再び初心に帰って 
 
真のおゆぴにずむの追求をしよう    加藤英彦
 「おゆぴにすと」第5号を昭和61年3月30日付けで発行して以来、2年が経過してしまった。その間に我々の活動は地味ではあるがこつこつとした確かな歩みを続けていたはずである。だが、やはりかたちある何かに残さなければ、その活動自体が社会的に認知されたものと言えない。一体我々はこの2年間どんな動きをしたのだろうか?やはりそれはこのユニークな会報を作ることによってのみ得ることのできる喜び、そして満足感そのものではないだろうか。

 最近のマスコミの温泉ブームで、特にTVにおける温泉特集や、紀行の番組を見るにつけ、それらは我々の追求せんとする真の「おゆぴにずむ」とはかけ離れた型のものになっている。そこには必ずといっていいほど美人のうさぎちゃんやレポーターが登場して、露天があり、有名旅館があり、そして高級料理が出てくる。我々はそれら見せつけられることにはもうあきあきしてくると言っても過言ではない。それはマスコミによって作られたブームでしかありえないものであり、ただ眺めるだけのものでしかない。

 しかるに、我々の求める山といで湯、それは実践でしか体験できないものである。自分たちが本当に自然に溶け込んでいって、山を愛し、いで湯を愛する気持ちで接することによってのみ得られる喜びそのものである。そういう意味からして、マスコミによって作られたブームを良く見極めたうえで我々の活動を続けていくようにしたい。そのためにもこの会報「おゆぴにすと」が集大成になるべく努力すべきである。

 何人かの人に質問された。「『おゆぴにすと』はその後どうなっているのか」とか、「もう会は解散したのか」とか。いや、決してそのようなことはない。主力メンバーの数人が今売出し中のトライアスロンの方にのめり込んで言ったことは確かに事実だが、あの山といで湯を糧とした我が「山のいで湯愛好会」は決して失くなったわけでもない。我々の着目点は決して間違ってはいなかったはずである。トライアスロンに夢中になったことは決して悪いことではない。確かにトライアスリート達はそれなりの大変な肉体の酷使によって深みにはまってしまうようにのめり込んでいってしまう。

 しかし、それらの間にもやはり我々の基本は山であり、それを取り巻く“いで湯”なのである。今再び2年間のブランクを乗り越えて、こうして第5号を発刊できるエネルギーを会員が今だに持ち続けているという証しとしても、我々のこの「おゆぴにすと」の灯を絶やすことなく、現代社会にあくせくと生きる者たちへの一服の清涼剤として、価値ある仲間達の連帯感を深める手段として、この「おゆぴにすと」を少なくとも毎年1回は発行できるペースに持っていきたいものである。

 多くの「おゆぴにすと」を楽しみに待っている愛読者たちのためにも、今後とも会員皆様の協力のもと、この会報を継続してこそ真の「山のいで湯愛好会」であると言えるだろう。「継続は力なり」という諺があるが、まさに、続けてこそ価値があるものであり、貴いものである。このことを理解していただき、会員諸君の益々の活躍を期待するものである。

back