社会県民クラブの平岩純子です。1年生議員の私に一般質問の機会が与えられましたことを感謝申し上げます。
また本日、お忙しい中、傍聴に来てくださいました先輩諸氏に心よりお礼申し上げます。
昨年4月より、先輩方や事務局の方々に支えていただいています。そして県庁内のいろいろな部の方にも質問をさせていただきました。
私は、この11ヶ月間自分の目で見て感じた事、県民の方に直接お会いし、お聞きした課題について質問させていただきます。
広報広聴のあり方について
私は、議会だよりを作成し、様々な方に読んで頂いているのですが、多くの方から「県議会ではこんな事を話し合っているんですね。」「初めて議会の事を知りました。」と言われることが何度かありました。議会がある度にテレビや新聞で報道されているにもかかわらず、県民の生活と密着していなければならない議会でのことが県民生活に溶け込んでいないということを目の当たりにした時、これではいけないと痛感しました。
確かに、私自身も教員である間は県議会のことはよく分かりませんでした。今回、議員という立場に身を置いて初めて、県の議会や行政の様子をもっと県民の方に知らせていく重要性に気付いたというのが実際です。
昨年7月に知事が公表した「中期的な財政収支の試算」、そして国の地方財政計画で新年度大分県では、地方交付税137億円、臨時財政対策債115億円、計252億円がさらに削減されるとなったことから、議会をはじめ県の中はまさに行財政改革の嵐が吹き荒れています。県の財政が大変な時に議員をしている責任の重さを痛感しています。ただ、県民の方々にお会いしてみると「香りの森は一度行ったらニ度とはいかない。」「ビッグアイ、あれはいらない箱ものだった。あんなにマスコミも書きたてたのに、賛成した議会にも責任がある。」などの声はお聞きするものの、行財政改革そのものの緊急性については、まだまだ理解していただいていないというのが実態のように感じます。
知事は、「行財政改革は、財政健全を確保するための手段であり、決して、それ自体が目的ではない。将来に夢と希望をもつことのできる県政を実現するため県民の理解と協力を得て、行財政改革を成し遂げる必要がある。」と言われています。しかし、12月に出された行財政改革プラン素案に対するパブリックコメントは458件しか寄せられておらず、十分県民に浸透、理解されているとは思えません。これは一方では、県民の代表である私達・議員にも責任の一端があるとも私は考えます。
今まさに行われようとしている改革を大分県全体のものとするために、まず、県の予算や計画などの決定機関である議会で行われている事、話し合われている事をもっともっと県民に知ってもらう努力をしなければならないと考えます。
例えば、納税者である県民が議会に来て傍聴しやすくするための夜間議会の開催や、本会議をリアルタイムに見ることができるケーブルテレビやインターネット中継、さらに「県議会おおいた」の全戸配付の実施、これらは議会や県行政に対する県民の関心を高め、また議会の活性化にもつながる課題だと思っています。既にこれらの課題に取り組んでいる県もあり、私も一議員としてこのような議会の情報発信の実現に努めていきたいと考えています。
ところで、今回の行革プランを含め、これまでに県が実施してきたパブリックコメントに寄せられた意見の少なさから感じるのは、広報や広聴の手法に問題があるのではないかということです。今後、県がNPOや県民との協働を進めていこうとするならば、県行政と県民の間で情報を如何に活発にやりとりするか、これが重要な鍵だと思うのです。できるだけ多くの媒体を使うとともに、双方向性を確保すべきと考えます。例えば、意見募集をする場合、単に計画案を提示するだけでなく、どのような点を考慮してこのような案になったか、他にどのような案を検討したのか、具体的に提示しなければ県民としても検討のしようがないと思うのです。
そこで、知事にお尋ねしますが、パブリックコメントを含めて、今後の県の広報広聴のあり方についてお聞かせください。
知事答弁 広報広聴のあり方について
地方分権時代においては、自治体は自立自助の精神に基づき地域住民に密着したきめ細かな行政サービスを提供することが求められています。そのためには、住民に対する十分な説明責任を果たすとともに、行政に住民の声を積極的に反映させる仕組みづくりが必要となります。
広報広聴で重要なことは、まず第1に、現場主義に徹することです。事業が実施されている現場に視点を移し、現場の実情や県民の生の声を聞き積極的に県政に反映させなければなりません。そのため、私は知事就任以来、県政の原点を「県民」に置き、職員に対して、現場に出て「外の風を県庁に持ち込む」よう指示してまいりました。私自らも「県政ふれあいトーク」などで県内各地に出かけて県民の方との対話を重ねています。
