俳句拾遺
蓑虫の頭上にありて昼近し
(初めての句・15才?)
国語の宿題に
陽光や春を見せんと乳母車
夕立や子の目覚めたる一大事
いま寝しといふ顔に会ふ寒灯下
花冷えや通り抜けゆく長廊下
いつも来るバイク一台土手の春
クラウンと読めるポンコツ夏の草
夏草や積み上げられし古タイヤ
影もまた離れ離れや寒灯下
教わりし道を急げり秋の暮
扇風機風ある処来ぬところ
一島を目のなぐさみに夏の航
牡丹花に雨脚荒く過ぎにけり
牡丹切る今日といふ日の幕切れに
追いかけっこいよいよ熾烈原の蝶
柵越えしよりのびやかに牧の蝶
穂を抜いてふと寂しさよ麦の秋
晩涼や障子にたまる薄埃
春深くいつもの時刻遠汽笛
こちら見る四十の顔や初鏡
顔映す鏡の澄みも秋隣り
南風や妻が指さす白灯台
噴煙や野菊に隠る道しるべ
(登山道)
コスモスや風居るところ無きところ
思い出の欅の下や蝉時雨
(12.8.15)
うつむける向日葵もあり終戦日
秋風やギイと戸のあく空屋敷
活けるとき妻の手若し水仙花
(13.1.13)
一行にて日記終りぬ寒灯下
春の水海に近づきゆっくりと
七十年戦なき世の蝉の声
食卓やコップに飾る水仙花
本にのす拡大鏡や去年今年
(古稀)年賀状
呑み干して廻す盃散る桜
捨てきたる若き日思ふ啄木忌
夕焼けや牧牛帰る後帰る
(小都抄訂正)
俯ける向日葵もあり平和祭
(8.6)
初鏡五十の顔と向き合へる
春風や天平伝ふ屋根の反り
(改正)
市街バス一人を降ろす日の盛り
丘さやか蝶コスモスに寄らしめて
荒波の岩を洗ふも年用意
(29年年賀状)
去年今年貫くものに我が命
去年今年貫くものに命かな
元旦や二羽ゐてをかし枝の鳥
元旦や二羽ゐてかなし枝の鳥
目にしかと鳩の羽搏き終戦日
(17.8.15)
朝顔や悔ひてせんなき敗戦日
(同)
古い俳句手帳より未発表句
秋夕べ早々妻も帰り来し
17・10・25
角曲がり人の消えゆく秋の暮