
29番県民クラブの平岩純子です。
昨今、世の中の動きはあまりにも早く、また想像を絶する悲惨な事件や事故を見聞きする中で、何を学び、どうすればいいのか時々立ちすくんでしまう自分がいます。しかし、私の周りには、受験競争に疲れ退学した子どもたち、つれあいと死に別れ寂しさをこらえて生きている人、夫からのDVに苦しんでいる人、病気と闘いながら懸命に今を生きている人、兄弟や家族で支え合いながら認知症と向き合っている人など、厳しい状況の中で、前向きに生活している人たちがいます。
前回に引き続いて一般質問の機会をいただきましたので、この3ヶ月に出会い学ばせていただいたことを中心に質問をします。知事及び執行部の皆さんの真摯な答弁をお願いいたします。
また、本日、わざわざ傍聴に来てくださった皆さまに心からお礼を申し上げます。
1 若者の就労について
初めに若者の就労について質問します。1月24日の新聞に高松市のインターネットカフェに泊り込んでいた男性が23日間の宿泊料金を払わずに逮捕されたという記事が載りました。所持金は僅か百数十円でした。記事だけ読むと「何とふとどきな」と思ってしまいますが、現代のニート・フリーターと呼ばれる人たちの置かれている現状が端的に現れていると感じました。また、1月に大分市内で深夜火災が発生し、3歳の子どもが煙を吸っていましたが無事救出されました。両親はどこにいたかというと仕事に出かけていて留守でした。アメリカなら幼児虐待ですぐに逮捕されます。「なんという親だ」と思いましたが、「若い二人にはそのような働き口しかなかったとしたら」と思うと現実を重く受け止めなければならないと考えます。
大分県の2007年の有効求人倍率は、1.03倍で前年を0.04ポイント上回っています。今年の春、職業系の高校を卒業予定のかつて一緒に勉強した子どもたちも仕事が決まり、早速、自動車学校に通い始めました。彼らは未来の人生設計を夢に描き意気揚々としています。
しかし、冒頭に述べたような厳しい環境で仕事をしている若者が大勢います。パート、請負、派遣など正社員ではない働き方をする人は全国で約1600万人。24歳以下では、二人に一人が非正規労働者です。どんなにがんばってもなかなか正社員にはなれません。どうしてなのか。それは、1995年に日経連が発表した「新時代の『日本的経営』」に起因しています。そこでは、バブル崩壊後の日本経済の停滞に鑑み、総人件費抑制とその手段として雇用の階層化を提言しています。企業は、従業員を@長期蓄積能力活用型グループA高度専門能力活用型グループB雇用柔軟型グループの三通りに分類し、人事戦略を展開し、利潤追求をしてきました。正社員の数を極端に少なくし、賃金の安い、必要な時だけ雇用し、いらなくなったらいつでも首を切ることができるこの雇用柔軟型グループに多くの若者が集約され激安労働力を提供してきました。さらに労働法制の規制緩和がそれに拍車をかけてきました。こうした多くの若者は「やる気がない」のでも「能力がない」のでもなく社会の仕組みの中で作られてきたのではないでしょうか。
最低賃金で一日8時間、月に22日働いても手取りが10数万円。その中から家賃、光熱費、食費すべてをまかなっているワーキングプアと呼ばれる層が激増しています。親元にいる人は、まだ寝る所と食べることが確保されセイフティーネットは守られています。しかし、親に介護が必要になった時、親亡き後はたちまち路上生活者に転落してしまう危険性があります。
就職氷河期時代に学校を卒業した若者も30代半ばを迎えています。人間としての尊厳を保ちながら「生きたい」と願っている人たちを 県はどのように正規雇用に結び付けていこうとするのか考えをお示しください。
商工労働部長答弁
近年、若者の雇用情勢は、総じて改善しているものの、フリーターなどの正規雇用への移行は依然として厳しい状況にあります。
このような若者が適正や希望に応じて就職が果たせるよう、ジョブカフェにおいては、自信や意欲を高めるカウンセリングなどにより就職へと導いています。例えば、自分をアピールすることが苦手でアルバイトを転々としていた若者が、ジョブカフェの相談員による親身で粘り強いカウンセリングなどを通じて、本来持っていた適性や強みを発見し、自分を積極的にアピールすることで、正社員として就職を勝ち取った事例もあります。
