県議会報告
第1回定例会 代表質問 2005.3.10


 30番、社会県民クラブの平岩純子です。
 第1回定例会において、代表質問の機会を与えていただきました先輩諸氏に感謝を申し上げます。
 私は、社会県民クラブを代表し、県政に於ける基本的な課題について質問させていただきますので、知事をはじめ執行部の皆さん宜しくお願いいたします。
 また、何かとお忙しい中、早朝より傍聴に来てくださいました皆様に心よりお礼を申し上げます。


 21世紀は、人権・環境の世紀。平和の世紀。そう期待して止まなかった多くの人々は今、出口の見えない閉塞感に陥っています。少なくとも戦後の日本で建前としては誰も否定できなかったはずの平和主義や平等というものが、建前としてすらもかなぐり捨て去られようとしているからです。
 私は、戦後生まれです。生まれた時には平和憲法があり、教育基本法もあり、それは当たり前のこととして育ってきました。
 戦後の民主主義、平和主義に助けられ、支えられ今までやって来たという歴史があります。これは私だけに限らず、ここにいらっしゃる皆様も同じではないでしょうか。ところが、その一番基本的なところ、憲法・教育基本法に対して直接に手がつけられようとしています。「このままではいけない。」「何とかしなければならない。」と焦燥感を抱いています。
 戦争が終わって60年。ヒロシマ・ナガサキ原爆投下・沖縄地上戦から60年の節目を迎えます。積み残してきた問題の解決、そして平和を具体的に実現し、一人ひとりの価値を大切にして行くという人間の尊厳を重視した憲法の意義を、今こそ実現して行くことが求められているのではないでしょうか。
 社会県民クラブは、生存権、教育、雇用や社会保障そして平和という「いのちの問題」を何よりも大切にする姿勢で県政に参加させていただいています。
 それでは、具体的な質問に入らせていただきます。





1.財政・行財政改革について

 まず、2005年度当初予算案についてお聞きします。

 2005年度当初予算は、極めて厳しい財政状況の中で、あらゆる経費についてゼロからの見直しを行うとともに、政策経費には対前年比85%以内の要求基準を設定するなど、行財政改革プラン実行2年目の予算として抑制基調の中で編成作業が開始されました。
 こうした中、年末に決定された2005年度の地方財政対策では、地方税・地方交付税に臨時財政対策債を加えた一般財源は0.1%の増加となり、自治体運営に必要な総額が確保されました。
 しかし、大分県での具体的な収入見込みでは、県税は法人関係税を中心に伸びが期待されるものの、その影響もあって地方交付税は減少し、加えて、臨時財政対策債も約65億円の減少となり、合わせると昨年度に比べ約53億円のマイナスとなっています。
 このような状況の中で編成され、今議会に提案されました2005年度の一般会計当初予算案は、5,916億8,500万円で、前年度より242億円あまり減少、率にして3.9%のマイナスとなり、公債管理特別会計の設置による影響を除いたとしても、5年連続のマイナス予算となっています。
 広瀬知事は、就任直後から、直接県内各地に出かけられ、「県政ふれあいトーク」を積み重ねられ、昨年10月には県内を一巡し、現在二巡目に入っています。これまでも、数多くの現場の意見を県庁の施策や事業に反映、実施してこられたのではないかと思いますが、県民生活の現場においては、「障害」がある人や子ども、女性、お年寄りなどの弱者に対する福祉や教育、食の安全・安心など暮らしに関わる事業の充実などが求められています。今回の予算は、そうした県民に視点を置いた予算となっているのでしょうか。
 そこで質問いたしますが、まず一つ目に、知事は、どのような基本的な考え方で予算編成に当たられたのかお尋ねいたします。
 二つ目は、今回の三位一体の改革に関してです。国庫補助負担金の改革と税源移譲については最後まで論議され、目標とした3兆円の税源移譲に対して、その8割方の2兆4千億円の移譲が決定されました。その結果については、生活保護費や義務教育費、施設整備費などの問題が先送りされるなど、賛成・反対の意見はありますが、とりあえず2005年度の国庫補助負担金の廃止などに伴う財源についてはそのほとんどが措置されることとなりました。そこで今回の国庫補助負担金や地方交付税の改革は、県の財政にどのような影響を与えたのでしょうか。お伺いします。
 三つ目は、現在進められている市町村合併に関してお聞きします。1月には、新大分市と新臼杵市が、さらに3月には、新中津市と新佐伯市が生まれました。合併に伴う予算はどのように組まれているのでしょうか。また、合併に伴って県の予算は、どのような影響を受けたのでしょうか。お伺いいたします。

