我、 今年のG.Wは前半、豊後・筑後国境の津江コルム山系に足跡を残して、ちょっぴり充実感を味わったが、おゆぴにすと本国では徒党を組んで紀伊半島は大峰修験道ルートへ遠征したり、日帰り祖母・傾連峰完全縦走をやってのけたりと、派手な?山行が巷を賑せた模様である。ならば周りに感化されやすい己の性癖からして、結果としていささか消化不良の感なきにしもあらずであった。しかしそうは言っても大それた計画など立てる才覚もないし、実践する度量もない。ないないづくしで思い立ったのが、ささやかではあるが基山(405m)〜天拝山(258m)ランニング登山である。身近と言えばごくごく身近、しかしもっと身近な春日公園ばっかりのランニングではあまりに非日常性はなく、低山ながら山歩き(走り)が出来て、しかもこのコースは大部分、未踏であったことに大いに食指が動いたのだった(天拝山のみ武蔵寺から既登)。 そしてよくよく考えてみると(考えなくとも分かるけど)筆者は福岡近郊の山々にはちっとも登っていなかったのだ。先ずは地元を知らずして何を語れようぞ!という訳で、今回のこのコースはその端緒とも言うべきエポックメークな山行なのだ、とこじつけて動機付けとした。以下、粘走の記録である。 先ずはコースの概観から。JR原田駅を起点に基山の頂を踏み、北進して平山集落へ下った後は、天拝ダムを経て天拝山、そして一気にJR二日市駅まで駆け下ることになるが、案内書によれば総歩行キロは約14km、累積標高差は約700mとあり、歩行時間(休憩含まず)は3時間45分とあるので、早駆け走の定義を歩行時間の2/3以下として2時間半以内ならヨシとしよう、と思惑を秘めての出立であった。 で原田駅スタート場面では着替えのTシャツ、カメラ、手帳、サイフ、携帯電話に黒飴をウェストバックに詰め、手に500ml のペットボトル、足元はアシックスのライトレーサー(高速走行用ランシューズ)と軽装かつアクティブな出で立ちでゆるゆると走り始めたが、駅の南側の高架橋を渡り、高速道路下をくぐった十字路で早くも道に迷った。コンパスどおりなら直進すべきだが、ガイド本は右折とあり、しばし思案。そしてここはガイド本に阿ねた。と案内どおり100mも行かぬうちに左折する林道の起点を確認して、ヨシヨシと頷く。やっぱりガイド本は侮れないぞ、と再認識して後は谷筋をじわじわと上る林道を忠実に辿り、10分ほどで登山口を見出したのだ。そしてこの間は雑木林や竹林がつづき心地よい趣。出だしのシチュエーションとしては悪くない。しかしこの五月晴れも森の小道は薫風も吹かず、曲がりなりにも上り坂を走るので、既にじわじわと汗は流れ出てその意味で先が思いやられた。 さてその登山口付近には車が3.4台留まっており、その中の一台から離れ、まさに登らんとしているおじさんをパスして山道へ分け入った。うんうん、なかなか順調、スピードは上がらないが一応ランニングのつもりだから、歩くよりは幾分なりとも速いに違いなかろう、と己に言い聞かせて先を急いだ。しかしお滝の行場からは傾斜も急になり、早くも速足へと切替えだ。それでも鬱蒼とした桧林の中の踏跡をひと登りで山城の一角、東北門跡へ到着。更に直進して沢を渡り、尾根に取り付くと礎石らしきものが点々と現れ、なるほど基山一帯は山城であったことがリアルに分かるんですね。まぁしかし遠く往時を偲ぶような感慨はなく、目下のところ速歩でも山頂を早く踏みたいだけだった。この気ぜわしさ、ラン登山と銘打ってしまったものだから仕方ないが、どうかならんかね、と苦笑いしつつの自問自答。それでも高みへと確実に詰めて行ったんであります。