さらに、ジョブカフェでは企業情報の提供をはじめ就職スキルを身に付けるためのセミナーなど、個々の状況に応じたきめ細かな就業支援をワンストップで行っており、これまでに6千名を越える若者が就職を果たしています。
就職氷河期を経験した年長フリーターに対しては、本年度からジョブカフェでの対象年齢も30歳未満から35歳未満に引き上げたところであり、トライアル雇用や来年度から導入されるジョブ・カード制度など、国の事業も有効に活用しながら、引き続き粘り強く支援を行っていきます。
また、もとより職業能力の形成も重要と考えており、若年求職者向けに、コミュニケーション能力向上などのセミナーと1か月の職業訓練を組み合わせた新しい支援プログラムにも新年度から取り組むこととしています。
本県の将来を担う若者が、希望に満ちた職業生活を送れるよう、今後とも、施策を推進してまいります。
2 女性のチャレンジ支援について
次に、女性のチャレンジ支援について質問します。
20代後半から30代前半にかけて、女性の就業率が大きく下がることいわゆるM字型カーブを描くことが、諸外国と比較した時の日本の特徴です。
「男は仕事、女は家庭」というあり方は、右肩上がりの高度経済成長期にはそれなりに機能してきたかもしれません。しかし、今や男性世帯主の収入だけに家族が依存して生活を営むことができる家庭はごく僅かです。そこで結婚・出産・育児でいったんリタイアした女性が子育てが一段落した後、自己実現のためにも再就職しようと願いますが、その道は厳しく、多くがそれまで身に付けた知識や技能を生かすことができずにパート労働者として働くことになります。こうした女性の働き方は、社会にとっても大きなマイナスです。人口の半分を占める女性の才能を発揮し育てようとする社会が求められています。女性の意欲と能力を十分に発揮することができる環境づくりが必要です。女性の就業希望者の多くは、子育て中または子育て後の人たちです。
大分県でも、30代前半の女性の有業率は、57.6パーセントで九州では2番目に低く、まだまだ継続雇用が困難な環境にあります。
県では、女性のチャレンジ支援プランを策定中と伺っていますが、どのような姿をめざしているのでしょうか。また、プランの内容と今後の具体的な取り組みについてお聞かせください。
知事答弁
少子高齢化や過疎化の進展に伴う人口減少により、地域活力の低下が懸念され、また、企業誘致に伴い人材需要が高まっています。こうした中、豊かな社会を創造していくためには、女性が、個性と能力を十分発揮し、男性とともに社会を支えていく必要があります。このため、民間有識者などで構成する「女性のチャレンジ支援プラン策定委員会」を設置し、様々な分野へのチャレンジを総合的に支援するためのプランを策定しています。
プランでは、「女性が輝く活力ある大分県の実現」を目標に掲げ、職場では、家庭生活と両立できる環境が整い、事業の企画や経営に女性の意見が充分に反映される社会を、また、地域では、個人の考え方や意見が尊重され、多くの女性が、豊かで住みよい地域づくりに向けて活躍していけるような社会をめざしていきます。
このため、次の4つの柱を設け、様々な支援を行うことにしています。
第一は、「キャリアアップ支援」です。方針決定過程へのいっそうの参画を図るため、審議会委員などへの就任や役職・管理職への登用を支援していきます。
第二は、「再就業支援」です。結婚や出産で離職した女性に対して、再就職や起業に向けた支援を行います。多くの女性が、再び働きたいけれども、家庭や子どものことが気になり、なかなか第一歩が踏み出せないでいるという調査結果もあります。このため、アイネスの中に、気軽に相談できる専門スペースや子どものためのコーナーを設置するとともに、託児サービスの日数を増やします。このほか、女性が働きやすい仕事づくりも大事と考え、ITを活用した在宅就業支援講座をNPOと協働で実施しております。受講後は、仕事が斡旋されるという、他県には例を見ないモデルをつくっていることから、受講希望者が毎回定員を上回る状況であり、今後は、こうした取り組みを県下各地域に広げたいと思っています。さらに、職業訓練期間中の保育料助成対象を拡大するとともに、訓練メニューを拡充します。
