尊敬の念持ち介護を

●大分合同新聞6月17日朝刊の「読者の声」欄に掲載されました●

 保育園の理事長という立場から、園内では園児のおねしょを失敗としないようにしている。子どもの脳は発育途中で、失禁は善悪の評価にさらされる問題ではない。むしろ、あいさつや礼を言えない方がよほど重要であると私は思っている。
 不完全な人間が成長していく楽しい時代でもある。ところが、介護認定審査委員をしていて気付いたことがある。介護認定の調査をする際に、調査員が失禁を失敗として記載していることである。
 審査の会議では、失敗という表現を避けるよう依頼している。加齢に伴い、排尿などの全身の機能は低下していく。生まれてからの成長と対比すれば、その逆に進んでいく年代だ。
 そんな高齢者が苦労して作り上げたのが現代の社会であることを、心に刻まなければならない。失禁しても高齢者への尊敬の気持ちは、子どもに未来を託すのと同じくらい大切にしなければならない。