第2に、双方向の情報伝達により、県民と情報を共有することです。一方的に県からのメッセージを県民に伝えるのではなく、県民から意見を聞くことも広報広聴の重要な要素であります。このため、これまでの葉書による「知事への提案」や「県政出前講座」に加え、新年度からメールマガジンの発行や電子メールを活用した県政モニター制度の開設に取り組み、県民からの幅広い意見を県政に反映させてまいります。
第3に、提案型の広報広聴制度により、県民の県政に対する参画意識を醸成することです。県政に対する理解を深めていただくために、全世帯配布誌や新聞、テレビ、ラジオなどにより県政情報を県民に提供し、県民の積極的な提案を引き出すことが重要です。このため、県政の基本的な計画等に対する県民の意見を聞くパブリックコメント制度などにより、県民の県政への参画を図っているところです。
パブリックコメントについては、今年度、13の案件について実施し、合計で759件のご意見をいただきました。中でも、行財政改革プランの素案については、県下各界各層の県民からなる推進委員会の議論の過程を逐一公表するとともに、期間を延長して意見募集を呼びかけたことなどにより、県民の関心も高く、実に458件の意見が提出され、可能な限り成案に反映させていただくこととしております。
今後は、条例や計画などに限らず、身近なテーマについても広く意見を募集するなど、対象の拡大を図るとともに、原案が決定される過程を公表するなど制度の一層の充実に取り組んでまいります。
今後とも、現場主義に徹した積極的な情報提供に努めるとともに、県民の意見を県政に迅速かつ的確に反映させる体制づくりに取り組んでまいりたいと考えております。
教育問題について
まず、少人数学級については、2004年度から小学校1学年に30人学級の予算案が上程されています。県民や教育関係者の長い間の悲願がやっと達成されることに感謝申し上げます。教育委員会からは、文部科学省が加配定数教員の少人数学級への活用を認めることとしたため、その制度を運用しての実施と説明を受けましたが、30人学級導入後の少人数指導等の実施についての考えをお聞かせください。
また、県下13市町で30人学級が実施されますが、下限を20人としているため、現実には、県下の1学年のクラスに39人学級と20人学級ができてしまうことも想定され、保護者の間にも不公平感が広がるのではと危惧しております。具体的にお聞きしますが、下限を20人とした理由はなんでしょうか。20人下限の条件を廃止できないでしょうか。
さらに、今回の案では1年生のみの適用です。1年生は、生活集団を中心としながら学校生活に慣れていきます。1年たってやっと慣れた友達や先生と別れ、2年生になったらクラス替えが行われ、また新しい学級づくりを行わなければなりません。文部科学省の定数制度を活用しての少人数学級実施なら2年生まで実施できるのではと考えます。九州では佐賀県を除いたすべての県で小学校1、2年を中心に実施されると聞いております。また、山口県では中学校で全面的に35人学級を実施するとのこと。教育は未来への先行投資と言われるように、大分県の未来を背負う子どもたちに豊かな教育を保障するため、少人数学級の対象学年拡大について知事の考えを聞かせてください。
教育長答弁 少人数学級導入による少人数指導等の変更について
少人数指導等については、児童の理解力や学習意欲が向上したなどの成果がみられることから、原則として、30人学級が導入される1学年を除き、2学年以上を対象に、引き続き来年度も実施することにしております。
具体的には、すべての学校を対象として、31人以上の学級規模を含む学年で、国語、算数、理科の3教科について実施します。
このことにより、児童一人ひとりに応じたよりきめ細かな指導を一層推進し、基礎学力の向上を図ってまいりたいと考えております。
教育長答弁 学級規模の下限について
学級規模については、基本的に、子どもの社会性を養い、互いに切磋琢磨する場として、一定規模の生活集団が必要であると考えております。
昨年、県教育委員会は、小学校1学年の学級担任に対して、基本的生活習慣等の定着度に係る調査を実施いたしました。これによると、19人以下の規模の学級においては、「友だち関係が良好」、「学校生活を楽しむ」などの社会性や協調性に関する項目において、20人以上の規模の学級に比べて、低い評価となっていることなどから、20人を下限とする基準を設けたところであります。