 次に、行財政改革についてお聞きします。
 広瀬知事は、就任直後、それまでの健全財政から一変して、財政再建団体に転落するという衝撃的な大分県財政の将来見通しを明らかにし、昨年3月には行財政改革プランを策定・公表しました。
 プランでは、香りの森博物館や湯布院青年の家などの廃止、国体関係施設の簡素・合理化・公社等外郭団体の整理・統合、職員定数の削減や給与の見直し等による総人件費の抑制、職員の意識改革など多岐にわたり、県政全般にわたって大きく足を踏み込みました。
 こうした中、昨年7月には、職員給与の2%削減を実施したほか、9月には公社等外郭団体のさらなる見直しを行い、12月の第4回定例会では、湯布院青年の家の廃止条例が可決され、本定例会においても荷揚町体育館や春日浦野球場の廃止条例が上程されるなど、その歩みには一歩の揺るぎもありません。
 私も、行財政改革が持続可能な財政構造の確立のために避けて通れない課題であることは十分理解していますが、その陰には、改革によって痛みを感じる県民や、給与が削減される中で自らに鞭を入れながら職務に励む職員がいることを忘れてはならないと思います。
 改革は、その先にある夢や希望をつかむための暗く心細い近道のようなもので、いくら心細くとも、その道のりが短ければ勇気を奮って進むことができます。長引かせることなく、また、二度とこの道を通らなくてすむように心から願っています。
 そこで知事にお聞きしますが、こうしたことを踏まえて、予想以上の成果をあげている行財政改革実行初年度の状況をどのように評価されているのでしょうか。また、来年度の重点課題をどのようにお考えなのかお聞かせください。


2.市町村合併について

 次に市町村合併についてお聞きします。
 合併特例法期限切れの2005年3月がもう間近に迫っていますが、県内における市町村合併は、昨年一年間で急速な展開が見られました。去る1月1日には、新大分市と新臼杵市が、さらに3月には新中津市と新佐伯市が誕生し、今後も7つの新しい市が誕生する見込みになっています。しかし県下の合併状況を見ているとすべてがスムーズに行われている状況ではないと思われます。
 例えば、湯布院町では、町長が選挙公約を無視し住民と十分話し合うとの約束が守られなかった、合併問題に関する町民への情報提供や合併協議会終了後住民への説明会を開催せず、わずか10日後に臨時議会を召集して合併議案を可決したことに対し、民意が反映されていないとして、町長の解職請求が行われ、町長が辞職する事態となりました。今後、新町長が誕生し、合併当初から、由布市の中で混乱が生じるのではと危惧しています。
 また、支援措置が手厚い特例法の適用を受けて合併することが、地域にとってベストの選択という県の基本的な考えに反して、九重町では二度の町長選挙であえて合併をせずに単独でやっていくことを決めました。それにより玖珠町は事実上合併が実現できない形になり単独を見越した行財政改革を余儀なくされています。同じように臼杵市との合併が実現できなかった津久見市も財政状況は厳しく緊急行革本部が設置されています。
 さらに合併推進、反対を前面に打ち出して行われた日出町長選挙では、反対派の町長が当選し、法定合併協議会から離脱し単独の方向を決定しています。そして40年前から雇用の少ない村で若者の定住を進めるためにワークシェアリングを続けてきた姫島村では、雇用を守るための苦渋の選択として合併協からの離脱を表明しました。
 このように自ら合併をせず単独でやっていこうと決めた町。合併を望みながらもそれがかなえられなかった町と県下の状況は様々です。そこで県としてこのような状況をどう捉え、今後、どのような支援をしていくのかをお聞かせください。また、合併は、一段階で終わるとは限りません。合併特例法の期限が切れた後にも起こりうることだと思いますが今後の市町村合併も温かく見守っていけるのかを質問いたします。


