29番、県民クラブの平岩純子です。私は、昨年の9月に、教員採用試験をめぐる贈収賄事件を受けて、胸をえぐられるような痛みと表現できない怒り、かつて経験したことがない悲しみの中で質問をしました。あれから1年、事件の背景や真相は十分に明らかにされてはいません。今日は、この1年間、学校の現場を見つめ考えてきたことと県民の皆さまからいただいた課題について分割方式で質問します。執行部とじっくり話し合いたいと考え、質問の趣旨だけを簡潔に最初に申し上げます。明確な答弁をお願いいたします。
また、わざわざ傍聴に来ていただいた方に心から感謝申し上げます。
 1.教育の諸課題について
(1)
教育委員任命について
はじめは、教育をめぐる諸課題について質問します。昨年、12月に県教育委員に就任した岩崎哲朗氏が、今年7月、地方教育行政組織及び運営に関する法律で禁じられている政治団体役員を兼務していることがわかりました。兼務していたのは、日本弁護士政治連盟の理事と大分支部長でした。教育委員は、政党や政治団体の役員になることを認められていません。岩崎氏は、即刻その役員を辞任したそうですが、私は、いくつかの疑問を感じざるを得ません。そこで、以下の点についておたずねしたいと思います。まず1点目は岩崎委員を提案した理由です。政治団体役員をしている人を知事が議会に提案した所以は何なのかということです。2点目は、政党その他の政治団体の役員となることを禁じている「法第11条の5」は、クリアされていたのかということです。クリアできると判断された根拠は何なのか。3点目は、これまでの議決についてです。岩崎氏は、就任以来7ヶ月間、教育委員として教育委員会の議決に関わってきたわけですが、その間の議決が正当に認められるのかという点です。また、これらのことについては、政治団体役員を辞任すればすむのかということも問題点としてあると思います。知事の見解をお聞かせ下さい。
知事答弁
教育委員については、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」第4条第1項に基づき、人格が高潔で、教育、学術及び文化に関し見識を有するもののうちから、地方公共団体の長が議会の同意を得て、任命すると規定されています。
あらゆる角度から候補者の検討を行った結果、岩崎氏が最適任者であろうということで、議会に選任をお諮(はか)りしたものです。
2点目の「日本弁護士政治連盟」の役員を兼ねていたことは、承知していましたが、同法第11条第5項は、任命後の教育委員としての服務等の規定であり、教育委員の任命要件を欠くものではありません。また、この団体は、特定の党派に偏った活動をしているものではないことから、服務規程に禁止されているような政治団体に該当するという認識もしておりませんでした。
しかしながら、事務遂行にあたって、できるだけ誤解を招かないように、また、問題がないようにしておくことが大事でありますので、役員を辞めていただいた次第です。
3点目のご指摘の点は、任命後の教育委員としての服務上の問題であり、政治団体の役員をしてはならないなどの制限はありますが、それを持って、その間の議決の正当性が否定されるものではないと考えています。
(2)
県がすすめようとしている教育の方向性と現場の実状について
ア 学校現場の多忙化と疲弊
次に、学校現場の実状を伝えながら、県が推し進めようとしている教育の方向性について3点おたずねします。
まず、現場の疲弊をどう見ているのか。それにどう対処するのかと言う点です。昨年にも増して学校現場は忙しくなっています。毎日送られてくる調査文書、初任者研修、フォローアップ研修、10年経験者研修、キャリアアップ研修免許更新制、学校評価、進路指導、生徒指導、特別支援、食育、ボランティア、職場体験、学力テスト、体力テスト、地域との連携、不審者対策、モンスターペアレントへの対応、そしてインフルエンザ対策等など、一つひとつは大切なものもあり教職員も子どもたちも懸命に努力をしています。しかし、あまりにも多忙な中で悲鳴すらあげられない、声も出ないような状況が県下で起こっています。教育委員の方々も1学期、いくつかの現場に足を運ばれ、直接、児童・生徒とふれあい、管理職や教職員の声をお聞きになっているようですが、そこにどんな驚きや感激があり、課題が浮き彫りになり、それをどう解決しようと話し合われているのかお知らせください。