基山山頂を後にして西側の草付きを下ると、斜面では草スキーに興じている数組の親子連れの歓声に気を取られ、その下の草原では2.3のグループがピクニック気分の昼食真っ最中とあって、こっちも大いに気になった。いずれもシリアス?ランナー(筆者のこと!)には無縁の世界だと強調するにしても、このシーンは風薫る5月のアウトドアを象徴する風景ではないかと率直に思うのだ。そしてその理由は、くねくねと曲がりつつこっちへ迫り来る車道によって説明がついたのだ。なるほど車道脇には車が5.6台認められ、登山よりも車横付けピクニックの山だからこその賑わいと悟った次第。まぁそれはそれとして市民の憩いの山としてすっかり認知されている様子に悪かろう筈はない。むしろこんな羨ましいグループの脇を通り抜ける時に限って、走りに勢いが増す己の性癖は如何なものか、と自省の念を込めての苦笑いだ。 おっとこっちは先を急がねばならなかった。もちろん車道へ出る手前で、九州自然歩道の道標に導かれて北へ取り、谷間の中の常緑樹や杉林、竹林を突っ切り、或いは谷川のせせらぎを聞きながら一気に駆け下ること約20分で、のどかな山里の雰囲気が漂う平山集落に降り立ったのだ。 でここから天拝山稜線へ取り付く免ケ原林道までは、山里とは言えとびっきりの車道を走るので、いささか興ざめの感は拭えなかった。加えておおよその方角は分かっていても、天拝山を示す道標は分岐単位には見当たらないので、集落のメインストリートで躊躇しつつ、行ったり来たりと(尋ねようにも誰もいない!)、風来坊をしばし演じたのだった。それでもようやく探し当てた十字路を突っ切ると一級国道並の車道へと繋がり、やがて天拝ダムの堰堤へ上がってうねうねと湖畔をなぞった。すると、たくさんの親子連れで賑わう さぁこれからは再び山の領域である。林道終点まではひとっ飛び、小さな峠から天拝山へ1.6kの道標に導かれて稜線へ取り付いたが、序盤は竹林から松林へと緩い上りがつづき楽勝ムードいっぱい。これなら15分はかかるまい、とたかを括っての道のりであったが、照葉樹林で覆われた気持ちのいいいくつかのアップダウンを経て、ベンチのある285mピークを越すまではけっこう走れたんであります。しかも天拝山はもう目と鼻の先の筈。ところがここから、一気に70m近い急降下と相成り、300mに満たない山稜で遠目に見てなだらかだと思い込み激しい筆者にはこんな筈ではなかった、との思いはしきりであったね。まぁそれでも目論見よりは5分程度のオーバーで2年ぶりの山頂に立ち、ひとまず目的は達したが、辺りは子供会の遠足らしき賑わいで喧噪のるつぼとあっては、またまた長居は無用であったぞな。さぁ後はJR二日市駅まで一直線。武蔵寺からのメインルートを続々と登ってくるハイカー諸兄を蹴散らしつつ (気持はね)、このせわしげな山旅のフィナーレを軽やかに駆け抜けて行ったのだった、フーフー。 でタイトルは大仰だけど、中身は実質行動時間2時間ちょうど。ドア・ツー・ドアでも約3時間ほどの低山早駆け徘徊行の感強しであったが、それでも晴れやかな皐月の風を受けて、未踏のコースをなぞれたことで、ショージキなところそれなりに満足している。そこでこの熱きタタカイのエッセンスを速報として世に知らしめたところ(おゆぴにすとHPの掲示板への書き込み)、早速こだわり編集長の反応は「前略〜なお、早駆け走について標準コースタイムに対する短縮率は、通常、50%を目標にすべきと考えています。その意味で天拝山の湯っ栗さんはランニング登山としては少しゆっくりですね。〜後略」といつものひとくさりを忘れず、我がルポの弱点をしっかりと衝いていたが、今更タイトルは変えられないぜ。 (コースタイム) JR南福岡:駅10:37⇒電車⇒JR原田駅10:51 55→林道入口11:06(少し迷う)→基山登山口11:17→東北門跡11:27 29→基山11:40 43→平山集落出合い12:03 05→(少し迷う)→天拝ダム12:19→ |