3.教育について

 次に、教育問題について質問いたします。

 私は、議員になる前は小学校の教員をしていました。毎日、子どもたちにとって「わかる授業」をしよう、「楽しい学校」をつくりたい、と管理職や同僚そして保護者の方々と努力をしてきました。「わかる授業」とは、何よりも子どもたちが覚える・気づく・わかる・できることの喜びに眼を輝かせる授業です。広く深い専門性と日常の教材研究に裏打ちされた授業であり、それはフレッシュでドラマチックなものでした。毎時間そんなことができたわけではありませんが、子どもたちと「わかる授業」を作り出せた時の感動は教師冥利につきる瞬間でした。かつて一緒に勉強した子どもたちは、中学・高校生になっています。これから中学に進む子どもたちもいます。私は、子どもたちに焦燥感や無気力感が広がっていくことを一番恐れています。何故なら「ゆとり教育」から一転、「学力向上」の大合唱のもと、かつて反省したはずの「詰め込み教育」が声高に叫ばれているからです。今、子どもたちに必要なのは、競争の道具としての教育ではありません。ごく一部の優越感と大多数の劣等感を増幅するだけの教育ではありません。新しいことに出会う感動と発見、疑問を育みながら自らの力で解決していく豊かな想像力、そして新たな創造へと発展し、無限の力を子どもたちが身につけていくことが重要だと考えます。そしてその実現は、地道な教育の営みに待つことが多いのです。
 まず、小寺教育委員長にお聞きします。今、求められているのは、何よりも子どもたちのことを考え、教職員が安心して教育に専念できるための努力を惜しまない、そして地域と学校がいい関係であるよう常日頃から気を使い、必要な施設・設備・予算の確保に力を発揮し、現場の声にしっかりと耳を傾ける頼りになる教育行政だと思います。教育行政のあり方について教育委員長のお考えをお聞かせください。

 二点目に憲法・教育基本法の理念である平和を願う子どもたちの育成についてお聞きします。
 県下の学校では、1972年の「平和を願う日」の特設授業以来、30年以上にわたって平和教育が行われています。児童会や生徒会が中心になって行ったり保護者が読み聞かせやオペレッタを企画したりと様々です。戦争体験を学ぶ時、被害者の視点だけではなく加害者としての視点も忘れてはなりません。子どもたちは、戦争体験者の語り部から原爆・空襲・戦場・引き上げ・戦時中の生活などを教えてもらったり、ベトナム戦争を経験した米海兵隊の方からお話を伺ったり、核兵器の恐怖を学んだりしています。また、直接的な戦争ではなく人権の視点からハンセン病問題やアジアとの連帯なども日常的に学習しています。子どもたちには、戦争の持つ非人間性や残虐性を知り、戦争への怒りと憎しみの感情を育て、平和の尊さと生命の尊厳を理解して欲しいし、戦争の原因を追究し、平和を築く力をつけていって欲しいと願っています。そこでグローバル化の中で、戦争による死の恐怖がなく、抑圧・貧困・差別のない人間らしい生き方のできる世の中にするために、国民や民族をこえて、手をつなぐことのできる子どもたちを育てていこうとするこの「平和教育」を教育委員会としてどう評価し、さらに充実させるためにどう指導していけるのか見解をお聞かせください。

 次に「障害」のある子どもたちが共に学びあうことのできる環境整備の課題として「特別支援教育」と「完全30人以下学級の2年生までの拡大」についてお聞きします。2月7日に大分市のある小学校を訪れました。自閉的傾向をもつ1年生が2つのクラスに在籍しています。入学したての頃は、環境になじめず数々の問題が発生していました。保護者も1日中教室についていました。しかし一年が経ち、集団の中でしっかりと自分の位置を見つけている子どもの姿を見て、管理職を始め多くの教職員の努力に頭が下がりました。幸いなことに緊急雇用の方もサポーターとして見守ってくださり、子どもたちとの関わりも比較的スムーズにできていました。しかし緊急雇用は4年間で打ち切りとなり、2年生に進級した時の不安があります。さらに30人以下学級は、1年生だけとの方針です。今は、1クラス24人で学習していますが、2年生になると40人近い児童数になってしまいます。教室が変わり、環境が変わり、友達が変わり、担任が変わり、緊急雇用の先生もいなくなった時の子どもの動揺は目に見えるようです。これは、1つの例ですが県下でこのような状況はいくらもあると考えます。どこの県でも財政的には厳しい状況の中で少人数学級の2年生までの拡大に努力しています。大分県としての英断を期待して止みません。
 さらに文部科学省調査研究協力者会議が一昨年に出した「今後の特別支援教育のありかたについて」の最終報告では、「障害の程度に応じ特別な場で行う特殊教育から障害のある児童生徒一人ひとりの教育的ニーズに応じて適切な教育的支援を行う特別支援教育への転換を図る」といった方向転換が明示され、世界的流れの中でノーマライゼーションへと一歩を踏み出すかにみえました。今、学校現場では、いわゆるLD・ADHD・高機能自閉症などを持つ子どもたちへの対応に苦慮している現状があります。しかしそれは、分離して教育しようとするのではなく、どうしたら集団の中で共に学習の場を保障できるかということへの苦悩です。そこで県としてこのような「障害」を持つ子どもたちをどう支援し、学校現場の人的環境的支援を行おうとしているのか考えをお聞かせください。
 子どもの学習権保障に向け複式学級の解消についてお聞きします。複式学級は、教育課程の編成や日課表の作成の段階から困難を伴います。また、日常の教育活動においても発達段階の異なる子どもたちが学習する中で学力保障、個に応じた指導が十分に行えない弊害は明らかです。大分県では他県よりも編成基準を低くして配慮していただいていますが、県内では、11人以上の複式学級が54学級。また、1つの学校に2つの複式学級がある学校は、82校あります。そこでお伺いしますが学校運営だけではなく、教育の質の向上、機会均等を考えると少なくとも11人以上の複式解消、2複は解消していかなければならないと考えますがいかがお考えでしょうか。