林教育委員長答弁
(学校の現状把握)
・ 学校現場の状況を把握するため、教育委員は4月以降、全18市町村の教育委員との意見交換や小・中学校訪問を行ってきました。
(学校現場の声)
・ 現場が多忙化した理由としては、@社会や家庭の状況が変化し、昔に比べて仕事の量・質ともに大変厳しいA特別な支援が必要な子どもが増加しているB報告書作成など庶務的な業務が年々増加しているなどの意見がありました。
・ 私自身も国東市、宇佐市の小・中学校4校を訪問し、現場の教職員が様々な課題に直面し、大変苦労している状況を再認識しました。一方で、会議の効率的な運営や文書の効率的な処理、ITの活用等、各学校で更なる工夫の予知もあるのではないかと感じました。
(まとめ)
・学校現場において、教員が子どもと向き合う時間を確保することは極めて重要であります。教育委員会はこれまで、@学校に出す調査文書の簡素化やAモデル事業のあり方の見直しB各学校での仕事の進め方を見直すヒントをまとめたハンドブックを配布する等、学校現場の負担軽減を図ってきました。今後も現場の実状を把握しながら取り組みを進めてまいります。
イ ろう学校の校名変更と知的障がいを持つ生徒の高等部入学について
次に、特別支援教育の面でおたずねします。
障がいのある人を人権の面でも制度的にも保護するという世界的な流れの中で、2007年4月1日に「学校教育法等の一部を改正する法律」により、特別支援教育推進の制度面への保障がされました。
県教育委員会でも2007年度に「特別支援教育推進検討委員会」からの報告をもとに、「大分県特別支援教育推進計画」を出しています。計画の中には分校設置や通学方法の改善など評価されるものがありますし、もっと話し合いたいものもあります。今回は、ろう学校の直面している学科の再編と校名変更について伺います。
計画では、2011年に高等部本科と専攻科で再編を行い、聴覚障がい者対象の普通科と職業科及び知的障がい者対象の職業科を新設することとなっています。これは、障がい種別を超えた特別支援学校再編だと考えますが、聴覚に障がいを持つ生徒と知的に障がいを持つ生徒が同じ学校の中で共に学ぶことになります。具体的な教育内容や活動、指導面で双方に有効な教育が保障されるのか大変気がかりです。教育委員会としてどういう姿を描いているのでしょうか。
また、学校名も変更するとお聞きしていますが、卒業生や保護者、生徒会を中心に「ろう学校」という校名を残して欲しいとの署名運動が広がり、これまでに5千人余りの署名が集まったとも聞いています。関係者の強い思いを感じ、その願いをかなえていただきたいと考えますが現段階で、その方向性を教えてください。
小矢教育長答弁
(現状)
・ 「大分県特別支援教育推進計画」策定にあたっては、2回パブリックコメント、保護者や障がい者団体、教職員などへの説明会など幅広く意見を伺いました。
・ これまでに宇佐養護学校中津校の新設やスクールバスの増便などを行ってきました。
・ 今後、平成23年度にろう学校の再編整備を予定しています。
(再編内容)
・ 知的障害がい者を受け入れ、高等部の学科を再編します。
・ 聴覚障がい者には、普通科を新設するとともに、現在の産業工芸科などの3 科を廃止し、新たに職業科を設置します。具体的には、情報や生活デザインなどのコースを検討しています。
・ 知的障がい者には、職業科を設置します。具体的には、情報や福祉・サービスなどのコースを検討しています。
・ 校名については、保護者、学校から募集して検討しています。
(まとめ)
・ろう学校の再編整備には、聴覚障がい教育の一層の充実が図られるよう,他県の先進的取り組み事例を参考にし、関係者から幅広く意見を聞き、円滑に進めていきたいと考えています。
ウ 教職員人事評価制度
3点目は、「教職員人事評価制度」について質問します。
昨年、6月14日に発覚した教員採用汚職事件を受けて、県教委は、7月に教育行政改革プロジェクトチームを発足させ、僅か2ヶ月半で改革の方向性を打ち出しました。その中で出てきたのがこの「教職員人事評価制度」だと思います。この新たな評価制度は、学校現場への成果主義の導入です。欧米で行きづまりを見せているこの成果主義、日本でも多くの企業が取りやめている背景には、客観的に見て問題があると分かったからだと、私は認識しています。教育委員会として客観的に考えられる問題点をどう捉えているのかお示しください。
