意して、必ず2人揃って治療を受けることが重要です。そうでないとピンポン感染していつまでも完治しません。
- 予防は、オーラルセックスだけであっても、必ずコンドームを装着することです。また、公共施設で脱衣する場合、下着類はビニール袋に入れて保管しましょう。下着をつけずにじかに床に座るのも厳禁です。
|
毛じらみ症 |
- (感染経路)
- 毛じらみ症(けじらみしょう)はケジラミ(毛虱)という吸血昆虫による性行為感染症です。成虫の大きさは1mm〜2mmで肉眼的には陰毛の毛根にしがみついている時は「シミ」に、陰毛を移動中には「フケ」にしか見えないため、発見には苦労します。成虫は陰毛の毛根にフック状の鈎爪で身体を固定して皮膚から吸血します。卵は陰毛の根元に粘着します。
|
 |
- (症状)
- 陰毛部の非常に強い痒みを生じます。その痒さは、男女を問わず人前で陰部をかきむしるほどと云われている。
また、吸血した皮膚より出血して下着に血痕が点々と付着するので、血尿を訴えて来院することもあります。潜伏期間は1ヶ月から2ヶ月とされています。
- (診断法)
- 検査方法は、視診あるいは顕微鏡による成虫の確認のみです。
- (治療・予防)
- 剃毛(ていもう):陰毛を全部剃ること。成虫が生息できない環境にし、卵を陰毛に産み付けられないようにします。何らかの事情で剃毛出来ない場合には、次の2つの方法をとります。
- 櫛(くし)でブラッシング:目の細かい櫛で陰毛を丹念にすくことで成虫を除去します。しかし、卵は除く事ができません。
- 殺虫剤:商品名スミスリンパウダーを3日に1回陰毛部に散布して成虫を殺します。これを2週間(4-5回)続ける必要があります。
- いずれの方法も卵を殺すことができないので、全ての成虫を除去するまで根気よく治療することが重要です。またパートナーの検査も再感染防止のため必要です。
- 予防は不特定多数の異性との性行為の自粛が重要です。
|