提案 「大分の森を守る連絡協議会」の運動に参画しよう
                             山のいで湯愛好会
 我が国は気候風土や地質、地形、生物などについて世界中で最もすぐれたものをもっており、その変化に富んだ自然、そしてその景観要素をもっているということは、外国から帰ってきた人のだれもが思うことである。そして我々日本人は古来より、そのよりすぐれた自然を愛する気持をもちつづけてきた。

 しかし、このことは決して安心することではない。いろいろな美名のもとに寄ってたかっては自然を傷つけ、痛めつけてきている現状があるからだ。名勝、史跡、天然記念物等が完全に保護され、美しい自然があってこそ、その国土の優秀性が誇示され、うるおいのある人生がおくられるということである。

 最近再びそのような自然を破壊するという行為のきっかけとなったのは、傾山系の藤河内渓谷(宇目町)や黒岳(庄内、九重町)の原生林を伐採するということが表面に出て、マスコミ等で大きくとりあげられてきたからだ。そしてその様な破壊行為に対抗すべく標題にかかげた「大分の森を守る連絡脇議会」なるものの発足をみたのである。         ′
 会の構成員はさまざまな分野で活躍している人達である。祖母傾の原生林を守る会、県野鳥の会、町並みとまちづくりを考える県民の会・・・もちろん山岳会所属の人達(県岳連、J.A.C)もいる。会は5月19日に結成準備会を開催しひろく県民の参加をよびかけた。

 ところで、我が山のいで湯愛好会でも当然この会については無視するわけにはいかないと考えている。いや当然この会の目的を理解し、会の趣旨に賛同し積極的に参加していく方向へもっていかねばならない。
 もともと自然保護の運動がなぜ必要かについては、次の3つが考えられる。

 日本は国土が狭く、人口が多いため産業の発達につれて固有の自然がどんどん失われている。自然環境がなくなると学術上重要な野生動物は生息できなくなる。だからまず、学術上必要である。

 次に日本はますます工業化していき都会生活者がふえ、人口が町に集中している。そうすると都会の生活者がゆっくりと休息をとるいこいの場としては人工の手が加えられていない原始的な自然が一番効果的である。これは我が会の発足の時に述べたように我が会の目的である自然との対話である。だから国民大衆のレクレーションの場をつくるためにも必要である。

 そして最後に日本の気衆は温暖で、雨量多く、風が強いのが特徴で、植物の生育には最適であり、青々と茂った森林は日本的な美しさの典型である。しかしこれを乱伐すると美しさをそこなうばかりでなく、自然の調和を破ることになり、人心を不安にする。だから国土保安のうえからも必要である。

 自然保護運動は以上の様な観点から大切なものであることを認識することによりスタートせねばならないのである。何よりも、その土地の本来の自然が残っている原生林は、人間が暮らしやすい環境を考えていくうえで原点となるものだ。だから自然の森を守っていく必要があり、これを次の世代へと残していくことは我々の責務であると思う。

 我々オユピニストは、山を愛し、温泉をこよなく愛し、それにはぐくまれて自らの心身を鍛えてきた。山と温泉そしてそれにつながるもろもろの自然は我々の大切な宝であり、同時にすべての生きるものの宝でもある。

 我々オユピニストは自然に包み込まれ、それによって守られ、さまざまな恩恵と試錬を受けながら生活の場をあたえられてきた。しかし、人間は近年特に自然を破壊する行為が目立ってきた。無秩序な開発、資源の浪費、生態系の破壊は急速に自然環境を悪化させてきている。我々の愛する山も温泉もまた、森や草原や水、そこに生きる動物たちをも失おうとしている。こうした事態が続けば、近い将来人類の滅亡という危機に直面することにならぬとも限らない。今ほど人間が自然の保護と保全に全力をあげねばならない時はないと考えられる。とりわけ我々オユピニスト達はその運動の先頭に立ってこれをおし進めるべきである。

 山と温泉、そしてそれにつながる自然を尊び愛し、親しむため、自然を守りそれを人類の未来へ伝えることを責務と心がけるべきである。こうした認識のうえにたって我々オユピニストは、この「大分の森を守る連絡協議会」の活動に大いに賛同し、協力してこの運動をおしすすめていかねばならないと考えるのである。
                 (文責:会長 加藤英彦)