使者の行方【幸村】


 特になんの問題もなく奥州にたどり着いた幸村は、政宗たちとしばし歓談の後、ゆっくりと佐助から口頭での報告を受けた。
「なるほど、そのようなことになっておったのだな。本当ならば面妖な話でござるが」
「俺様にもさーっぱり分からないんだけど、取りあえず今のところ害は無いよ。旦那が来るまでに目が覚めるかなとか考えてたけど、いまだに眠ったままだし」
 考え込むように言葉を切った幸村に、佐助はかぶせるように笑って見せる。大丈夫大丈夫と軽口を叩き、そうだろうかとどこか不安そうに眉根を寄せる幸村に大丈夫と念を押す。
 実際、こんなに長く眠っているが幸村たちに害を及ぼすようなことが出来るはずもない。
 狸寝入りなどと言うような可愛らしいものなどではなく、渾身の力でもって首を絞められても反応を示さなかったのだ。人間として、命ある動物としてもおかしい不可思議な話だが、の言い分を前提とするなら。
 佐助は幸村に釣られるように眉根を寄せて、疲れたように軽く息を吐き出す。
「異世界の人間なら、まぁ、なにがあっても不思議じゃない気がするけどね」
「む。……だが、しかし」
「ま、旦那が納得できないのも分かるよ」
 幸村は起きているときのを、ひと目たりとも見ていない。納得できないのも道理。
 けれどあのを見ても害意ある者と判断できる人間など、居ないのではないかというのが大概の感想だった。一度も目を覚まさず、水も食料も口にせず、排泄行為すら行わずに眠り続ける女。
 黒脛巾の一人が着物をめくって調べたらしいが、寝ている間に排泄行為が行われた形跡は無いらしい。
 佐助は目の前でうんうん唸って考え込んでいる主を見ながら、こんなことを報告すれば破廉恥と言われるか、武将の顔で頷かれるかのどちらだろうと笑いを堪えて考えた。
 きっと、多分武将の顔で報告を受けるのだろう。そして実際にを見てしまえば、受けた報告内容を思い出しての姿で想像してしまい、きっと破廉恥と叫びだす。
 今は想像の中だけの世界の話だが、きっと佐助の予想と寸分違わずの行動をしてくれるだろうと、佐助は久々に会った主の雰囲気に癒されつつ和んだ。別に奥州にいることも任務だし問題ないのだが、甲斐の空気が懐かしく感じていたのは確かで、それが多少なりとも恋しかったのは佐助だけの秘密だ。
「旦那、その子に会ってみる?」
「む? けれど佐助、某は眠っているとたった今聞いたのだが」
「だから、眠ってるその子に会ってみる? って聞いてんの。黒脛巾以外、起きてるあの子に会ったことないから、これから会うって言葉使ってもおかしくないでしょ」
 さっさと立ち上がりながら佐助がそう言うと、幸村もなるほどと言いながら立ち上がる。
 基本的に、佐助などの事情を知っている人間達は、一々伺いを立てなくともの顔を見ることを許されている。政宗も、幸村が来た以上顔を見に行くだろうことは予想しているだろうと踏んで、佐助は幸村を案内することにした。
「一応、竜の旦那に一言言っとく?」
「うむ、頼む」
 幸村が頷くと同時に、佐助は外に居た部下に伝言を頼む。音もなく駆け出した部下を見送ることなく、佐助は何度も通った道順を幸村と話しながら案内した。

 奥まったその室は、入り口に見張りも立ってない一見すると空き室のように見える、静かな空間に存在している。
 歩くにつれて人が居なくなっていく気配に、その厳重さに幸村は少々驚きながらも障子の前に立っていた。
 物々しい警備など狙ってくれと言うようなもの。けれど、こうまでも自然と人を寄せ付けない空間を作り上げ、その実、段々と気配を殺すのが上手い人間達の数が増えていくそのやり方は、中々に巧妙で感心させられる。