小矢教育長答弁
(成果主義の問題点)
・経済産業省の「人材マネジメントに関する報告書(H18)」等によると、いわゆる「成果主義」は、組織目標よりも個人目標を重視する傾向や評価における短期性、結果主義と達成プロセス軽視、数値目標の過度の重視、達成しやすい目標を設定する傾向をもたらしているなど、問題点が多いとされています。
(教職員人事評価制度について)
・新たな教職員人事評価制度は、実績、能力ともに意欲や協調性、積極性といった取り組み姿勢なども評価し、適正に人事管理に反映させ、教職員の資質・能力の向上と学校組織の活性化を図るものです。
具体的には、@校長が示す学校経営方針にそって努力しているかA達成プロセスも含めた教職員の能力・実績B困難な業務への取り組みなどを評価し、複数年の評価をもとに長期的な視点で人材育成に役立てるものであり、民間で導入された「成果主義」とは異なる制度です。
再質問
・現行の評価制度との整合性が見えない
・現場の校長からの理解が得られていない
・非開示であるのにどこに透明性・客観性・納得性があるのか
・導入している大阪府の学校現場の実情(教職員の意欲の低下)
2.支援が必要な子どもたちや若者について
(1)
情緒障がい児短期治療施設について
支援が必要な子どもたちや若者について質問します。
私は、2007年第4回定例会で、虐待を受けたり問題行動を起こしたりする医療的治療が必要な子どものための情緒障がい児短期治療施設について質問しました。当時、大分県にはそのような施設がなく、熊本の「こどもLECセンター」や香川の「若竹学園」にお世話になっている実状がありました。ところが最近では、それらの施設では利用者が多くなり、他県の子どもを受入れできない状況になっていることをお聞きしました。厚生労働省の「子ども・子育て応援プラン」では、今年度までにすべての都道府県で設置をめざすとしています。当時の福祉保健部長からも「今後取り組むべき課題の一つであると認識しており、必要な調査・研究を行ってまいりたい。」との答弁をいただきましたが、その後、県としての取組状況をお聞かせください。
知事答弁
近年、保護者による虐待や学校における人間関係などにより精神的に不安定になり、精神的ケアを必要とする「情緒障がい児」が社会的な問題となっています。
いわゆる情短施設は、こうした子どもに対し、短期的に心理療法や生活指導を行うものですが、この施設が県内に設置されていないことから、受入可能な県外の情短施設や、県内の児童養護施設などに措置してきました。
しかし、これまで定員に余裕のあった県外の施設においては、児童虐待の全国的な増加などに伴い、本県児童の新たな受入が難しい状況になっています。
児童養護施設などでは、専門的な治療・支援に限界があり、また、受入児童の暴力や自傷行為など、顕著な不適応行動により他の入所児童にも大きな影響を及ぼしています。
こうしたことから、県としては早急に施設を県内に整備する必要があるとの認識のもとに、子どもの心のケアに関し十分な知識と経験を有する小児科医や精神科医の確保が適切に行われるよう、医療機関と密接に連携できる社会福祉法人などを対象に説明会を開催しました。
その結果、大分市内の社会福祉法人から整備の申し出があり、現在、施設機能、規模、立地場所などについて当該法人と協議をしながら、設置に向けた準備を進めているところです。県としても可能な限り支援してまいります。
(2)
自立援助ホーム(ふきのとう)の存続について
次に様々な事情で家庭を離れて生活する子どもたちの社会的自立を支援する自立援助ホームについてお聞きします。県内には5年前に大分市に設立された「ふきのとう」しかありませんが、この施設からこれまでに10名の若者が社会に羽ばたいていきました。しかしながら今年4月の児童福祉法の改正により、これまでの施設に対する定額補助制度から、20歳未満の入所人数に応じて運営費を算定する制度に変わりました。そのため、4、5月は財政的に危機的状況におかれ、現在は、女子も入れることで何とか運営費を確保している状況です。
これまで「ふきのとう」が行ってきた自立援助の実績からも、今の社会にはなくてはならない施設だということは、知事もご覧になってお分かりだと思います。
