育児広場

これから出産される妊婦さんへ

大分県では「ペリネイタルビジット」といって、これから出産される妊婦さんへの支援として産科から小児科へ紹介するシステムのテストが行われています。その時にお話することは...

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「いい親子関係を築きましょう。」

その方法は、

1)おっぱいを頻繁に飲ませてください。
2)常に抱っこしてください。

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出産前に難しいことを言っても理解できないし忘れてしまいます。
これだけの内容なら理解できるし、覚えておけるでしょう。
では、その内容を解説しましょう。
「いい親子関係」とは :親が子のことを理解し、子が親のことを信頼することです。

理解できれば、どう対応すればいいかは自然と分かります。
お腹が空けばおっぱいを飲ませますし、寒いようなら暖かくする、など対応ができます。
子が親のことを信頼していると精神的に安定しますし、親のいいつけを守ったり教育効果も上がります。
将来的にもいじめられていないか、非行に走っていないかなどを察知し対応することにもつながります。
子育ての基本を乳児期にしっかり作りましょう。

1)おっぱいを頻繁に飲ませてください。

母乳には多くの利点があり、完全母乳栄養(最近では母乳保育と言います)が理想です。

完全な栄養 人工乳はかなり良くなってきましたが母乳に似るように改善されてきているし、母乳を超えるものではありません。

免疫 母乳中にIgAという免疫グロブリンが含まれています。人工乳にはありません。

経済面 もちろん母乳は無料です!!

携帯性 ピクニックに行くときもお湯、哺乳瓶、ミルクなどを用意する必要がありません。

簡便性 夜間お母さんが眠たい時、お湯を沸かしたりミルク粉を溶かしたりミルクの温度調節をしたりする必要がない。赤ちゃんも待たずに直ぐに飲める。

母子関係の確立 実はこれが最大の利点です。スキンシップは、じかに皮膚が触れ合う母乳が人工乳に勝ります。母乳で育てられた方が人工乳で育てられた人よりも犯罪者になる確率が低いというデータもあります。

SIDS対策
 乳児突然死症候群(SIDA)という原因不明で気がついたら赤ちゃんが亡くなっていた、というような病気のリスクは母乳栄養だと人工乳に比べて低いというデータがあります。赤ちゃんの安全のためにも母乳が有利です。

母子関係への影響 親子関係を築く上で母乳が有利です。母乳で育てた子は犯罪者になる率が人工乳に比べ低いというデータがあります。

上の項目はどれも重要ですが、特に最後の母子関係への影響が重大です。
母乳で育児すると良い親子関係が構築でき、犯罪者になるリスクが低いというデータもあります。
携帯性や簡便性については、ミルクを少しでも足していると結局哺乳瓶や乳首やお湯の準備が必要になるので、完全母乳でなければ母乳のメリットがありません。完全母乳を目指しましょう。

   《 母乳を出すコツ 》
母乳を増やすには頻回におっぱいを吸わせることです。

  母乳を吸う乳首の刺激が脳に伝わる→母乳を分泌するホルモンが脳から出る母乳が増える

と、吸えば吸うほど母乳が増えるようになっています。
育児書には3時間毎一日8回とよく書いていますが、これは順調になったらそのくらいでも十分ですが、増やすには8回では少な過ぎます。
赤ちゃんが空腹になって泣き始めたら直ぐに吸わせる...では少し遅いです。もう少し早く、違和感のある動きを始めたら吸わせてみます。必要がなければ止めればいいことです。どの動きがおっぱいをあげるタイミングなのかが段々と分かってきます。(これが理解すること、母子関係にもつながります。)
20回でも30回でも吸わせて下さい。ほぼ必ず(97%以上)十分の母乳が出るようになり完全母乳栄養ができます。
ここで重要なのは、完全母乳栄養にするということです。


母乳が足りているか心配、体重増加が心配、夜に起きるのが心配になると、、、、ミルクを足すお母さんが多いのですが、

  人工乳(ミルク)を飲ませる
→乳首を吸うのが減る→脳への刺激が減る→脳が母乳不要と判断する
  母乳を分泌するホルモンが減る母乳が減る→ミルクが増える→母乳を吸うのがさらに減る→脳への刺激が減る→→→→→→→