「……旦那?」
 障子を開こうとしていた佐助が思わず声をかけるほど、幸村は静かにその閉まっている障子を見つめていた。
 そして湧いてきた疑問を小さく口にする。
「襖ではないのだな」
 その一言に佐助は少し首をかしげ、ああ、そうねと笑いをにじませた返答をしながら表情を緩ませた。
 障子に掛かった手は動かさず、佐助は眠っているが見えているかのように笑う。
「障子だと、内側の影がわかりやすいでしょ? 本人が寝ている分、侵入者対策って訳」
 ま、たまに寝相悪くて障子破られちゃうんだけどねぇ。
 のんびりとした口調ながら、佐助の目はほんのりと遠くを見つめる。そんな佐助に、幸村はそこまで威勢の良い女性なのかと感心してしまう。
 長い間横になると言うことは、大幅な肉体機能の低下を意味する。
 幼い頃から身を鍛えていた幸村としても、脚や腕を痛めたり折ったことによる絶対安静は覚えのあるものだが、回復し体を動かしたときの肉体の衰えは想像を絶する恐怖だ。今まで積み重ねていた年数が、たった数日数ヶ月で瓦解するあの恐ろしさは、味わったで者でなくば想像しにくいであろう。
 なのに、すでに七日以上眠り込んでいる女性は寝ている間も体を動かし、常に鍛錬を欠かさぬ様子。眠っているとはいえ、天晴れな心意気。
「某も見習わなくては」
「なにを」
 思わず呟けば、佐助が呆れたように言葉を返す。
 それには特に返答をせず、幸村はうむうむと一人頷きながら考えをまとめる。
 そのように鍛錬を怠らない人間が、わざわざ狸寝入りを続けるわけが無い。やはり佐助が言うように、某の心配はただの杞憂だったのだとすとんと納得がいった。
 一人思考の中に浸っている幸村の返答の無さに、またなにやら考え込んでと佐助は苦笑するが、それも慣れたもので障子に掛けている手へと力を込めなおした。
「はいはい、なに考えてるか知らないけど開けるよ。ごたーいめーん」
 音もなく障子を開ければ、目の前に敷かれた布団。そして確実に人一人分のふくらみが目に飛び込んでくる。
 佐助や幸村の位置からは、掛け布団からちょこんと出ている頭しか見えない。言われたほど動きが無いものだなと幸村が観察していると、佐助がどこか感心したように声を上げた。
「あれ、今日はまだ暴れてないんだ。良いこと良いこと」
「……某の目には、暴れる様子の方が想像できぬが」
「旦那は見てないからそう言えるわけ。一回見たら絶対忘れられないよ、俺様保障する」
 佐助は幸村をあしらうと、何のためらいもなく室内へと足を踏み入れる。
 幸村もその後ろをついて室内へと足を踏み入れるが、佐助に促されるまま布団の脇に腰を下ろして、そこでようやく現在の状況を明瞭に把握した。
 座るよう言われた場所は、うつ伏せで眠っているの顔が向いている側。瞼は閉じられているが、顔を確認する分にはなんの問題もないその寝相。
 瞼は閉じられ、うっすらと開かれた唇からは寝息が聞こえてきそうで、胡坐をかいた足を動かせばうっかりその顔を蹴ってしまいそうなほどの至近距離だった。
 ぎしりと、幸村の体が歯車の噛み合わせを間違えたからくりのように、ぎこちなく動く。顔を確認して、寝顔からも窺えるであろうその性格をしっかりと読み取ろうとするのだが、そのような冷静な部分はさておき、日頃から純情だとか直情型だとか言われる幸村の感情的な部分が、頭の中を混乱させようとする。
 今は武将として、同盟国に居る不審人物の様子を読み取らねばならないと言うのに、このような至近距離で女子の寝顔を覗き込むような、普段で言えば破廉恥に近い行為をしたことがなかった幸村は、覗き込もうと頭の冷静な部分が体をかがめていくたびに、ぎしりぎしりとぎこちなく体を鳴らしてしまう。