第三は、「地域活動支援」です。策定委員会では、「就業だけでなく、地域活動を通じて自己実現を目指す女性への支援にも力を入れる必要がある。」というご意見をいただいたところです。私も、地域が元気になるためには、女性が力を発揮することが大切であると考えています。
第四は、「チャレンジのための環境作り」です。女性が結婚や出産後も継続して就業できるよう、保育サービスの充実や放課後児童クラブへの支援に努めます。また、女性が働きやすい職場環境づくりを進めるため、企業の経営者などを対象とした啓発セミナーを県下各地域で開催します。
3 社会福祉センターについて
次に社会福祉センターの見直しについて質問します。
「社会福祉センターあり方検討委員会」は、センターを構成する各相談機関が専門性や機能を最大限発揮できるよう、集中的な検討会議を開き、1月に検討結果を知事に報告しました。
「生活者の視点に立った相談機関をめざして」と表紙に書かれたその報告書を読ませていただきました。そして、今、社会福祉センターに求められていることが網羅された提言だと感心いたしました。
例えば、・相談機能充実のため相談者を取り巻く環境、家族、社会に対しても働きかけを行うこと、・相談機関としての機能充実のため専門性を持った人を外部から登用すること、さらに・職員が誇りと生きがいを持って、燃え尽きず、継続的に能力を発揮できるよう魅力ある職場づくりや、人材の掘り起こしなど、中長期的な視点に立って継続的に人材育成に取り組むこと、としている点です。
加えて、これまで支援策が講じられていなかった高次脳機能障がいや発達障がいへの支援や情緒障がい児短期治療施設の設置へも目が向けられています。DV被害者や同伴家族に対し、専門スタッフの適切な配置や研修機会の充実も必要との提言もされ、私は、充実した報告だと受け止めました。
そこで質問です。
1点目として、知事は、この検討委員会の提言をどう受け止められていますか。検討委員会は、築後約40年が経過した建物の危険性も提言しています。建て替え計画をどのように考えているのかお聞かせください。
2点目は、現在も昼夜を分かたず、ストレスを抱えながら燃え尽きる直前の職員の方がいるかもしれません。専門職の採用も急務だと考えますが、人的・組織的な体制強化をどう図っていくのでしょうか。お考えをお聞かせください。
知事答弁 (社会福祉センターについて)
社会福祉センターは、児童相談、婦人相談、身体・知的障がい者の更生相談など、福祉における中核的な相談支援機関として、大きな役割を果たしてきました。
しかしながら、昨今、家庭や地域の養育力が低下し、また、福祉サービスの提供が市町村に一元化される中で、センターに求められる役割が大きく変化してきております。
そのため、外部の専門家や利用者などから成る「社会福祉センターあり方検討委員会」を設置し、専門的かつ幅広い観点から論議をしていただき、先般報告を受けたところです。
本報告は、県民の視点に立って、相談機能のあり方や精神保健福祉センターも含めた組織体制の見直し、相談機関を支える人材の育成・確保なども提言が盛り込まれており、今後の相談支援機関のあり方を決める上で、よるべき指針になるものと受け止めています。
特に、相談機能とは何かという基本的な考え方では、相談に来られる方は具体的な課題を抱えているだけでなく、あわせて、地域で生活されている方でもあるという認識を持ち、将来を見通して幅広い立場で支援することの大切さや、相談者本人をはじめ家族や周囲の人たちの力を引き出すことの必要性など、示唆に富んだ提言であると思います。
