久住「千羽鶴」の佐藤酒造を訪ねて

〜居酒屋利き酒会の定番、千羽鶴の蔵をご紹介します〜


 私は、このところ大分は久住の地酒、「千羽鶴」にこだわっています。

 それは単に県産酒だからというだけではなく、知る人ぞ知るというべきか・・、その造りの姿勢を評価しているからです。
 千羽鶴の純米吟醸、大吟醸。大吟古酒・・いずれも大分県を代表するレベルだけど、「からくち本醸造」、通称「から本」はC/Pが高く、のんべにはうれしい酒だ。

 久住町の役場近く、大正ロマンを感じるレトロな雰囲気の佐藤酒造の建物。
 大分市から車でおよそ1時間、九重山系の山懐にあたる山の中の町、久住町に佐藤酒造があります。

 佐藤酒造は、もちろん「田舎の酒蔵」だ。造りも、まあ増えて800石というから、規模としては決して大きい方ではない。

 ところが、ここは「精米所」を持っている。これは、けっこう驚いていいことなんです。このくらいの規模の蔵が、自家精米をする。「コスト」を考えると、かなり大変なことだ。「千羽鶴」という蔵を評価したのは、まず
こんなところから始まったんだ。
 昔ながらの蔵の中を、ちょっと覗いてみよう。

 まず蔵の2階、左側の「麹室」の扉があいている。
 もちろん見学用に開いているので、仕込みの時は中を覗くことも難しい。
 その右側は、ドアが閉まっているが「酒母室」がある。
 地味だけど、ここは酒蔵の心臓部にあたる。
 これは麹室の中。広さは10帖ほど。広いテーブルの上で麹を造る。

 麹の仕込みの時は、この狭い部屋は温度30度前後、湿度は90パーセント以上にもなる。
 これは微生物には絶好の環境だけど、人間はとても長時間いられない環境ということになる。

 もちろん、仕込みの時は関係者以外麹室の中には入れない。

 写真中央は吟醸酒の麹に使うもろぶた。麹造りこそが酒造りの基本的部分なので、神経を使うところだという。

 この台上いっぱいに麹を仕込むのだけど、その麹をかき混ぜるのが「切り返し」といい、見ていてわくわくする動きのある作業だ。
 もっともやる方は汗びっしょりだけど・・・・・・
 まあ、その写真のないのが残念。
 お椀の中に入っているのが、「種麹」。つまり「麹菌」そのものです。黄緑色をしています。

 これを蒸した酒米の上に振りかけるわけで、そうすると、白米の表面・内部に麹菌が繁殖し、白い菌糸を一杯にのばして、麹になるわけです。これを仕込みに使います。
 微生物を巧妙に利用する酒造りの神秘ですね。
 蔵の入口近く、ここは「釜場」。いかにも手造りの雰囲気があるね。

 ボイラーを炊いてお湯を沸かし、蒸気で「甑」の中の酒米を蒸します。

 冬の仕込みのシーズンは、ここ釜場から始まるわけですね。

 久住の寒い冬。ここはもうもうと湯気が立ちこめることでしょう。


 これはお酒を仕込み、貯めるタンク。ちょうど、麹室の下あたりですね。

 このタンクは琺瑯製で、すべて税務署の「検定済み」というわけです。

 とにかく、酒造りというのは、思った以上に法律に縛られている。

 酒造免許がありゃあいいというものでもないということで、けっこう大変みたい。

 こういうタンクもあります。

 外側が、二重構造になっているでしょ。温度管理のシビアな吟醸酒用だね。

 この隙間に水を流して冷やしたりします。
タンク自体もかなり小ぶりなものです。
 さあみなさん、これが「漕(ふね)」です。要するに伝統的な「絞り機」のこと。

 写真では暗くてちょっと見にくいけど、麻の「酒袋」に醪を入れ、下の枠に積み重ねて、上から圧力をかける。

 そうすると「絞りたて」の原酒が、「漕口(ふなくち)」から出てくるわけ。

 それがいわゆる「ふなくち」とか、「あらばしり」とかいう酒なんです。
 ここがその「槽口」そのもの。

 圧力をかけなくても、自然と流れ出してくる酒。それが「あらばしり」。

 とにかく、この酒は文字どうり新酒。 発酵中の炭酸ガスを含んで泡立ち、酒らしい麹香もあって、酒好きにはこたえられない味なんだ。

 この槽口で柄杓で飲む酒、それは酒蔵での試飲だけしか味わえない。やみつきになる人が多いです。
 実は、蔵には新しい圧搾機もある。普通酒なんかはこれを使っている。

 たしかに効率はいいんだろうけど、どうも「手造り」のイメージが・・・・
 しかし現実の経営はコストも大事だし、そのへんたしかに難しいところだね。

 今後とも「手造り」のよさを残して、いい酒造りをお願いしたいところです。以上、おしまいです。





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