 けれどこれは破廉恥行為にあらず、武将としての責務のひとつだと認識と気構えを新たにしようと、幸村なりに善処するのだがどうにもぎこちなさは取れない。
 佐助が背後で口を押さえるほど笑いを堪えているのにも気づかないまま、幸村は冷静な部分を必死でかき集めての寝顔を確認する。
 幸村の知識からすれば、何の変哲も無い女子。
 その寝顔からは幸せそうで穏やかな雰囲気が漂っていて、まるで赤子のように無防備。
 これでいきなり瞼を開かれたら、さすがの幸村も驚いてしまうだろう熟睡具合だ。
「……」
 ぎこちない動きさえ止めて、幸村はの寝顔に見入る。
 多少赤くなりつつあった顔色も平素のものに近くなり、けれども不躾に観察しているような目ではなく、見知らぬものをよくよく知ろうとでも言うような、ある意味好奇心に満ちた目になっていた。
 それはどこか子供のように無垢な目で、佐助は自分の口を押さえていた手をはずすと、さてどうしたものかとそのまま自分の頭を掻いた。
 幸村の現在の状態は、佐助の予想していた反応のひとつではあるのだが、そう顔を寄せて見入るとは思ってはいなかった。相手は不審人物ではあるが、所詮女子。猪突猛進とも言われるほどまっすぐな幸村にしても、すぐに正気付き離れてなにやら言い出すと思っていたのだが。
「だーんな。そんなに見入って、ちゃんに惚れちゃった?」
 軽口を叩いて笑って見せるが、幸村は一向に動かない。ぱちぱちと音がしそうなほど瞬きはしているのだが、その視線は拳二つ分ほどの至近距離で寝ているに釘付けだった。
「……はぁ」
 幸村の目に、色恋沙汰の雰囲気はない。
 未知のものに興味を抱いた幼子のようなその目は、これほどの至近距離に居ても目が覚めないを不思議がっているようだ。気配に疎く、警戒すらしていないその熟睡振りが本当に不思議でしょうがないのだろう。
 首を軽くかしげた幸村に、佐助はしょうがないなと主の幼い動きに諦めと保護者のような庇護欲を掻きたてられながら、もう一度声をかける。
「旦那、そんなに見つめちゃちゃんに穴開いちゃうよ」
 トンと軽い動きで主の肩を叩き、意識を外へと向けさせる。
 幸村は特になんの過剰反応も無く佐助を振り向くと、ゆるゆると上体を起こしてその背筋を伸ばした。
 視線はすでにへと戻っているが、その眼差しは年相応の落ち着きを取り戻し、佐助に安堵の息を吐かせる。
「……佐助」
「はい?」
 幾分低い声に首を傾げれば、幸村は振り向きもせずに言葉を続ける。
「どれほど見ても、なんの変哲もない普通の女子にしか見えぬのだが、某は判断を誤っておるか?」
 深刻そうに淡々と紡ぐその言葉に、佐助は堪えることも無く吹き出した。あんた、なに真剣に考えてるかと思えば。
 思わず口に出して突っ込みたかったが、佐助の主はきわめて真面目な顔のまま佐助の返答を待っている。暴れる姿が想像できない静かな寝姿に、自分の目が曇ってしまったのかと不安なのだろう。佐助は溢れ出た涙を指先で拭うと、ひとつ空咳をして笑みを浮かべた。
 まるで弟に教えてやる、優しい兄のような心境で。
「いーや、旦那は間違っちゃいないよ。それに、暴れるったってちゃんは平凡な娘の域を出ないし」
 内心、あそこまで寝相で華麗なる足技や拳が繰り出せるのなら、鍛えたほうが面白そうと思ったことは黙っておく。
 佐助の言葉に肩の力が抜けたのか、幸村はふっと小さく息を吐く。そして目の力を緩めると、どこか困惑した視線で瞬きをした。
「佐助、何か言っておる」
「ん? 今日は寝言だけ?」
