審判員のことである。
それも、仕方なしにやっているのではなく、求道者のごとき者たちの話。
ある九州大会のベスト4の試合、当然審判員たちも選りすぐりが立っている。
単に、ストライクボール、アウトセーフを言うだけでなく、試合の流れ、観客、大会スタッフなど
多くのことを考えながらグラウンドに出ている。
インコーナー高めに、打者が振りかかったと思った瞬間、捕手が立ち上がろうとする、
気配を感じた球審がボールの見える位置に多少体を移そうとした時、打者に当たった音がし、
ボールが足元に転がった。動いた捕手の体が大きく、肝心の場面ピンポイントは見えなかっただろう。
以下は、試合後球審から聞いた話である。
ためらってはならない。
推察と五感の全てが伝えようとしている事は、「デッドボール」だ、と。
両手を上げ、打者を一塁へ行かせる。
一塁塁審がさりげなくそばに来て、(ファールボールじゃない?)と。
彼は、体に当たる前に、バットに当たったように見えたということらしい。
(いえ、デッドボールです)(ふ〜ん、了解)
といってる間に、三塁塁審がそばで(ボールじゃない?)と。
彼は、当たったのは確かなんだけど、打ちに行って避けてないように見えたと。
(いえ、デッドボールです)(はい、はあい)
やれやれと思ったら、守備側の監督がやおら出てきた。
(え〜!まだあんのかよお!)
「今のは、スイングじゃないですか?ストライクでしょ!」
要するに振りに行ったが空振りして、変化球が体に当たっただけじゃないかと。
「いえ、デッドボールです」
事実に基づく判断は一つしかない。
その一つのジャッジが、勝敗を左右する。
このケース、4通りのジャッジは可能性としてはあるが、真実は一つ。
プレイヤーも観客も納得できるジャッジを、審判員は課せられている。
審判は、ルールという知識と審判技術を身につければ出来る訳ではない。
信頼という流れに乗った厳しい視点が求められる。
刃の上を素足で歩く覚悟があるかどうか。
それにしても、この3人は流れも場面も経験から来る判断もいいねえ。