悪循環を繰り返して、母乳が止まりミルクだけになります。
つまり、不安を感じて一日一回ミルクを飲ませたのがきっかけで母乳が止まることになるのです。
育児には不安がつきものですが、不安を感じた時にミルクを追加するのに走るのではなく母乳を吸わせる回数を増やすべきです。
高崎山の猿やアフリカの原住民のお母さんは必死で母乳を吸わせるので母乳が十分出てミルクなしで育児ができています。
それより栄養状態の良い日本のお母さんはもっと母乳だけで行ける筈です。
お猿さんや原住民のお母さんに負けないように母乳を吸わせて下さい。

 

2)常に頻繁に抱っこしてください。
スキンシップが母子関係に良い影響を与えます。
また、常に抱っこしていると無意識で常に赤ちゃんのことを考えています。
少し動いたら、「お腹空いたかな?」「オムツ濡れたかな?」「眠たいかな?」と考えて、母乳を吸わせたり、オムツを確認したりします。このことで、赤ちゃんのどういう動きが空腹のサインかなどが段々と理解できるようになってきます。
赤ちゃんを身につけるように、常に抱っこしていて下さい。赤ちゃんは寝かせておくものだと勘違いしないようにしましょう。
人間はもともとずっと抱っこするのが本来の姿です。高崎山の猿やアフリカの原住民のお母さんは赤ちゃんをずっと抱っこしています。赤ちゃんだけ寝かせるなんて絵を見たことがありません。抱っこするのが一番安全だからです。
抱きグセを心配する方もいます。しかし、最近の考え方では逆に「抱っこが足りないと抱きグセがつく」となっています。抱っこを十分しているとわざわざ抱っこして欲しいと思わない。抱っこが足りないと親を信頼できない、不安で泣くということになります。
十分抱っこしても抱きグセがつくこともありますが、ハイハイを始めると泣かずに抱っこを求めてハイハイして来るようになります。少しの間なので問題ありません。
良い親子関係を作る最大のチャンスを逃してはいけません。しっかり抱っこをしてあげましょう。

 

《育児に関してのQ&A》

離乳食の開始時期は?
抱きぐせがつかないようにするにはどうしたらいいですか。
スキンシップが大切なのは何となくわかりますが、どうしてでしょうか?
断乳はいつしたらいいでしょうか?
小児科は何歳まででしょうか?
歩行器はいつ頃から使って良いでしょうか?
赤ちゃんの鼻づまりはどうしたらいいでしょうか?
離乳食を少ししか食べてくれない。 
赤ちゃんの便が毎日でないのですが。 
診察を怖がって激しく泣くのですが。
こどもの事故では、どのようなものが多いでしょうか?
授乳中の母ですが、薬を飲んでいます。母乳を飲ませてもいいでしょうか?
子供が自分の鼻の穴に、ごはん粒やごみ、石などを奥の方まで入れてしまうことがあります
母乳を1歳過ぎまで続けると虫歯になりますか? 
 

《育児に関して》

離乳食の開始時期は? 

一応の目安は6ヶ月ですがそれにこだわらず、赤ちゃんが食べる気になった時に開始しましょう。
お父さんお母さんが食べているのを見ていて、手を出したり、よだれをたらしたりした時がそのタイミングです。遅くてもほとんどの場合、問題はありません。お子さんに合わせて進めてください。

 

抱きぐせがつかないようにするにはどうしたらいいですか。 

育児でもっとも大切なことは、「ふれあい」です。
よく「抱きぐせがつかないように、あまり抱っこせず寝かせておいた方がいいよ」とか言われますが、完全に間違いです。
赤ちゃんは
身に着けるように抱っこしたり、おんぶしたりしましょう。赤ちゃんが抱っこして欲しいと思った時にすぐ抱っこして、赤ちゃんに信頼されることが大事です。赤ちゃんは「いつでも抱っこして欲しい時に抱っこしてくれる」という母への信頼感があると泣かない子になり、逆に、不安があると泣きます。抱っこが足りないと、抱きぐせがついてしまうことが多いのです。
スキンシップを大切にして下さい。

スキンシップが大切なのは何となくわかりますが、どうしてでしょうか? 