 幸村の言葉を瞬時に理解した佐助は、幸村の横に並んで座り込むとの寝顔を覗き込んだ。確かに唇は動いているが、言葉になっていない。読唇術であっても読み取れないことから、本当に言葉になっていない寝言なのだなと佐助は笑った。
 幸村は佐助の笑みを横目で見ると、何か面白いことを言ったのだろうかとの寝言に耳を澄ます。聞こえるはずも無いそれに、幸村は一生懸命顔を近づけて耳を済ませた。
「……なく、な。…………、……、………………」
 ようやく聞き取れる音量まで上がった声に、佐助と幸村は顔を見合わせる。幸村が目で問うが、佐助も読み取れなかったと首を振る。
 その間にもはもごもごと寝言を続け、ついにはぼろりと涙までこぼしだした。
「……!! さ、佐助ッ!」
 予想外のことに幸村は面食らうが、佐助はどこか悲しそうに眉根を寄せるだけ。幸村が佐助とを交互に見つめていると、佐助は幸村に苦く笑いかけながらの涙を指先で拭った。
「たまにね、こうやって泣いたりもするから。別に害は無いよ」
 その佐助が言う害がなんのことか、幸村は理解出来ない。それがそのまま顔に出た幸村に、佐助は困ったようにの頬を撫でる。
 声もなく涙を流し、時折しゃくり上げる姿は痛々しい。先ほどまで穏やかに眠っていたのが嘘だったように、はとめどなく涙を流す。
 佐助は指先では追いつかないと判断し、懐から手ぬぐいを出すとちょいちょいと頬の涙を拭ってやる。そのまま目じりまで拭い上げ、もう片方の手での頭を丁寧に撫でた。
「……」
 呆然と見守っている幸村は、佐助のなれた仕種にも行動にも驚いたが、なによりその雰囲気に度肝を抜かれた。
 もちろんに対しての警戒を解いてないのは見て分かるし、その目はしっかりとを観察している。視線は唇がいつ紡ぐか判らない言葉を見逃さないように隙が無い。
 けれど、不審人物に向けるものではない気遣いが溢れている。ただその行動や仕種だけではない、が寝ていても泣いてしまうほどの痛苦の原因が、何にあるのかを静かに探っている。声を掛けるでもなく、ただ頭を撫でて涙を拭いてやっているだけだというのに、佐助がに対して目を掛けているのが幸村には手に取るように判った。
 縋るように伸びてきたの手に片眉を上げたと思えば、するりと避けて悲しそうな寝顔をいっそう歪ませたり、くすくすと性質の悪い忍び笑いなどをこぼしている部下の姿を、幸村は呆然と見つめていた。
「……旦那、大丈夫?」
 佐助を眠りながら追いかけたため、布団からはみ出て畳みの上でぐったりとしているを尻目に、佐助は楽しそうに笑っている。
 びっくりした? と楽しそうに小首をかしげて幸村を見つつ、再び寝入ったと思わしきに近づいた佐助は、それを待っていたとばかりに飛びついてきたに、反射的にと言って良い速度で天井へと飛び上がる。
「あ」
 幸村がそれを認識したとき、幸村の差し出した腕も追いつかぬ速度で、は盛大な音を立てて畳へと上半身を打ちつけた。
「……」
「……」
 即座に枕元にあった香炉は佐助に回収され、壊れることは無かったが幸村の視線は冷たい。
「……」
「……香炉ではなく、受け止めれば早かったのではないか?」
 動きを止めて瞬きすらも止めていた佐助は、主の冷たい声に乾いた笑いを漏らす。
「あははー、いやつい避けるのが癖になっちゃって。なんかほら、今の猫が獲物に飛びつくのにも似て」
 笑いながら天井より降り立ち、取りあえずの弁明をし始めた佐助に、幸村は転がって動かなくなったの肩に触れ、ごろりと仰向けにすると軽々と抱き上げる。そして佐助がああだこうだ言い募ろうとしながらも、幸村の静かな怒りの雰囲気に声は段々と尻すぼみになっていく。