これまでも、ケースワーカーなど専門スタッフの増員や一時保護所の定員増など、機能強化に努めてきましたが、今後は、この報告を踏まえ、問題解決機能や関係機関との連携・支援機能など、より専門性の高い相談機関の構成をめざします。
そこで、まず、組織体制を見直し、いずれも仮称ですが、「障がい者総合相談支援センター」と「こども家庭相談支援センター」を新たに整備し、それぞれ機能強化を図ります。
「障がい者総合相談支援センター」では、身体、知的、精神の3障がいの相談機関を一元化することにより、障がい者や家族が抱える様々な課題にワンストップで対応するとともに、これまで制度の谷間にあった発達障がいや高次脳機能障がいを含め、従来の枠組を超えた総合的な支援を行います。
また、「こども家庭相談支援センター」においては、児童相談所と婦人相談所がより一層連携を密にし、児童虐待やドメスティック・バイオレンスなどにおける被害者支援や相談支援の体制を強化するとともに、家族の再構築など、子ども・家族に対する支援を充実します。
次に、建て替え計画についてですが、現在の社会福祉センターは、老朽化が著しく、セキュリティ及びプライバシーの確保や、バリアフリーへの対応が不十分であり、改築が急務となっています。そこで、入所者や来所者の利便性を考慮し、早期に完成させるため、本年度から設計に着手することとし、22年4月オープンをめざします。
相談機関で、一番大切なのは相談機能であり、それを支えるのは「人」です。
今回の報告を踏まえ、施設整備に併せ、機能強化を図るとともに人材の育成・確保にも努め、これまで以上に心の通った温もりのある相談機関となるよう、努めてまいります。
福祉保健部長答弁 (社会福祉センターの組織強化について)
これまでも、保育士、教育職など必要に応じて専門職を採用しており、さらに、18年度からは福祉エキスパートとして庁内から幅広く優秀な人材を募り、職員研修を通じて能力の向上を図るなど、本県福祉行政を担う職員の育成に努めているところです。
社会福祉センターを「障がい者総合相談支援センター」と「こども家庭相談支援センター」に再編整備するにあたり、更なる相談支援機能の強化を図るためには、人的・組織的な体制の充実が課題であると考えています。
そのため、昨年策定した「新大分県人材育成方針」を踏まえ、福祉分野では、特に、県民の目線に立った、人間味溢れ志の高い福祉マインドを備えた人材の育成を基本理念に、高度な専門性をあわせ持った職員の育成をめざしてまいります。
来年度からは、民間福祉施設での長期研修を実施するほか、必要に応じて任期付職員採用制度を活用し、外部から人材を登用するなど、優秀な人材確保に努めます。
また、「あり方検討委員会」の報告を踏まえ、教育・訓練・指導といったスーパーバイズ機能を強化することなどにより、職員が高いモチベーションを維持し、その専門的能力を発揮できる組織体制を構築していきたいと考えています。

4 教育について
最後に、教育問題について質問します。
来年度予算案に中学校1年生の30人学級の予算が計上されています。子どもたちの実情を理解し、力強く推し進めてくださった知事及び教育委員会に心よりお礼申し上げます。該当校では、「教室が足りない」と嬉しい悲鳴が聞こえてきます。
(1)義務教育について
それでは質問に入ります。初めは、義務教育についてです。一昔前まで、義務教育でも高校教育でも地域間格差は殆どありませんでした。子どもたちは伸び伸びと日が暮れるまで遊び、けんかもしながら友情や仲間意識や人の痛みを体で覚えました。勤勉や努力、真面目、誠実を学びながら年上の人を敬うことや年下の人を守ることを自然に身に付け、大きくなっていきました。中学生も高校生もよく本を読み、自分たちの生活圏外にある宇宙や死について語り合っていました。子どもはいつから今のように追い立てられるようになったのでしょうか。どうして短い間に目に見える成果を求められるようになったのでしょうか。
