表紙の解説
 湧蓋山(わいたやま、1499.9m)−−たおやかな草原美を誇る九重の山々の中にあって、ひと際しなやかな曲線美をかもし出す山。九重に付かず離れず、独り孤高を保ち続ける山。豊後の山で最も秀麗な山は?と聞かれたら湧蓋山の名を挙げることに何の躊躇もない。

 春3月、桜の便りが聞かれ始める頃、九重の山裾は一斉に野焼きの炎に包まれる。その頃には、もう新しい生命の息吹が芽生えている。そんな頃、傍らの野焼きの炎に狂喜しながら、阿蘇、九重、由布、鶴見、英彦山など九州の主要な連嶺を飽くことなく眺めながらの草原漫歩はことのほか風情がある。

 そして、ほんの少しだけの、筋肉の心地よい疲労感は、ひぜん湯の硫化水素泉がいやしてくれるであろう。周囲には筋湯をはじめ多くの山のいで湯が点在するが、湧蓋山には‘ひぜん湯’がぴったりなのだ。(題字と版画:加藤英彦、文:挾間 渉)

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