 最後に高等学校再編計画についてお聞きします。昨年の第4回定例会で内田議員と私でこの問題について指摘をしましたので縷々述べませんが、県教委は、20万筆に及ぶ反対署名、見直しを求めるパブリックコメント、29もの市町村議会が提出した意見書を尊重しない形で1月14日に「素案」を発表しました。このことは、あまりにも不誠実であると感じざるをえません。通学区域拡大は、全国でこれまで4都県が取り組み、今後、5県が実施するようですがまだ全国で9都県だけです。どうして大分県が今なのかどうしても理解できません。ましてやアンケートの結果は、全県一区を希望しているのは21%にすぎず8割の人は、反対しているにもかかわらずです。県教委は、生徒の流出や移動はさして起こらないと考えているようですが受験競争の激化については、十分な説明がありません。総合学科ができたものの、他地域からの入学者が増え、地元の子どもが締め出されるという現象が全国的に起きています。学区の撤廃で地元の高校を希望しても入れないといった「学校選択の不自由」は大分県では起こらないとお考えでしょうか。全県一区がなぜ今なのか。どこまで客観性があるのか。どこに必然性があるのか。今後どんな問題が考えられるのか。その問題をどう解消するのか。お示しください。また、素案の発表後、各地で説明会が行われています。3月末の最終決定に各地で出された意見がどう反映されるのかお示しください。
 進学校では、人間性を切り捨て、受験学力増強、大学進学という目標達成だけのためには、同レベルの生徒集団のほうが効率的な学習ができるかもしれません。しかし、豊かな人間形成の場としては、ふさわしくはなく、個性・創造の伸長・他者への思いやりなどの市民としての資質は育ちにくいと思われます。教育の場において将来の民主主義社会のリーダーを育てようとする教育委員会であって欲しいと強く願っています。


4.福祉行政について

 次に福祉行政について質問します。

 まず、昨年末、県の英断で一時保護所の改修が行われると決まった時は、飛び上がらんばかりに喜びました。また、新年度の組織改編では、福祉・保健が一体化され、専門知識が必要な児童虐待に対応するため、児童相談所のない日田・玖珠と佐伯の保健福祉センターには児童相談所の兼務職員を常駐で配置し、中央・三重・宇佐高田の各センターにも専門の職員が配置されるようになっています。さらに中央児童相談所・中津児童相談所に専門職を合わせて10人前後増員するようになりこれまでご苦労されてきた職員の方々の益々の頑張りが目に見えるようです。そして何よりも困難な状況に置かれている子どもたちがさらに救われることが期待でき、財政が厳しい中でも子どもを守り、育てようとする知事の姿勢に心より感謝申し上げます。
 さて、国では、介護保険制度の見直しが行われ、関連法案が通常国会に提出されています。改革の全体像として、5つの制度改革の柱が示され、サービス基盤のあり方の見直しもされるようです。2000年に介護保険が導入され、多くのお年寄りやその家族が支えられています。しかし、制度から救えないお年よりも大勢います。例えば、介護認定は受けていますが一部負担があるため少ない年金を頼りに生活する人の中には利用したくてもできない人が大勢います。配食サービスを1日1回支給してもらい2回に分けて食べているという独居老人もいます。さらにヘルパーさんやケア・マネージャーは増えましたが感染予防も含めた医学的教育や実例をあげた教育が十分なされていないといった声も耳にします。デイサービスやデイケアを要望しない人の中には「小学生にはなりたくない」と言われる方がいます。認知症はあっても自尊心は残っていますから集団の中で押し付けられたプログラムでは納得できないのかもしれません。老人ホームはたくさんできましたが老人産業にしてはならないと思っています。
 そこで次の点について伺います。予防重視型のシステムへの転換が打ち出されていますが、軽度の要介護者の場合、給付が制限されることになりませんか。予防給付事業としては、どのようなものが考えられますか。施設給付の見直しにより低所得者対策はどのようになりますか。医療と介護の連携の強化が打ち出されていますが、どのような連携が想定されますか。昨今問題となっている介護保険の不正給付に対する指導はどうなっていますか。介護保険財政が厳しい中で、今回の改正による影響はどのようなものになりますか。介護サービスは、市町村に任せられていますが人的教育は、県で行わなければ格差が生じるのではないでしょうか。県としてどう指導性を発揮していくのかを教えてください。

