能力奪う便利な道具

●大分合同新聞11月27日朝刊の「読者の声」欄に掲載されました●

テレビ番組で半径15メートルのエリア外に赤ちゃんが移動したら、お母さんのスマートフォンに知らせるセンサーが紹介された。コメンテーターは便利で安全な装置と称賛していた。スマホは在宅高齢者の安否確認にも利用でき、ありがたい道具だ。
 便利な道具といえば、電気炊飯器もそうだ。まきを燃やして釜でご飯を炊くのが格段に楽になった。しかし、現代人はまきなどに火をつけるのが下手だ。このように便利な道具は人間の能力を奪う。
 能力の低下は危険な事態を招くことも理解しておかなければならない。半径15メートルにいることと、赤ちゃんが安全であることは全く別だ。スマホの機能に頼れば、赤ちゃんを見る時間を減らして料理などに熱中することになるのだろう。
 事故は一瞬で起きる。15メートル以内にいても呼吸が止まっていたらどうするのだろう。何よりも赤ちゃんから目を離すと互いの愛情は薄くなってしまわないだろうか。