毎年、夏に行っていた福島の子どもたちの保養プログラムを今
年の夏は行いませんでした。私たちの願いは、放射能の影響のないところで短期間でも子どもたちを思いっきり活動させたい。と言うことですが、今年は大分に
大きな地震がありました。余震が続いているところに、地震で怖い経験をした子どもたちを呼ぶことができなかったからです。そこで、実行委員会のメンバーで
福島の現状を調査してこようと決めました。
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■富岡町で吉田住職の話を伺う
吉田さんは、真宗大谷派の住職です。富岡町は、もうしばらくしたら帰還困難区域の一部は解除される見通しです。9時から午後4時まで立ち入ることができます。でも放射線量の高い吉田さんのお寺は立ち入り禁止で、施錠されています。
特別に境内に入れてもらいました。本堂も新しい住居も誰も住んでいません。階段には、獣の糞がこびりついていました。雨どいの所の放射線量は高く、ガイ
ガーカウンターは、あっという間に9.99μシーベルトを示しました。(大分では0.02μシーベルト)「行政は、除染はやるけれど、帰還困難区域には何
もしてくれない」と言われます。午後4時になると帰宅を促す放送が流れました。
広野町に双葉町の子どもたちのための中・高一貫校「双葉学園」が昨年開校しました。昨年は、入学する子どもが大勢いたのですが、今年は定員割れを起こしています。
楢葉町は、帰還が許されましたが7500人の住民のうち700人しか帰っていません。インフラ整備が整わないことや泥棒が多いことも理由のようです。どの地域も除染作業をする作業員と除染した土を入れた黒い袋がおびただしい数で置かれています。
保養プログラムに毎年子どもたちが順番にやってくる児童クラブに伺い、ちょっぴり大きくなった子どもたちと再会しました。顔を見るなり「あっ!九州の!」とびっくりした声と顔。
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■福島市の仮設住宅
浪江町の人が暮らしています。仮設には、1部屋、2部屋、3部屋のパターンがあります。以前は185世帯でしたが、自立したり、復興住宅に移ったりして、今は100世帯をきっています。会長さんにお話を伺いました。
・ 以前は、皆協力的だったけれど、今は自己中心的な人が増えた。
・ 一人暮らしの高齢者が増え、家族と暮らせずつらい思いの人が多い。孤独死もある。
・ 原発を毎日見て生活していたが、「あれが爆発したらどうしよう。」などと考えたことは一度もなかった。
・ 以前住んでいた浜通りは、雪が降らない。福島市に来て雪かきや寒さに苦労している。夏の暑さもひどい。
・ 仮設の子どもは10名ほど。地域の学校に入れなかったので、ばらばらの学校に通い子ども同士のつながりはない。
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■郡山市・あいコープ福島で
体内の放射線量を測定するホールボディーカウンターを2013年5月から使っています。行政からの支援はなく、生協独自で購入。1億7千万円。食品を測定する機器も2千万円で購入しています。
福島の水を飲まない、福島産のものを食べさせない親が大勢いる中で、未知への不安、無知への不安、避難したくてもできない人をどう守るかを考え、科学的
に測定して対処することの重要性を考慮して事業を展開しています。専務さんはこう言われました。「私たちは、放射能の知識はなかったが、食品に対する知識
は役立った。」と。
生協に食品を納入している生産者への対策(土を削って有機を入れる)を重視しています。
ホールボディーカウンター体験
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■旅を終えて
今回は、浜通りの大熊町、双葉町を通りました。完全に立ち入り禁止で車を止めることもできません。建物は朽ち、田畑が草ぼうぼうの様子に言葉を失いました。そこでは、放射線量がどんどん高くなり頭が痛くなりました。
福島から避難するかしないか。福島に戻るか戻らないか。福島の物を食べるか食べないか。福島出身だと言うか言わないか。5年経ってさらに問題が複雑化し
ていることに気づきます。「僅かな期間でも体にたまったセシウムを抜くことが大切。」「私たちを気にかけている人がいることはありがたい。」と言われ、保
養プログラムの意義を再確認しました
時間の経過の中で、福島で生活している人々の気持ちや心の変化を十分に考えずに思いを発信してきたのではと振り返ります。
福島の子どもたちの甲状腺がんの問題を私も重く受け止め、重大なこととして口にしてきましたが、そのことがインターネットで拡散されていくことに怒りを覚えている現地の人がいることに気づきませんでした。
私は、「震災がれき」受け入れ問題の時に反対と綴り、「非国民」だとお叱りを受けました。
今回の旅をFBに綴った文を読んだ福島の方から「迷惑なんです。」とメールが届きました。
高速増殖炉「もんじゅ」は20年以上ほとんど動かないまま廃炉の方向性が出されました。「核と人類は共存できない」と考え続けていますが、福島に寄り添
うとはどういうことなのか。福島を忘れないとはどうすることなのか。放射能問題でいかに何の罪もない人たちの心が苛まれていくのかを思い知らされていま
す。
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