ファミリーシリーズ
  〜ファミリーで山といで湯を求めて〜
  加藤英彦
 一日家族で、子供と奥さんを連れて山と温泉を訪ねる適当な場所はないだろうか。探してみると恰好の場所がある。今年は特に長くて厳しかった冬の寒さもやっと去り、待ち遠しかった春がやってきた4月のある日曜日、九重の長者原登山口へ約束の時間に宇佐からの挾間家一行と合流した。メンバーは加藤家4人、挾間家4人といで湯の会子供会会長の別府の自見君(小4)の総勢9名である。

 長者原に着く頃、ちょうどこの地一帯は野焼きの真っ最中で一時車を停めて火を眺めるほどであった。自見君が大声で三俣山をバックにして燃え上がる炎を見て「オレンジのダンスだ!」と表現した。まさに風にあおられて数メートルの炎を上げ一列となって燃えていく様子を子供心に直感として表現したものだった。それほど久しぶりに野焼きの炎を見て興奮したところだった。   

 さて車を筋湯温泉へと走らせ、筋湯の駐車場に一台置き、もう一台に9人が乗り込んで八丁原へ。九電の発電所のやや上の道路横に車を捨て、ここから草原の一目山(ひとめやま)への登りとかかる。しかし主婦の組はこの山へは登らず右へまいて行くが、元気のいい小学生の組は張り切って一目山への急登を一気に頂上(1285m)へ。頂上からの眺めは、どこも野焼き日和なのか高原の行手の方からも、はるか彼方にも煙が上がっているのが見える。道は一気に一目山を駆け降り、そこからは全く焼けたばかりの真っ黒になった草原状の道なき道を涌蓋の方へと忠実に辿る。

 挾間家の次男がやや遅れ気味だが、他の子供は一斉に走り出すくらいにこの草原の道を楽しんでいるように先を急ぐ。途中、野焼きの火がまだ燃えていない道端の草原を一気に燃やしているところや、谷状の斜面を下部の方から火が巻き上げているところに出くわす。誰も監視する人もついていないのに勝手気ままに火は燃えているようだが、よく見るときれいに、忠実に山を燃やし尽くしている。この行程はずっと大分県と熊本県の県境にあたり、土塁状の盛土をした境が続いている。

 やがて一つのピークに差しかかる。みそこぶし山(1296m)と呼ばれ、大きな無線中継塔が建っているので飯田高原側からもよく分かるピークである。みそこぶしより一気に下り、ひぜん湯から来た道と合流するあたり(涌蓋越)も一面野焼きが済んだばかりの状態である。歩き始めて約2時間、12時も過ぎたが涌蓋分かれまで頑張って昼食とする。やや風の避けられる窪地で昼食とする。昼食後は二人の奥さんと挾間君の次男を置いて出発。子供たちもややバテ気味であったが、頂上まではと頑張らせる。途中、博史君は肩にたるところでついにストップする。上から声をかけても動こうともしない。湧蓋山頂上(1500m)からのパノラマは圧巻である。飯田高原の様子が真っ黒に変化している。山頂は南北に細長く小さな石祠があるが、山頂部分は大分県側にある。

 下りは一気に駆け降り、涌蓋分かれで残留していた組と合流後、涌蓋越を経てひぜん湯の登山口へと一気に駆け降りる。途中、野焼きの火が燃えているところに出くわして、忠実に燃えていく火を足元にまたごすようにして眺め入る。子供たちは火を見てうれしがることしきりであった。さてひぜん湯より筋湯へ出て、本日の歩きはほぼ終わった。もう一方の目的である温泉は筋湯の大浴場のうたせである。大人100円、子供50円を払って早速飛び込む。今日一日の行程で疲れた足のふくらはぎを温泉のうたせに当てる。心地よい気分となる。湯量も豊富で充分に楽しめる温泉である。子供たちもたっぷり温泉に浸り、一日を存分に楽しんだ模様。

 このコースはのんびりと静かな草原の山を歩き、ゆったりと温泉に浸れる最高のコースであって、我が山のいで湯愛好会推奨のコースだ。(尚、車を一台筋湯に置いておけば下山後、八丁原にデポした車の回収が容易だし、もちろんタクシーを利用する手もある)また我が会が創立して初めての例会の時に使用したコースであり、その際の報告は原稿にしてアドバンス大分の矢田氏に渡してある。しかしアドバンスの方の都合でいまだに「大分の温泉」は発行されていないので再度このコースを紹介した次第である。(おわり)

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