家庭的支援が望めず、厳しい環境の中にいる若者が20歳で独立して生活していくには、あまりにも厳しい世の中です。せめて22、3歳まで継続支援ができればとも考えますし、せめて1年間の救済措置は取れなかったのだろうかと4月当初の、本当に危うい状況の中で考えました。少子化対策課からも、いろいろなアドヴァイスや支援をしていただきましたが、今後も安定した運営ができるように「ふきのとう」の存続について県としての見解をお聞かせ下さい。
福祉保健部長答弁
(ふきのとうについて)
・ 自立援助ホーム「ふきのとう」は、16年9月に設置、県は、17年度から運営費の補助を行うとともに、18年度から新たに入居する児童が就職し、収入を得るまでの一定期間食費などの生活費を県単独で助成してきました。
(国の制度変更)
・ 児童福祉法の改正により、本年4月から、利用対象年齢が18歳未満から20歳未満に引き上げられ、月ごとの入居者数に応じた運営費補助の算定方式に変更されました。
・ 厳しい雇用情勢の中、児童養護施設などを退所した児童が直ちに自立することは容易ではなく、自立援助ホームの必要性は高いと認識しています。
(県の取り組み)
・ これまで「ふきのとう」の事業内容を広く関係団体に情報提供、児童相談所との連携強化を図ってきました。
・ 9月現在の入居者は5名で、4月1名より増加しましたが、今後とも、入居者数の状況を踏まえ、子どもたちが「我が家」と呼んでいる「ふきのとう」を引き続き支援してまいります。
認知症を抱える家族の課題について
最後に、認知症の家族を支える男性介護者の問題について質問します。
「認知症の人と家族の会」事務局長の、藤田淳子さんの報告によると男性介護者が年々増えているそうです。その割合は、今では介護を行う人の3割近くにのぼり、増加の一途をたどっているということです。核家族化の中で妻が病気になれば否応なしに夫やその子どもが看なければなりません。私は、家族の会のつどいに参加をしていますが、50代から80代の男性介護者が必ず4、5人参加されています。妻の介護を契機にそれを自分の仕事と定め、計画的に綿密にやっていらっしゃる方もいます。時には、介護の喜びを語られることもあります。その方々の介護の様子を聞きながら頭が下がると同時に胸が締め付けられる思いもしています。高齢の男性介護者が、まず一番に困ることは、料理だそうです。次に裁縫、掃除、洗濯、妻に何を着せたらよいのかわからない、何日も着替えてくれない、入浴や排泄介助も深刻な問題となっています。
男性にお世話をされることに抵抗感を持つ戦前生まれの女性にとっては、当然のことだと思います。
藤田さんによれば、1998年から2003年の6年間で、介護殺人は198件、加害者は、夫や息子などとなっており、男性によるものが4分の3を占めています。どうしてそうなるのか。男性が介護をするとなると、仕事を制約されたり辞めざるを得なくなることで経済的に行き詰まったり、介護への準備も技術もないまま、突然介護する立場に立たされ困るということも原因ではないかと思います。
家族の会では、「個々の事情に合わせたオーダーメイドの介護保険を」と訴えていますが、男性介護者を孤立させずに支えていく方策が早急に求められていると痛感しています。お考えをお聞かせください。
福祉保健部長答弁
(現状)
・ 国民生活基礎調査によると、全国における介護者のうち男性が占める割合は、16年の25.1%から、19年には28.1%と増加しています。
・ 背景には、核家族化の進行により、夫婦のみ世帯が増加しており、妻が要介護状態になった場合に、家事に不慣れな夫が介護を担うケースや、息子が仕事を離れて、親の介護を担うケースも増えています。
・ 19年度の厚生労働省調査によると、本県の介護者による高齢者虐待事例は134件で、加害者の62.7%が男性です。
(男性介護者教室)
・ 県では、本年度から男性を対象とした介護教室を開設し、介護に対する心構えや介護の基礎知識・技術、料理など男性のニーズに沿った研修を行っており、孤立しがちな男性介護者同士の交流の場を提供しています。
(シルバー110番)
・ 「シルバー110番」を社会福祉介護研修センターに設置しており、高齢者及びその家族などの抱える様々な心配や悩み事に対する相談に対応しているところです。
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