 次に高次脳機能障害について質問します。自転車に乗っていた教え子が交通事故にあったのは小学校二年生の時でした。救急病院へ運ばれ、その日のうちに脾臓摘出手術。意識不明の状態が1ヵ月続き、やっと目を覚ました時にはすべての機能が低下していました。二度の脳手術を受け、リハビリを重ね、退院できたのは事故から6ヶ月後でした。もう一度もらった命を大切にしようと両親や多くの人たちの支えでやってきましたが「甘やかしている」「わがままだ」と非難を浴びながらトラブルが後をたちませんでした。コミュニケーションができにくくなっているのは高次脳機能障害のせいだとわかったのは事故から6年も経ってからのことでした。
 高次脳機能障害は、転落や交通事故、暴行などで頭を強打されて起こるとされています。救急医療の進歩で一命は取り留めたものの記憶、注意、判断などの能力が低下し感情や行動のコントロールができにくくなり、以前のような社会生活に適応できずに大変な苦労を背負って生きています。多くは、家族が介護をしていますが介護方法がわからず、手探り状態です。重度の人は、24時間目が離せず介護者はくたびれはて、家族の人生も変えられてしまいます。現在のところ回復レベルに応じた専門の医療や福祉サービスの受け皿がなく、相談窓口もわかりません。雇用制度の行政的支援援助事業の対象外となっています。今後ますます交通事故などにより高次脳機能障害を持つ人は、増えていくことが推測されます。国ではモデル事業として地方自治体と国立身体障害者リハビリセンターとの連携で事業をすすめていますが十分に認識が広まっている状況には至っていません。群馬県では支援を始めたということですが大分県においても支援策をどう講じていくのかお聞きします。

 次にDVに関する質問をいたします。暴力夫から逃げた後、何年経っても、なお居所が知れるのではないかと恐怖と不安の毎日を過ごし、暴力夫が使っていたヘアトニックと同じにおいがしただけで息苦しくなるといった女性がたくさんいます。夫の執拗な追跡から身を守るために、離婚後しばらくしても住民票を動かすことができず、銀行口座を作れず、健康保険の加入や保育所入所に苦労している女性もたくさんいます。2001年にDV防止法が制定され、従来、プライバシー領域の個人的な問題とされてきたドメスチック・バイオレンス被害が表面化するようになり「DVは犯罪である」というメッセージが届き始め、県でも相談件数は増えています。しかしやっとの思いで打ち明けた公的な相談先で「お子さんが可哀想」「あなたにも悪いところがあるんじゃないの」と非難されたりお説教されたりしたらどうなるでしょうか。直接の暴力ではないかもしれませんがこのような言葉の暴力の二次的加害は、被害を受けた人の心の傷をさらに深くします。
 救済のためには、保護命令の手続き、公営住宅の斡旋、生活保護の手続き、離婚、学校の問題などいろいろな部局にまたがった支援が必要で、100人いれば100人のケースが存在します。佐賀県では、専任のセンター所長を置き、DV総合対策センターが昨年より機能しています。大分県でも早急に取り組んでいただきたいと願っています。そこで生活環境部、男女共同参画室、子育て支援課、社会福祉センター、警察、教育委員会、精神科医、裁判所、弁護士、NPO団体の形だけではない基本的な事がきちんと機能するネットワークづくりが何よりも必要と考えますが県としての方策をお聞かせください。