国際基督教大学の藤田英典教授は言います。「日本の教育は、いま、重大な危機に直面している。この危機は、日本の教育が時代遅れになっているからでもなければ、日本の学校や教師に特別に重大な問題があるからでもない。そうではなく、合理性のない矛盾に満ちた改革が次々に進められてきたために起こっているのだ。『改革すればよくなる』『改革しなければよくならない』といった改革幻想に取り憑かれ、改革の結果どうなるのか、本当によくなるのか、むしろ悪くなることはないのか、といったことはすべて無視して、合理性のないゆがんだ改革、矛盾に満ちた改革を矢継ぎ早に推し進めたために起こっているのだ」と。この改革は1984年の臨教審から始まり95年の経済同友会の「21世紀の学校構想」が後押しをしています。そして小泉・安倍政権下で行われてきた改革。このことを語りだすと時間がなくなりますのでもう述べません。ただひとついえることは、どんなに改革が叫ばれても学校改革は、学校の内側から遂行されない限り、実りある成果をもたらすことはできないということです。
OECDが発表したPISAの結果がよく持ち出されます。問題にするのは、日本の子どもたちが「科学への興味・関心や科学の楽しさを感じている割合が低いこと。学習への意欲が低いこと。思考力の低下」だと捉えています。PISAの定義する学力とは、知識量や技能の正確さを測るものではなく、知識や技能を活用するプロセスを測定するものです。そんな中、文部科学省は学習指導要領の改訂を行いました。今後、授業時数と教える内容が増えることになります。改革の嵐の中で「考えること」ができなくなっている子どもたちにかつての「詰め込み教育」が復活するのではないかと危機感を持っています。
子どもたちが無意味な競争を強いられずに自分の頭で考えるという習慣や力をつける、そして生き生きと活動できる教育環境をどうつくっていくのでしょうか。生きる力をつけさせるために教職員が子どもたちとしっかり向き合い、誠実に教育実践できる学校をどう保障していくのでしょうか。教育委員会の方針をお示しください。
教育長答弁 (義務教育について)
義務教育の目的は、児童生徒一人ひとりが人格の完成をめざし、個人として自立し、それぞれの個性を伸ばし、その可能性を開花させること、そして、どのような道に進んでも自らの人生を幸せに送ることができる基礎を培うことにあると考えます。
そのため、県教育委員会では指導方針に、「確かな学力育成と個性・創造性の伸長」を掲げ、子どもたちの基礎・基本の確実な習得や学ぶ意欲の向上、学習習慣の確立などに努めてまいります。
具体的には、学び方や調べ学習などに関する個に応じた指導、予習・復習の必要性を実感させる教材の工夫改善などにより自ら学ぶ態度をはぐくむ指導、教えて考えさせる指導など、子どもたちの目線に立った授業作りを支援してまいります。
また、教職員が子どもたちにしっかり向き合う時間を拡充するためには、校務分掌の均槙化や構内外の各種会議の精選なども含めた勤務環境整備とともに、地域全体で学校を支援する体制の構築などについて幅広く検討する必要があります。
このため、20年度から新たに、県内141のうち57の中学校区において、学校教育などに地域人材を活用するなど、地域全体で学校を支援していく体制を整備することとしています。
(2)高等学校後期再編計画について
次に高等学校後期再編計画について質問します。
ア 高等学校教育の目的について
1月9日に発表された高校後期再編計画に対して、いくつもの地域で反対運動が起こり、高校存続に向けた要望や質問書が出されたり、集会が開かれたりしています。統合や廃止が打ち出された高校に通う生徒やこれから受験しようとする生徒、家族に与えた心理的動揺は決して小さくはありません。
2004年に高校改革プランの中間まとめが出された後、数々の問題点が指摘をされました。特に全県一区に対しては20万筆に及ぶ反対署名、見直しを求めるパブリックコメント、29もの市町村議会が意見書を提出しましたが、県教委は、それを尊重しない形で「素案」を発表し、計画は進められてきました。
今回もまた、県民の思いや願いを無視した形で計画が進められることがあってはならないと憤りを持って質問します。