知事答弁 少人数学級の対象学年拡大について
私は、学校教育について、子どもたちの個性と潜在能力を伸び伸びと開花させ、社会で存分に活躍できるたくましい精神と能力をもった人材を育成することが使命であり、その充実を図ることは極めて重要であると考えております。
とりわけ、幼稚園から小学校生活へと大きく環境が変化し、一人ひとりに、適切な対応が求められる最初の時期に、よりきめ細かな指導が行える教育環境を整備することが必要であることから、教育委員会からのご報告により極めて厳しい財政状況ではありますが、小学校1学年に30人学級の導入を決断したものであります。
したがいまして、対象学年の拡大は考えておりません。まずは、4月からのスタートする30人学級導入の趣旨が学校において十分に活かされ、温かな人間関係づくりや基礎・基本の徹底による学力向上により、子どもたちが楽しく生き生きとした学校生活の第一歩を踏み出すことを期待しております。
「障害」児学級について
「障害」がある子どもたちやその保護者の願いが受け入れられ、校区の学校で共に学ぶことができる子どもたちが増えてきました。たくさんの友だちと様々な経験をすることを通して「障害」がある子どもたちもすくすくと育っていますし、周りの子どもたちをも変えています。
しかし学級の定員は上限が8人と国の基準で定められているため極めて厳しい状況が生じています。特に、入学したばかりの1年生には環境に慣れるため様々な配慮が必要です。1学期の間は、時には担任が抱いたまま学習するといった状態も見られます。学級には、1年生以外の子どもたちも在籍していますから、担任は、その対応にも追われます。保護者の教育に対する期待は大きく、「障害」児学級で学習する時間はできるだけ一対一で学習できるように日課表を組みますが、学級の人数が多ければ多いほどなかなか個に応じた指導ができません。交流学級で勉強する時もサポートが必要なケースが多く、担任は1日中学校内を走り回っています。
私も小学校に勤務していた時、5名の情緒に「障害」がある子どもたちと勉強しましたが、入学して間もなく1年生が学校外に出てしまい、全職員で探した苦い経験があります。「子どもに、もしものことがあったらどうしよう。」と生きた心地がしませんでした。教師は子どものためならどんな苦労もいとわずやっていますが、危機管理の面からも施設面の充実だけでなく人的配慮は緊急な課題です。
今後は、「障害」児学級を複数担任制にしていくことなどが必要だと考えます。教育長の考えをお聞かせください。
教育長答弁 障害児学級の複数の教員配置について
障害児学級の設置については、児童生徒の状況等に応じて、1人の場合でも学級を設置しており、本年度の障害児学級における1学級当たりの平均児童生徒数は約2人となっております。
ご質問の障害児学級の複数の教員配置は、教員定数の関係上困難でありますが、今後とも、児童生徒の障害の状態や発達段階に応じ、学校全体で支援する体制づくりに努めてまいります。
青少年ハートフル交流事業と湯布院青年の家存続について
生涯学習課は、来年度も不登校の児童生徒や保護者を対象にふれあい交流キャンプの予算を立てています。教育現場で今、直面している子どもたちの困難な問題は深刻です。強迫神経症、対人恐怖症、節食障害、ひきこもり、不登校、集団不適応、学習障害、広汎性高機能発達障害等の子どもたちや保護者を支援することを目的として4年前から活動を開始し、実績をあげている「フリーリー」という民間団体があります。教育委員会でも十分認識されていることだと思います。湯布院青年の家で行われるハートフル事業は、チャレンジ・ステップの場として、子どもたちが自主性を発揮できる場として重要な位置をしめていました。
また「フリーリー」主催「湯布院夏の集い」では、毎年県外の人達も含め100人近くが集い、成果を着実に上げています。
しかし、突然、行革プランで「湯布院青年の家」は2004年度末をもって廃止すると出されました。
2001年にバリアフリー化された本館が完成し、利用者数は減少しておらず、本年度も四万五千人の利用が見込まれています。「障害」のある人や韓国からの利用者も増えていると聞きました。廃止されると学校生活全般に困難を抱えている人達が集う事ができなくなってしまいます。県は、「マリンカルチャー」の一部を青少年を対象とする社会教育施設と位置付ける方向のようですが、フリーリー代表の梶原さんによれば、「湯布院青年の家は県内でも大変立地条件が良く、施設的にも充実しており、食事もおいしい。子どもたちへの本当の理解と支援ができる職員がいる施設は他に類を見ない。」といっています。
