秋夕べ早々妻も帰り来し   17・10・25
角曲がり人の消えゆく秋の暮
初晴れや旗のためとて風少し 2019年元日
拾ひもつ骨の軽さや箸の先  19.1.14
拾ひもつ骨の軽さや箸寒し
蒲公英や上着を脱いで妻若し  拾遺訂正
冬帽子持ち古したる旅かばん  拾遺
世を睨む軸の達磨や去年今年  拾遺
ふる里の訛なつかし初電話    拾遺
髭剃りて顔新しき初鏡     2020年元旦
庭に来て二羽睦まじき初雀
小春日や母の日課の針仕事    懐古
春風や歩きつづける土手の道
傘立てに傘のいろいろ春の雨
傘立てに突っ込む傘や菜種梅雨
傘立てに突っ込む傘や虎が雨
猫撫でで老いの日課の日向ぼこ  2021年
コロナ怖じ早門閉ざし冬ごもり
初春の祝ひを交はすマスクの眼   年賀状
去年今年命をつなぐ独り酒
去年今年命のはての独り酒
君居てもゐなくなりても蝉高音 田中重雄君命日
マスクしてつなぐ命や去年今年   年賀状
コロナ避け浮世に遠き去年今年 2022年元旦 
初時雨まづ一粒がぼんのくぼ
去年今年命の果ての蕎麦すする2023年年賀状
揚がる凧カイトばかりの初御空  同
山茶花や待たれをるなり由布の雪
山茶花や待たれをるなり峰の雪
人生の歩み疲れし寝正月   2024年年賀状
蛞蝓のごとき校長と居て暑し 大会受賞句
老いてなほ妻の化粧や初鏡  2025年年賀状
向かひ合ふ八十の顔や初鏡   やそじ
越えてゆく塀の高さや揚羽蝶


俳句拾遺
蓑虫の頭上にありて昼近し
 (初めての句・15才?) 国語の宿題に
陽光や春を見せんと乳母車
夕立や子の目覚めたる一大事
いま寝しといふ顔に会ふ寒灯下
花冷えや通り抜けゆく長廊下
いつも来るバイク一台土手の春
クラウンと読めるポンコツ夏の草
夏草や積み上げられし古タイヤ
影もまた離れ離れや寒灯下
教わりし道を急げり秋時雨
扇風機風ある処来ぬところ
一島を目の中に入れ夏の航
牡丹花に雨脚荒く過ぎにけり
牡丹切る今日といふ日の幕切れに
追いかけっこいよいよ熾烈原の蝶
柵越えしよりのびやかに牧の蝶
穂を抜いてふと寂しさよ麦の秋
晩涼や障子にたまる薄埃
春深くいつもの時刻遠汽笛
こちら見る四十の顔や初鏡
顔映す鏡の澄みも秋隣り
南風や妻が指さす白灯台
噴煙や野菊に隠る道しるべ(登山道)
コスモスや風居るところ無きところ
思い出の欅の下や蝉時雨(12.8.15)
うつむける向日葵もあり終戦日
秋風やギイと戸のあく空屋敷
活けるとき妻の手若し水仙花(13.1.13)
一行にて日記終りぬ寒灯下
春の水海に近づきゆっくりと
七十年戦なき世の蝉の声
食卓やコップに飾る水仙花
本にのす拡大鏡や去年今年(古稀)年賀状
呑み干して廻す盃散る桜
捨てきたる若き日思ふ啄木忌
夕焼けや牧牛帰る後帰る(小都抄訂正)
俯ける向日葵もあり平和祭(8.6)
初鏡五十の顔と向き合へる
*向かひ合ふ四十の顔初鏡
春風や天平伝ふ屋根の反り(改正)
市街バス一人を降ろす日の盛り
丘さやか蝶コスモスに寄らしめて
荒波の岩を洗ふも年用意(29年年賀状)
去年今年貫くものに我が命
去年今年貫くものに命かな
元旦や二羽ゐてをかし枝の鳥
元旦や二羽ゐてかなし枝の鳥 
目にしかと鳩の羽搏き終戦日(17.8.15)
朝顔や悔ひてせんなき敗戦日(同)

古い俳句手帳より未発表句