5.環境について

 次に環境問題について質問します。
 先進国の温室効果ガス排出量について、法的拘束力のある数値目標が設定された京都議定書が、採択から7年経ってようやく本年2月16日から発効しました。地球規模で環境問題に取り組んでいけるようになり、日本も6%の削減目標を掲げ、国内制度を整備するよう動き出しています。
 しかし、目標達成までのハードルは高く、自治体や企業、国民にどれだけの自覚が芽生えているでしょうか。公害や環境問題に取り組む時、一番重要なことは、人権を基本にし、人の生命と健康を中心にして行うということです。利潤追求を優先させ、消費者の購買意欲をかきたてるための過大宣伝をし、安全性は二の次といったこれまでの企業体質、権力体質に気づき、社会のありようまで見つめた行政指導が行われなければなりません。そこで二つの事例を挙げながら、質問いたします。

 県が1993年に設置許可した旧野津原町舟平の最終処分場問題です。昨年3人の議員が質問されましたので詳しくは申し上げませんが、住民の方は、創業以来10年間、停止を求める裁判を県と業者を相手に続けてきました。裁判では、住民の訴えは却下され、和解が成立しています。しかし一昨年から地域住民の生活を侵害する状況が生じています。朝、8時20分を過ぎると産業廃棄物を満載にした大型ダンプカーが処分場と隣接している緑が丘団地内を通ります。一日平均30台が往復しています。30トンのトレーラーが2,3台と列をなして運行しているため、道路の破損も激しく、騒音、振動、電波障害、排気ガスなど様々な面で支障が生じています。処分場から流れ出るCODは、基準値をはるかに超えた状況が昨年6月に起こっています。県では、監視員が毎週見回りをし、業者が水処理施設の改善を行っています。その後、改善状況を住民の方にお聞きしているのですが、良い方向にいたっていません。住民は、処分場に反対しているのではなく、和解条項をしっかり守ってもらいたいと願っているのですが、持ち込まれる廃棄物が本当に安定5品目なのか。どうして県外ナンバーをつけたトラックばかりがこんなにもやってくるのか。不安な生活を続けています。

 もう1点は、佐伯湾整備事業の一環として県が行おうとしている大入島石間浦の埋め立て問題です。磯草の権利を主張しきれいな海を浚渫土砂で埋め立てるなと白紙撤回を求めている一部地域住民とあらゆる角度から検討して、石間浦沖しかないという結論にいたった県とが対立した形になっています。ニュースで反対住民の方々の工事阻止行動を見ながら、本来なら結束の固い島で助け合って生活しているはずの人々が感情面でももつれてしまっている様子に多くの県民が胸を痛めています。不測の事態を避けるため、工事は一時中断した形になっています。個々の問題は、一部の住民にのみ不利益が生じている問題ではなく、大分県全体の課題です。そこで産業発展・開発と自然破壊、経済発展と環境保護の両立という難しい課題の解決にどう対処していくのでしょうか。難しい決断が迫られています。知事のお考えをお聞かせください。