私にはどうしても理解できないことがあります。それは、小規模校が認められないということです。県教委は、切磋琢磨する力をつけさせるため。一定の人数がいなければ、生徒のニーズに応じた講座数や部活動を組むことができないから。と言われますが、例えば、今回廃校にあげられた由布高校では、その環境に埋没せず、生徒たちは教職員の支えと仲間の連帯の中で3年間の間に成長し自信をつけています。そこで学んだことを誇りに卒業していきます。学力だけ同レベルの生徒だけが大人数集まり、受験に向けてまっしぐらに邁進させることだけが高校教育の目的ではないのではありませんか。お考えをお聞かせください。
イ 再編計画と地域再生について
教育委員会は、高校再編のなかで、普通化の通学区を12分割区から6分割区にそして、全県一区にしてきました。謳い文句は、「県内どこに住んでいても行きたい高校を受けることができる教育の機会均等」です。しかし、どこの高校でも受けられる子どもは、限られた子どもたちだけでした。そして、ここ数年の間に大分市への一極集中が起こってしまいました。今年の公立高校入試第1次選抜の志願状況(2月28日)でも、大分市内にある高校で600人を超える志願者が不合格になります。逆に過疎化の進む地域の高校では、定員割れが起こっています。そのことの指摘が高まる中、今度は、「地域の子どもは地域で学べるように」と謳い始めました。地域の学校では、校長を始め教職員が血眼になって子どもたちを鍛え、県教委に認められる特色ある学校づくりや進学指導に追われてきました。そんなことに対する評価もなく、成果も見ずに、地域の学校の統合と廃止が打ち出されているのです。あまりにも理不尽なやり方だと思わざるを得ません。県が推し進めようとしている地域再生に逆行しているのがこの再編計画ではないでしょうか。ご答弁をお願いします。
ウ 地域意見の反映について
また、県教委は、「今回の素案はあくまでもたたき台であり、さまざまな立場の意見を聞き、変えるべきところは変える」とコメントしています。1月に6回の地域別懇話会が持たれました。存続を訴える意見が多く出されたと聞いていますが、2月5日の合同新聞には、意見は聞くが、素案ありきとする教育委員会の姿勢に参加者からの不満や不安が多かったと書かれていました。中間まとめを「4月をめど」に発表するといわれていますが、4月までに地域別懇話会は開かれないことになっています。たたき台と言われていますが、誰がどこでたたくのでしょうか。今、行なわれている「地域別説明会」は質問をして、県教委が意見を聞く場です。懇話会の委員がたたく場ではありません。本当にたたき台とするならば、中間まとめまでに地域で十分にたたく作業が必要です。地域に任せて何度も地域別懇話会を開き、地域としての意見を出させるべきだと考えます。そうでなければ地域別懇話会は聞くふりをしているだけと言われても仕方ありません。地域の意見を十分聞いて、それを中間まとめに反映させるべきだと考えますが、納得のいく答弁をお願いします。
教育長答弁 (高校教育について)
高等学校における教育は、義務教育の成果をさらに発展拡充させて、豊かな人間性、創造性及び健やかな身体を養い、個性に応じて将来の進路を決定させ、専門的な知識、技術及び技能を習得させるとともに、社会の発展に寄与する態度を養うことなどを目標としています。
こうした目標は、いわゆる教科・科目の勉強だけでなく、文化祭や体育大会、部活動やボランティア活動など、様々な教育活動を通じて達成されるものであります。
厳しい現実の社会を目前にした高校生が、多くの生徒と出会い、互いに切磋琢磨しながら、社会性や自主性、協調性といったこれからの社会を生きていくための資質を身に付けることが必要です。また、専門の教員が揃った中で、生徒一人ひとりの可能性を十分に伸ばすことや、多様化した子どもたちに柔軟に対応することも必要です。
従って、教育活動を効果的に行うためにも、学校を適正規模にして、充実した教育環境を整えることが重要であると考えています。
教育長答弁 (高校の後期再編整備計画について)