「抱っこ」のところでも赤ちゃんに信頼されるためとお話しましたが、赤ちゃんを理解するという点でも大切です。
いつも抱っこしていると、なぜ泣いたのかわかるようになります。目の動きも見やすいので、オモチャを気に入っていてとって欲しいなどということが自然にわかるようになります。そうすると、 赤ちゃんはお母さんに絶対的な信頼をしてくれるようになります。
発熱など病気の時にも、まず触れて顔をよく見て下さい。悪い病気かどうか直感的にわかるようになるはずです。医学的な知識はあまり必要ありません。どのくらい余裕があるか感じることの方が重要です。
こうして育てた子どもはいい子に育ち、犯罪者になるのも少ないといわれています。

 

断乳はいつしたらいいでしょうか? 

最近では断乳といわずに、卒乳というようになっています。赤ちゃんが母乳を必要としなくなった時に母乳を卒業するという意味です。
6歳まででも飲ませても良いと言われるようになってきました。本人に任せましょう。
ただ、お母さんが仕事などでどうしても止めないといけないこともあります。このような時は止めても結構です。一週間くらい泣かれることもありますね。

小児科は何歳まででしょうか? 

教科書的には、15歳までとなっています。しかし、県立病院で心臓病として診ていた方で20歳を過ぎても受診されるケースもあります。

 

歩行器はいつ頃から使っていいでしょうか? 

歩行器は危険です。使わないで下さい
理由 1」
事故が多い。乗ったままで転ぶと大けがをすることがあります。
2」歩行器で歩くのをおぼえると転んだ時に大けがをしやすい。歩けるようになる前、赤ちゃんは立ち上がろうとして転びます。段々うまくなって、歩けるようになります。この転ぶ時に、転び方・受身をおぼえます。ところが、歩行器ではこのステップがないので、
転び方をしらない子になり、ひどいケガをすることがあります。
3」むしろ
歩くのが遅れることもある。歩行器ではつま先でもあるけます。しかし、カカトをつかないと絶対に一人歩きはできません。つま先つま先で歩くのを覚えた子は、一人で歩くのが遅れることがあります。
以上の理由で、歩行器は使わないようにしましょう。
(手で押してあるく「カタカタ」は構いません)

 

赤ちゃんの鼻づまりはどうしたらいいでしょうか?      

赤ちゃんは、熱も咳もないのに鼻をつまらせたり、寝苦しそうにすることがよくあります。赤ちゃんの鼻の穴は小さく、鼻の粘膜が敏感なので、ちょっとした刺激で 鼻づまりになります。
鼻水を吸ったり、鼻くそを取ったりして良くなることもありますが、改善しないことが多いようです。鼻づまりは多くの場合、鼻水が固まってつまるのではなく、鼻の
粘膜がむくんでつまるのです。だから、鼻を吸っても取れないことが多いのです。特に寝るとつまる傾向があります。大人では、立ち仕事をしていると足がむくむことがありますね。つまり、体の低い部分 ほどむくみが来やすいので、寝ていると鼻がつまりやすいということになります。
改善する方法、1」
たて抱きにする。上に書いたようにしてむくみが出るので、頭を高くすると良くなることがあります。2」母乳か塩水を鼻に2−3滴スポイドで入れる。塩分は水分を引っ張ってくる作用がありますので、鼻に入れるとむくみの水を取って、むくみが改善することがあります。 母乳は刺激が少ないので全く痛くありません。殺菌作用もありますので2-3滴たらしてみてください。
鼻がつまると哺乳しにくいので、長く頑張らない方がいいかも知れません。疲れたら授乳をやめて、早くお腹が空いたら次に飲ませるようにしましょう。

 

離乳食を少ししか食べてくれないのですが。      

成長に関して心配するお母さんが多いですね。
離乳食を食べる時期は、普通のご飯を食べるように
練習する時期です。最初はかまずにゴックン。次に舌でつぶして、さらに歯のない歯ぐきでつぶして、と少しづつ普通食に近いものを食べれるようになっていれば十分です。離乳食で栄養を摂ろうと思わなくて結構です。栄養の大部分は母乳かそれに代わる人工乳で摂っています。元気にしていればいいでしょう。
 