6.食の安全と農家の支援について

 次に、消費者の視点に立って食の安全について質問します。
 私は、スーパーに行って野菜や果物を買う時いつも考え込んでしまいます。時期的に栽培できないはずのものや外国から輸入されたものが並んでいるのを見た時です。どんな過程で作られているのだろうか。農薬や化学肥料はどのくらいかけられているのだろうかと考えはじめると手が出なくなってしまいます。そこで有機農法で野菜作りをしている人と個人契約をして毎週野菜の宅配をしてもらうことにしました。今の時期は、きゅうりもピーマンもレタスもトマトもありません。旬のだいこんやにんじんやカブは小振りですし、葉ものは外側が虫食いです。でもほんのりと甘く、アクも苦味もなく、いい香りがしています。そして安心して調理することができます。郊外に出かけると野菜の直販所がたくさんありますが並んでいる野菜は、どれも規格が揃い、大振りです。除草剤が撒かれた畑で作られたのではないか。体に有害な化学肥料が使用されてはいないかと不安に陥ります。県では、生産履歴や生産方法、生産地の状況など、農産物の履歴をたどることができ、必要な情報を消費者に的確に提供できるトレーサビリティシステムの普及に力を入れていますが大きな団体で出荷される作物については、指導ができやすいと思われます。しかし系統外流通の場合はどうなのでしょうか。こうしたケースでの農産品等の安全確保対策についてお聞きします。
 1月14日に農林水産部の本年度の重点事業説明があり、新規の事業の説明をしていただきました。また、大分県農業賞を受賞された方々に関する記事が新聞に連載されていて、興味深く読ませていただきました。受賞された個人も団体も苦難を経験されながら際立った創意や工夫、努力と協力で品質や生産性を高めていらっしゃいます。
 私は、農業をしたこともなく農家に育ったわけでもなく農業についてはまったくの素人ですから農業問題を語ることはできませんが、祖母は倒れるまで安心院で農業を続けていました。田舎に帰るたびにその姿を見て育ちました。祖母が農業ができなくなってからは、前の家のおじさんが祖母の土地でメロンを育てました。しかしうまく収益が上がらなかったのかメロンはいつの間にかイチゴに変わりました。イチゴの後はアスパラに変わりましたが今は、何も植えられず、土地は荒れてしまっています。統計によりますと昨年の大分県の総農家数は、53700戸となっています。そのうち経営面積が極小で農産物の販売額が年間50万円未満の自給的農家が15400戸。年間50万円以上の販売額はあっても、1年間に60日以上農業に従事している65歳未満の者がいない農家、つまり、農業中心に働く若い人がいない農家が23600戸。となっていて約7割は、私の祖母のように低い収入のなかで高齢者が土地を守っている状況だと思われます。そこで今後、細々と農業を営む兼業農家の人々の心をどう支え、どう支援をしていくのかお聞かせください。


7.若者の就労について

 2月1日の新聞によれば、「厚生労働省が発表した毎月勤労統計調査の2004年まとめによると、平均常用労働者数は前年比0.4%増の4283万1千人で、7年ぶりに増加に転じた。リストラ一辺倒だった企業も、景気回復を受けて生産現場などでの入手確保に迫られ、雇用者数増加につながった。」と書かれています。しかし、若者の雇用は、依然として厳しい状況が続いています。
 2月7日にハローワークに行ってみました。雨降りの月曜の午後でしたが、たくさんの人が訪れ、求人状況を調べていました。そのうちの半数は若者でした。44台の求人検索パソコンはどれも使われていました。資料によると有効求人倍率は、45歳以上が最も低く、次が25歳から29歳の若者です。若者の失業増加の理由としては、いくつかの要因が指摘されていますが、大きく分けると若者の意識変化と若者労働需要の低迷が挙げられます。前者については、いわゆる「パラサイト・シングル説」があります。親と同居することで経済的支援を受け、豊かな生活をすることができ、生活のために就職しない若者の存在が浮かび上がります。しかしそれが多数を占めているのではなく、多くは、企業が雇用調整を迫られ、新規採用を抑制しているため、やむなくフリーターを選択している若者たちです。フリーターは、2010年には、476万人になるとも言われています。彼らの働き方の多くは、アルバイト、契約社員や派遣業で、競争やノルマに追われる厳しい労働から回避し、自分で本当にやりたいことを見つけられるまでフリーターを続けるという若者もいます。しかし、長期にフリーターを続けるわけにもいきません。
 県では、職探しをする若者がキャリア相談から求人の紹介まで一箇所でサービスを受けられる「ジョブカフェ」を開設し、若者の就労に力を注いでいますがその実態はどうなのかお知らせ下さい。そして若者が職業を通じて将来に希望が持てるよう今後どのように取り組んでいくのかをお知らせください。若者は、いつの時代でも将来の社会の担い手です。雇用なき景気回復ではなく、若年者の雇用改善がこれからの大分の発展に大きな鍵を握っていると考えています。