 幸村は佐助の言葉に反応することもなく掛け布団をめくり、を慣れない手つきで布団に横たわらせる。めくれ上がった寝間着の裾を丁寧に肌に触れぬように整え、胸元はどうしようもないと視線をそらして掛け布団をそっと被せた。
「……」
「……だ、だんな?」
 慣れない作業に深く息を吐き出した幸村は、佐助を振り返るとその微妙に焦りが見える表情を注視する。
 佐助に悪気がないのは分かっている。わざと楽しんでいる節があるのは見え取れたが、慣れたやり取りなんだということも幸村は感じていた。けれど、ここまで派手にが叩きつけられるとは佐助も思っていなかったに違いない。……そう思いたいと、幸村は部下を信じることにした。
「女子は丁寧に扱えと以前言ったのは、佐助、お前だ」
「あー、うん、はい、俺様です」
 それで、あの、お咎めとかあったりしちゃったりするんでしょうか。
 いつものように笑みを浮かべた佐助は、どこか早口にまくし立てる。しないよね、ないよねと子供のように続きそうなその言葉に、幸村はとうとう苦笑する。
 人前ではそれほどでもないが、こうやって砕けて話してくる佐助は幸村にとって嬉しいもので、忍びとして感情的なのはどうかなと日頃否定的な面を知っている分、好ましい。
「某が言うことではないだろうが、あまり乱暴な扱いはどうかとおもうぞ」
「肝に銘じておきます。あー、避けると悲しがってて面白かったのになぁ」
 幸村から怒りが特に感じられなくなったせいか、佐助は早速軽口を叩きながら畳へと腰を下ろし、まるで自分の玩具を取られたような素振りで、幸村をどこか拗ねたような視線で見てくる。
 が、何を思いついたのか目を細めて口の端を上げ、どこか人をからかうときのような人の悪い笑みを浮かべると、小さく笑いながら幸村を見つめてきた。
「……佐助?」
 幸村が怪訝そうな声を出すが、佐助は小さな笑いを止めることなく寝かしつけられたへと視線を向け、そして幸村へと視線を戻すとまるで今気づいたと言うように口を開いた。
「旦那、いつの間にそんな破廉恥になっちゃったの? 俺様びっくり」
「……なにがだ?」
 佐助の言うことがとんと分からず、幸村は首を捻って同じようにを見つめて佐助を見つめるが、人の悪い笑みを浮かべたままの佐助にだんだんと幸村も理解してくる。
 まったくもって正直失礼な話だが、幸村はを布団に戻す行為の前後、もちろん最中もなのだがのことを女子として一切意識していなかった。
 確かに寝間着の裾だとか胸元だとかは多少意識したが、それも幼子であっても娘であるという配慮と言うか、幸村は口を音もなく動かしながらも言葉に出来ないまま、心の中で自分の分析と言い訳を連ねていく。
 幸村がを抱き上げ、布団に寝かし直したことをさしているのだろうと、それは自分にとってはただの親切だと、幸村は赤面を堪えるように拳を握り締めて平静を保とうとするが、それも長くはもたなかった。
 ちらちらと脳裏に見え隠れするのは、倒れた際にめくれ上がった着物から覗く腕や脚、軽く乱れてしまった胸元。
「着物の裾まで直してあげるなんて、手馴れてたね、旦那。どこで覚えたの?」
 楽しそうな佐助の言葉に、幸村の唇がお約束であるあの言葉の形へと歪んでいく。佐助が正気付くより早く、幸村が上げた咆哮は城中へと響き渡った。
「破廉恥であるぞ、佐助ぇえええええええええ!!!!」

 ちなみに、幸村と佐助は揃って奥州の主従にこっぴどく叱られ折檻まがいの仕置きを受けたが、城の誰もがすでに慣れている事柄で正式な処罰は無く、さらには黒脛巾の者がの体調を気遣い見守っていたところ、は大声に驚く素振りもなく眠り続けるという大物っぷりを発揮していた。
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