赤ちゃんの便が毎日でないのですが。      

生後1か月を過ぎると便の回数が減ってきます。便秘とは、便が硬いために出ない、出たら痛い、肛門が切れるものを言います。 便が硬くなく、体重が順調に増えていて、機嫌も良ければ便秘と考えなくて結構です。
軟らかい便がオムツに少しついていれば便秘ではありません。全く出ない時は、綿棒を肛門に入れて肛門を開くようにすると、便が出ることがあります。その便が軟らいようなら便秘ではありません。数日でない時はそうやって調べてみてもいいですね。 硬くて痛そうなら薬を処方します。

診察を怖がって激しく泣くのですが。 

自我がめばえてくると、人見知りが始まります。自分や親しい人以外を区別できるようになり、警戒するようになるからです。仕方ないですね。(#^.^#)
しかし、自分にとって害を加えない人だと理解できるようになると、泣かないで診察がスムーズにできるようになります。でも、子どもによってその時期はまちまちです。
病院が怖くないということを理解してもらうことが必要です。「病院ごっこ」をして泣かなくなった子もいます。ただし、注射のマネをして「病院が痛いことをする場所」というイメージは作らないで下さい。楽しく遊んでください。間違っても、「病院でチックンしてもらうよ」としつけに使ったり絶対にしないで下さい。病院が罰を与える怖い場所になってしまいます。
お母さんが「大丈夫よ」とこどもに言った時に、こどもが信頼して落ち着くような親子関係を作ることも重要ですね。

こどもの事故では、どのようなものが多いでしょうか? 

勤務医時代に経験したもので、入院したので多かったのは、ピーナッツ誤嚥、溺水。外来ではタバコ誤嚥でした。
ピーナッツはツルツルしているので気管に入りやすく、入ったら気管内の水分を吸って膨らんだり、壊れやすく小さくなって奥の方に入って大変厄介です。取るのには全身麻酔で手術室で行います。 脂肪を多く含むので肺炎など強い炎症を起こしますし、時には気管に詰まって突然死亡することもあります。
小学校入学までは絶対に食べさせない、家にも置かないようにしましょう。
死亡率が高いのは溺水です。圧倒的に多い場所は家の風呂です。ちょっと目を離したすきに風呂でおぼれる例がほとんどです。小さいお子さんのある家庭では、風呂場の入口に鍵をかけられるようにし、
風呂に水を貯めるのもやめましょう
はい回るようになるとタバコを食べてしまうことがあります。その他にも電池、ゴキブリだんご、灯油、小さいオモチャ、などを食べてしまうことがあります。家の中をcheckして下さい。
 

授乳中の母ですが、薬を飲んでいます。母乳を飲ませてもいいでしょうか? 

咳・鼻の薬、抗生剤、解熱剤、下痢止め、痛み止めなどほとんどの薬は影響がありません。母乳を中止しないといけないのは、抗がん剤や向精神薬、特殊なホルモン剤くらいです。自分の判断で母乳を止めたりせず、わからない場合は外来でご相談ください。

子供が自分の鼻の穴に、ごはん粒やごみ、石などを奥の方まで入れてしまうことがあります 

喉に物がつまるのと違い、つまった物が取れなくなっても口から呼吸はできるので、いきなり窒息することはほとんどありません。落ち着いて小児科や耳鼻科を受診して下さい。ピンセットなどで取り出すことになります。
やめさせるのは難しいのですが、 いつかは必ずやみます。やめさせる方法は決まったやり方はありません。なぜそのようなことをするのでしょうか。 ただの遊び、親の反応が面白いから、親の気を引くため...など、なぜしているかを考えて見て下さい。結論はでないかもしれませんが、お子さんを見つめることで理解 がすすみ、よりしっかりとした母子関係を築くことができるかもしれません。

母乳を1歳過ぎまで続けると虫歯になりますか?      

母乳だから虫歯になるということはありません
アルカリイオン飲料を常に持って歩いて頻繁に飲むような習慣のある子は虫歯になりやすいのですが、これは唾液が口の中を清潔に保つ暇がないからです。母乳もあまりに頻繁に飲ませると同様のことになる可能性はありますが、1歳を過ぎて母乳を飲ませていても頻繁に飲ませることはないので、虫歯になりやすいということもありません。WHOも卒乳は6歳でも構わないと言っています。