8.大分国体について

 次に2008年に開催される予定の二巡目大分国体について質問します。
 県では、現在の国体準備委員会を、大会運営全般を取り仕切る実行委員会に改編し、競技団体と連携して各競技の実施要綱づくりに着手するよう伺っています。また大分らしい国体を演出するため募金活動もスタートし、機運を盛り上げていくということです。県では、昨年の「心のこもった埼玉国体」もモデルにしながら基本計画を策定するようですが、私は、是非2001年の高知県の「よさこい国体」を参考にしていただきたいと考えています。「よさこい国体」は、高知県では49年ぶり、四国では初の単独開催で秋季大会における宿泊施設の大幅不足から、5競技を夏季大会に移行し、国体史上初めて、陸上競技大会を開催日前日に先行開催しました。2隻のホテルシップや9000人近い選手・監督を民泊などで対応し、慣例にとらわれない簡素効率化をめざしました。国体予算を大幅に減らし、例えば、選手強化費用は、多い県では、40億円かけていましたが高知県では、26億円でした。施設費は、200億円程度でした。県として後の人たちに負担を残さないような大分国体のイメージをどう描いているのかお知らせください。
 高知国体では、高知県が天皇杯で10位となり、開催県が天皇杯を逃がすのは、山口国体以来、39年ぶりのことで大きな話題になりました。天皇杯至上主義の過激な競技力強化を廃止した結果、「身の丈にあった国体」と評され、国体のあり方に一石を投じました。
 開催県は、全競技に予選なしでフリーエントリーできる有利さや県外から有力選手を招く強化策などにより優勝をめざしますが、大分県も「身の丈にあった国体」にしていって欲しいと願っています。さらに燃え尽き症候群や選手強化のあまり現在の中学・高校生がバランスを欠いた学校生活を送ることがないようくれぐれも配慮をしていただきたいと切望しています。県としての考えをお知らせください。


9.防災対策について

 昨年10月23日新潟県中越地方で発生した地震では、死者40人、負傷者4562人という痛ましい人的被害が出ています。住宅の全壊、半壊などにより雪国の町では、今なお厳しい生活を余儀なくされています。そして暮れの押し迫った頃、世界中を震撼させたスマトラ沖地震では、巨大大津波により死者、不明者が20万人を超え、史上最悪の犠牲者が出ています。かろうじて生き残った人々の心の傷は深く言葉では表現できない深刻な状況です。津波の前兆になる地震の揺れに気づかなかったことや警報システムがないために、逃げ遅れたことが被害をさらに大きくしたようです。
 大分県では、大分県中部地震を最後に大きな地震には見舞われていませんが、21世紀前半にも東南海・南海地震が発生すると言われています。県では、本年1月に、各部局による地震防災対策の検証を行い「大分県の地震防災対策の検証に係る報告書」を作成し、不測の事態に備える計画がされています。県民の防災に対する意識は高いとはいえ、地震津波でどんな被害が起きるかを想定し、警報に応じた避難行動が取れる人がどのくらいいるでしょうか。さらに報告書のまとめには「公助」には限界があることから、「災害に強い人づくり」を目標に地域住民の防災意識と知識を高め、「自らの命・財産は自らの手で守る」という「自助」の精神の確立とともに、「自分たちの地域は自分たちの手で守る」という「共助」の考えに立った施策の展開が必要である。と記されています。津波研究の専門家である今村文彦教授は、防災対策のキーワードとなるのが、地域参加型の「防災マップ」だと言われています。住民が一緒になって、一定の高さの津波がきた場合を地図上で想定し、のみ込まれる家や地域を特定し、家から避難先までの逃げ道を書きこむ。避難するまで何分かかるかも確かめる。地図作りの過程で、津波は川をさかのぼるから川沿いを避難路としてはいけない。行政の指定避難場所は遠すぎる。といった役立つ情報も得ることができる。といわれています。そこで「自らの命そして自らの地域は、自らで守る」心構えを県民一人ひとりに喚起させるような施策が早急に必要だと考えますが当局の考えをお示しください。


 先月2月20日に合併後初の大分市議会議員選挙が行われました。議会に対する市民の関心度をはかる目安の一つになるのが投票率だと思います。大分市選挙区の投票率は、過去最低の58.46%でした。100人のうち41人は権利である参政権を放棄したという結果に愕然としました。「誰に入れてもどうせ何にも変わらない」「候補者は選挙の時だけお願いするだけ」と非難の声を良く聞きますが、県民により身近な、わかりやすい、期待に応えられる議会でなければならないと痛感しています。社会県民クラブ並びに私自身も引き続き執行部の皆さんのご協力をいただきながら、議員の皆さんとともに開かれた議会となるよう全力で取り組む決意です。

 最後に、質問を書くにあたって資料収集に協力していただきました政務調査課の職員の方々に感謝申し上げ、私の代表質問を終わらせていただきます。
 ご清聴ありがとうございました。


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2004.12.8 一般質問(第4回定例会)

2004.3.15 一般質問(第1回定例会)


2003.7.18 一般質問(第2回定例会)