今回の行革プランでは猶予もなく、説明が十分に行われないまま様々な施設の廃止が打ち出されていますが、青少年の健全育成と声高に叫ばれながら財政面からだけの論理で行革が行われることは、青少年の健全育成に逆行することにつながると考えます。利用料金を見直したりPR活動に積極的に取り組んだりすることもせず、ただ廃止ということでは納得がいきません。すでに署名や子どもたちからの意見も届いているはずです。
2月25日の全員協議会のなかで知事は「廃止と打ち出した施設は廃止」と述べられましたが、私は存続に向けて再度見直しをされることを強く訴えます。見解を求めます。
教育長答弁 湯布院青年の家の存続について
青少年教育施設は、青少年に自然体験や生活体験の場を提供する教育機関であり、一般宿泊施設とは異なり専門職員による指導と青少年が低廉(ていれん)な料金で利用できることが不可欠であると考えております。
これらの施設の在り方については、昨年度、県議会行財政改革特別委員会からの見直しの提言がなされ、今回、青少年教育機能を併せ持つマリンカルチャーセンターを含めて検討を行いました。
マリンカルチャーセンターが開所した平成4年度と比較すると、大分県の児童・生徒数が約6割程度に減少していることなどを踏まえ、「選択と集中」の観点から検討した結果、引き続き低廉な価格で利用できる施設を一定の質及び規模で提供していくために、一施設を廃止することとしたものです。
その中で、マリンカルチャーセンターの一部を青少年教育施設として位置づけたうえで、利用の集中する夏場にも対応するとともに、県北の香々地少年自然の家、県央の九重少年自然の家、県南のマリンカルチャーセンターという地域バランスなどを総合的に判断し、湯布院青年の家を平成16年度末で廃止することとしたものです。
もとより、湯布院青年の家で実施している不登校児童・生徒に対する事業などについては、今までの事業成果を高く評価しているところであります。したがって、このような事業については、他の施設で引き継いで実施するとともに、職員の持つノウハウなどソフト面の資産についても、適切に継承する方向で検討しており、施設の廃止に伴う影響はできる限り最小限となるよう努めてまいりたいと考えております。
二豊学園について
議員になって、ずっとニ豊学園の川野学園長の語ってくれた子どもたちのことが頭の中にありました。しかし学園に伺う事は迷惑になるのではと訪問をためらっていましたが、今年になり学園長自ら泊まりこんで指導に当たっていると伝え聞き、矢も盾もたまらずお伺いしたのは、岸和田市でこれが人間のすることかと耳を覆いたくなるような虐待の実態が報道された直後、1月27日のことです。
とても寒い日でした。車で近づくとグランドに先生とマンツーマンでサッカーをしている少年の姿が見えました。学園は、1973年に竹中に移転されました。現在、小学校5年生から高校2年生まで12名の子どもが生活をしています。ほとんどの子どもが虐待を経験しています。学園長は「ここの子どもは学級崩壊のチャンピオンです。」といっておられます。自分のことを大事にされなかった。だから人のことも大事にしない、できない。ちょっとしたことで切れてしまったり、職員に挑発的であったり、学校にいる時に数々の問題行動を起こしてきた子どもたちを11名の職員で指導にあたっています。「子どもの表面的な言動の裏にある訴え(苦しさ、つらさ、怒り、甘えなど)を理解していく感性やユーモア、専門性、そして職員のチームワークが求められています。」と言われる学園長の言葉は実践しているからこそ心に響きました。
その日は1月の誕生会で一緒に食事をさせてもらいました。手作りの心温まる献立は、子ども達のリクエストでした。食堂は、外から見るとまるで古い倉庫のようでした。学習を終えると子どもたちは、寮で過ごします。寮には職員が寮長としてご夫婦で住みながら生活指導をしていますが、力関係の中で人間関係を作ってきた子どもたちが寮長やその家族を攻撃し、1つの寮が崩壊しました。
今、指導課長と5人の教員で宿直体制を取って急場しのぎをしています。寮では集会室にしか暖房器具が無く隙間風がはいってきます。朝晩の冷え込みは相当なものだと感じました。いたるところを破損させて修理した跡が見られます。剥がれ落ちそうになったセメント。旧式の風呂場。あまりに劣悪な環境に言葉がでませんでした。