地域にとって学校はとても大切であると考えていますが、地域の子どもたちが少なくなっているという現実の中で、子どもたちの将来にとって真に望ましい学校づくりはどうあるべきかという観点から、十分に検討したうえで素案をお示ししているところです。
高校時代は将来の進路を決め、大人へと成長していく最も多感で大切な青春時代であり、この時期に多くの友人や教師と出会い、教科・科目の学習や部活動などにおいて、様々な活動のできる充実した教育環境を整備することが大切であります。
そのためにも適正規模の高校にして、先ほど申し上げた教育目標を達成できるようにすることが重要であると考えています。
今後とも、積極的に地域に出向いて教育委員会の考え方を丁寧に説明し、地域の実情などをお伺いしながら、再編整備を進めてまいります。
教育長答弁 (素案に対する地域意見について)
1月9日の「第2回高等学校再編整備懇話会」で素案を示した際に、検討内容が地域個別の内容となることから、早急に地域で説明して欲しいとのご意見をいただき、1月16日の日田・玖珠地域を皮切りに、県内6か所で地域別懇話会を実施しました。
学校の存続や新しい学校の設置学科など、様々なご意見やご要望をいただきました。また、引き続き地元の皆さまからのご意見などをお聞きするため、PTAなどからの求めに応じて地域別説明会を重ねています。
今後とも、地域別説明会を重ねる中で多くの方々から様々なご意見をいただき、十分に論議したうえで、「中間まとめ」を策定してまいりたいと考えています。
(3)性教育について
次に人権の視点に立って、性の教育について質問します。
20年前のことです。山間にある小学校で、運動会に向けて練習が行われていました。その練習が終わり、解放された子どもたちはのどの渇きを癒すため水のみ場へと走っていきました。その時、男の子たちがこう叫びました。「どけどけ!男がさきじゃ!女はあとじゃ!」この言葉を聞いた女性教員たちは慄然としました。そして、子どもたちの生活のどこからあの言葉が出てきたのか考えるようになりました。当時は、学校生活の中で整列も机の並び方も靴箱も男の子と女の子は区別されていました。入学式、運動会、卒業式も男の子が先に入場し女の子が後からでした。生活の中から当たり前に出てきた言葉「男が先。女は後。」自分たちの実践は良かったのだろうか。教師たちの振り返りが続きました。そして性別による決め付けをやめて、一人ひとりの違いと個性を尊重する教育の必要性から意識・慣習の見直し、一人ひとりが自分のからだを大切にし、個性としての性を尊重しあい、偏ったり誤ったりした性情報を見極める力をつけるため性をどうとらえ、どう教えるか、固定的な家事労働のあり方や家族観を問い直し、生活の主体者として自立する力をのばす労働・家族をどう教えるかの3つの視点で子どもたちと創りあげる実践が始まりました。これが私の性教育の始まりです。
性教育は、きちんと発達段階を踏まえて行わなければなりません。しかし、残念なことに学校で十分にこの教育がなされているとは言いがたい状況です。なぜなら教師自身が正面から性を学んだ経験がありません。性教育にはしっかりとした知識と力量が求められるからです。学校では、何年生に何時間という形で性について学ぶ時間が保障されていません。他に学習することが多すぎて性教育まで行き着かないというのが実情です。性は学んで育つものでなければなりませんが多くの子どもたちは、マンガ、テレビ、ビデオなどあふれるメディアや友人から興味本位な性の知識を得ているという調査結果が出ています。子どもたちが無防備な状態で放置されていることがもっとも危険なことだと思います。
サークルで女子大生をレイプした大学生や地位を利用して部下にセクハラを繰り返していた大学教授。こんな事件を起こす彼らは、性を下半身のもの、人格外のものととらえ、その年になるまで学習する機会がなかったのでしょう。