学園長は、機関誌「非行問題」の中で「子どもにどんな支援をするかを判断する基準は決して職員にとって最善の利益ではなく、時には対立する事があるかもしれないが優先すべきは子どもの最善の利益である。根雪を溶かす大地のような大きな愛情に満ちた風土がなければならない。だめな子はいない。だめと思うのは私たちの力が足りないのだと思う。」と文を寄せています。
お暇する時、すれ違った少年が私の靴にそっと靴ベラを置いてくれていました。
はいつくばるようにしながら子どもたちに寄り添っている職員と心優しきチャンピオンたちのために、まず、施設面の改善が不可欠です。そして非常勤の職員を増やしてでも寮の運営体制を交代制に切り替えて行くことが急務だと考えます。福祉保健部長の見解を求めます。
福祉保健部長答弁 二豊学園について
二豊学園は、昭和48年8月に現在の場所に移転し、平成10年4月には教護院から児童自立支援施設へとその名称及び機能を変更し、従来の不良性のある児童に加えて、家庭環境その他の理由により生活指導等を要する児童の自立を支援しています。
これまで、家庭的な環境の下でのきめ細かい生活指導が入所児童の自立を促進するとの観点から、学園内の寮で舎監夫婦と生活を共にする小舎制による運営を行ってまいりました。
入所児童数は、昭和48年の42名をピークに減少し、現在は12名となっておりますが、虐待を受けた入所児童の急増により処遇上の多くの問題が生じており、夫婦小舎制の見直し、それに伴う職員の配置、今後の入所児童の動向、適正な教育の確保など、今後の学園のあり方について検討する必要があると考えております。
さらに、施設についてはこれまで十分とは言えないまでも必要な改修を行ってまいりましたが、築後30年を経過し老朽化も進行していることから、学園全体のあり方に併せて、検討しなければならない時期だと考えています。
女性の自立という観点から
身辺の自立、性的自立、経済的自立、これが人として生きていく上での大切な自立だと私は考えます。
弁護士の中島通子さんは言います。
「女が自分の生き方を自己決定していくためには、まず自分で食べていける職につくことが必要です。」と。しかし働き続けようと願う女性の前にはいくつもいくつもハードルがあります。結婚、出産、育児、介護、夫の転勤、低い評価、見こみのない将来、そして女性ゆえの嫌な思いセクシャルハラスメント。
改正された男女雇用機会均等法では、「事業主は、女性であることを理由として定年及び解雇について男性と差別的取り扱いをしてはならない。結婚、妊娠、出産を理由とする女性の退職制度を就業規則などで定めてはならない。女性が結婚、妊娠、出産したことや労働基準法に定める産前産後休業をしたことを理由に解雇してはならない」と定められていますが、罰則規定が無いため出産のためやむなく職場を去らなければならない女性が大分県でも数多くいます。県が出した「女性活用実態調査報告書」によれば、常勤雇用労働者が10人以上の1000の事業所では、産前産後休暇制度を就業規則で定めている事業所が67.4%であり、15.4%の事業所には定めがなく、17.2%は無回答という報告がされています。「次世代育成支援対策法」も成立し、女性の自立のために県としても何らかの措置が必要だと考えますが、見解をお聞かせください。
商工労働観光部長答弁 女性の就労環境について
産業構造の変化や、少子高齢化の進展は、雇用環境に大きな影響を与え、従来は男性の仕事と考えられていた分野への女性の進出、結婚や出産後も働き続ける女性の増加などに伴い、女性の働きやすい就労環境の整備を進めることが求められております。
このような状況を踏まえ、国においては、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法等の関係法令の改正が行われたところです。
本県における女性労働者は、平成2年以降雇用者総数の4割を超えており、建設、運輸業などの分野にも進出するとともに、なお、パートタイマーが増加しております。
このため、県では、これまでも労働講座の開催等により、関係法令等の周知徹底を図ってまいりましたが、来年度は特に育児休業の利用促進等を図るため、事業所訪問により事業主に対する重点的な啓発を行うこととしております。
また、出産や育児で離職した女性の再就職を支援するため、パソコンと医療事務の技術講習を県下6カ所で実施いたします。
このほかにも、人口5万人以上の市に対し、働く女性の仕事と子育ての両立を支援するファミリー・サポート・センターの設置を働きかけており、14年度に設置した大分市に次いで、16年度には別府市が設置に向けて施設整備に着手する予定であります。