自分の体や異性の体の違いを知る。人に見せてはいけない、触られてもいけないプライベートゾーンがあることを知り清潔に保つ。成長に伴う心とからだの変化を学ぶ。受精、妊娠、出産、誕生のしくみからいのちの大切さを学び、自分がどんなに大切な存在として生まれてきたかを知り、自己を肯定する心を育てる。いやだと言う勇気。エイズの学習。予定にない妊娠や性感染症のリスク。さまざまな家族があること。・・・国際的な動きからいっても、特に健康という観点からの性についての学習は、権利として位置づけられています。性に関する科学的な知識や学習が人権の視点からすべての子どもたちに必要です。性教育はいのちの教育です。
教育委員会として、性教育をどう指導し、学習保障できるのかその支援の方法についてお示しください。
教育長答弁
学校における性教育は、生命尊重・人間尊重・男女平等の精神を基礎とし、児童生徒の発達段階に応じて、性に関する科学的な知識を正しく理解させるとともに、これに基づいた適切な意思決定や行動選択ができることをねらいとして、体育科、保健体育、特別活動、道徳などを中心に学校教育活動全体を通じ指導することとしています。
指導に際しては、学習指導要領に則り、@学校の教育課程に位置づけて、組織的・計画的に行うこと、A教職員の共通理解を図ること、B保護者や地域の理解の得られる内容とすること、C児童生徒の個人差に応じた指導を行うことなどに留意して実施するよう、県教育委員会として県立学校及び市町村教育委員会を指導してまいりました。
今年度行った性に関する指導実態調査では、全ての小・中・高等学校で性教育が実施されており、児童生徒の発達段階に応じた計画的な指導が行われていると報告されています。
また、県教育委員会では、指導者の資質向上と指導改善を図るため、毎年エイズを含む性に関する指導についての研修会を開催するとともに、文部科学省や教員研修センターが主催する研修会にも現場教職員を毎年派遣し、指導者の育成にも努めているところです。
さらに、学校の要望に応じて産婦人科医や保健所職員などを派遣するなど、各学校の性教育の充実に努めております。
今後とも研修のあり方や地域の専門家との連携を工夫するなど、各学校の性教育を支援してまいります。
(4)特別支援教育について
最後に特別支援教育について質問します。知事は、特別支援学校に出向かれ、子どもたちや保護者、教職員の声を直接聞いていただいていることに感謝しています。4月の大分養護学校の高等部開設をどれだけ多くの人が待ち望んでいたことでしょう。
今後、分校設置やスクールバスの増便、特別支援学校のセンター的役割の充実、幼、小、中、高に通う特別な配慮が必要な児童・生徒への支援、そして教職員の研修の充実のためには大きな財源が必要になってくると思われます。知事は特別支援教育の充実に向けてどのようなお考えを持っていらっしゃるのかお聞かせください。
知事答弁
子どもの持てる力を思う存分に発揮できるよう、学校や地域の環境を整えていくことは大変重要であります。
特に、障がいのある子どもの育成においては、身近な地域で安心して自立した生活を送りたいという、誰もが等しく抱く願いが実現されるよう、着実に支援を重ねることが重要であり、特別支援教育の果たす役割は大きいものと考えています。
私は、いくつかの特別支援学校を訪問し、子どもたちに接してきましたが、ひたむきにがんばる子どもたちや、その子どもたちを一生懸命に支える先生方の姿を目の当たりにして、改めてその思いを深くしました。
これまで、特別支援学校の長時間通学の解消を目的として、17年度から佐伯養護学校など4校に高等部分教室を設置してきましたが、本年4月からは、大分市東部地区の方々の悲願であった大分養護学校高等部を開設します。
現在、教育委員会において、「大分県特別支援教育推進計画」を策定していますが、中津市への宇佐養護学校分校の設置に向けた施設整備や日田養護学校など3校へのスクールバスの増便については、その緊急性から、20年度予算に盛り込んだところであります。
推進計画は、教職員の資質向上をはじめ、特別支援教育を一層充実する内容になると伺っていますが、計画推進にあたっての財政上の対応については、教育委員会と十分協議してまいりたいと考えております。
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