なお、職場におけるセクシャルハラスメント防止も重要な課題であり、今後とも、女性の就労環境改善のために、大分労働局雇用均等室などと連携を図りながら、努力してまいりたいと考えております。
ハンセン病回復者への支援と啓発について
ハンセン病にかかった人達が、国辱論、民族浄化論、社会防衛論といった間違った日本の政策の中で、1943年にはプロミンの使用で症状が回復する事が分かっていたにもかかわらず、89年もの長きにわたり故郷を追われ、隔離され続けた歴史を今ここで語る時間はありませんが、私は、3年前の熊本地裁判決の前夜祭に参加し、翌日の国家賠償勝利、そして世論に押された小泉首相の控訴断念を素直に喜びました。昨年の8月に菊地恵楓園に、12月には宮古島の宮古南静園にお邪魔し、自治会の方々と交流をしました。
高い塀に囲まれ、いわれなき差別の中で名前を変えられ、強制労働、断種、中絶、人間としての名誉を剥奪(はくだつ)され、死んでなお故郷に帰れなかった方達の無念を思う時、知らなかった私たちも加担者だったのだと気づきました。
熊本県南小国のホテルで起こった宿泊拒否問題は、正しい理解ができていなかったことが原因であり、国や自治体の啓発活動が上滑りであった面も否めないと思います。
事件以来、ホテル側の形式的な謝罪を拒否した恵楓園自治会には、抗議の手紙が100通も寄せられたそうです。
「あなたたちも謙虚になりなさい。まだ慰謝料とか要求するんでしょう。体ばかりでなく心まで醜くなる。」とか
「謝っているんだから許すべき。そんな心を持ち合わせているから不幸な病気になるんでしょう。」とかいった内容だそうです。
この訴訟の弁護団を支えてこられた徳田靖之弁護士は、差別の二重構造だと言われました。「差別は憎む。しかし差別された人が反撃してくると、自分の価値観と違ってくると、一変して差別された人を攻撃してくる。自分が差別者だと気づいていない。何十年啓発活動をしてもこれでは変わらない。」そして先生は、「正しい知識を持つだけでなく県出身の方にどうぞ古里へお帰りください。」という県民行動が大切だと訴えられています。
県の資料によれば大分県出身者の方が恵楓園に51名。鹿児島県の星塚敬愛園に6名。香川県の大島青松園に2名。熊本県の徒労院に1名いらっしゃいます。県でも里帰り事業に積極的に取り組んでいただいていますが、その際、これまで国家賠償訴訟以前から回復者の方達と交流を深め、地獄のような苦しみの中を生き抜いた回復者の人間としての強さや温かさに触れ、社会復帰に向けて深く関わってきた「共に歩む会」との連携を密に行っていただきたいと切に願っています。
すでに3月4日に「申し入れ書」を提出していますが、県が行う啓発活動、里帰り事業、さらに福祉事業の充実、在宅家族の交流実現など、是非とも民間ボランティアをもっともっと活用して施策に生かしていただきたいと考えています。当局の考えを伺います。
以上で私の一般質問を終わります。
私は、まだまだ県議として未熟ですが、県民の皆さんの負託を受けているという自覚をもって、今後ともしっかりと議員活動に努めていきたいと考えています。
ご清聴ありがとうございました。
福祉保健部長答弁 ハンセン病回復者に対する支援等について
これまでのハンセン病患者に対する療養所への入所政策が、患者の方々の人権を制限、制約し、一般社会においても厳しい偏見、差別の原因となりました。
このため、県では、ハンセン病について正しい理解を進めるために、講演会や広報媒体、パンフレット、県政出前講座等による普及啓発を一般県民や関係機関に対し積極的に行うとともに、県出身入所者にふるさと大分を体感してもらう里帰り事業や、市町村職員や学生、教諭等と施設を訪問し入所者との話し合いを行う交流事業に取り組んでいます。
特に、里帰り事業は、昭和40年代後半から実施しておりますが、実施にあたっては、宿泊場所、入所者本人の「静かに里帰りしたい」等の意向や身体の負担等を考慮する必要があるため、施設を訪問のうえ事前打ち合わせをするとともに、帰省の際には、個別行動の要望にも可能な限りの対応をしています。
それにより、ふるさとでも兄弟・姉妹との再会、実家前までの里帰りや28年ぶりの実家への里帰りができた方もおられました。
今後とも、回復者や家族等関係の方々の名誉の回復と偏見の解消、社会復帰の実現等に向けて、きめ細かな対応を行ってまいりたいと考えております。
なお、民間ボランティアの方々には、回復者や家族の方々のさまざまな思いや考えがありますので、必要に応じてご協力をお願いしたいと考えております。
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