SA-81 真空管アンプの改造

1. 7591へ交換

20年以上前になりますが、スーパーの不要品交換コーナーで、古い真空管アンプが売っていました。

電源スイッチが入りっぱなしで切れないという故障だということで、800円でした。

買ってきて、音を出してみると、高域が全然出ていません。真空管がボケているようです。

早速、秋葉原で、もともとついていたマグノーバル管7868を探したのですが、無いとのことで、

GT管7591を2ペアと、ドライバ管6AN8を調達して差し換えてみると、高音が出るようになりました。

しかし、時々、何か「ピィーン、ピィーン」という音がします。

真空管ラジオとかにはよくある音なんですが、オーディオアンプでこれはなんなんでしょうか。

ものしりな方に聞くと、「6AN8は新品でもそういう音がするんだよね...」ということで、

5極管部が鳴くのだそうで...なんともはや...

もともとの回路は、アルテック型の回路構成で、初段の5極管部でゲインを稼いで、次段3極管部でPK分割、

終段はAB級固定バイアスです。


2. 初段を12AX7へ

6AN8が雑音の原因だという情報がありましたので、改造してみます。

通常、ミュラード型は、3段増幅で、ドライバ管は2段必要です。

MT管をあと2本増やすのは、めんどくさいので、真空管式ギターアンプによく使われる、

簡易ミュラード型の構成を採用します。下の回路図のように改造しました。この構成ならドライバ管が一本ですみます。

マーシャルギターアンプの回路を参考に、初段を12AX7、終段は、そのまま7591Aを使います。

音は、そこそこふつうの真空管アンプです。ピィーンという雑音は無くなりました。

やはりこのノイズは6AN8の問題のようです。

構成のせいか、ほんとにギターアンプのような音がする気がします。

中音域がはり出しているカマボコ型な感じの音です。

その当時使っていたBETA8バックロードなんてスピーカにはベストマッチです。

聞きやすくて、暖かい感じの音なので、冬向きAMPでした。


3. 6GL7の採用、3段差動アンプへ

10年程度、冬だけ使用していましたが、ついに左右の音量バランスが悪くなってしまいました。

終段管7591Aの1本がプレート電流が少なくてボケてしまったようです。

そこで、7591を調達しようとしましたが、オリジナルメーカーの真空管は、なんかとてつもなく高くなっていました。

世の中は、真空管アンプブームなんだそうで、昔のようなペアで2〜3千円なんてのは夢のような話です。

現在製造している球はどう見てもオリジナルのより大幅に外形が大きくて、シャーシにあたるか、

上蓋にあたるかしてしまいそうですので、搭載できなさそうです。

そういうことで、7591の交換は諦めて、安い出力管を探して、回路を作りなおすことにしました。

知り合いになった人に聞くと、全段差動アンプなるものがよさそうな感じです。

ぺるけ氏の「情熱の真空管アンプ」という本を買ってきて情報収集してみると、

TVの垂直増幅3極管がコンパクトで安いようです。

7591のヒーター電力と同じくらいで、大きさが同じくらいの物を探すと、

6AH4GT,6CK4,6EM7,6GL7 あたりが使えそうなかんじです。

この中で一番安かった 6GL7を海外通販で4本調達しました。

比較のためにアンプに刺してみました。左から水平出力管25CD6GB , 複合管6GL7 , 7591Aです。

回路は、初段(6DJ8)と2段(6GL7第1ユニット)は直結の全段差動構成になっています。

3段化する前に、6GL7のみの2段差動でやってみましたが、音がカマボコな感じがして、

なおかつ、ボリュームをかなり上げないと同じ音量になりません。

ゲインが足りないということで、手持ちの6DJ8を初段に追加しました。

ところが、数MHzで寄生発振がオシロ観測で見えましたので、対策として、Cfを150pFにしました。

オリジナルの全段差動アンプと違い、定電流回路は入れていません。初段、2段目に定電流ダイオードを

入れていたのですが、音は綺麗ですが、元気がない感じがしましたので、抵抗に交換しました。

少し、音が前に出てきた感じです。

初段と2段目を直結していますので、安定するまで30分程度かかります。

これはなんとかしたいので、今後の課題です。

特性は、徳島OFFのときにUMETEC氏に計測してもらいました。20Hz〜20kHzは平坦です。DFは10〜11程度でした。

左右差がありますが、可聴帯ではありませんので、あまり影響ないようです。

音質は、「スムーズな音だ」「なんか妙にすっきりしている」というような評をいだだいたと記憶していますが、

ほとんどはボロボロな外観についてのコメントだったような気がします。

見た目は、「古い真空管アンプ」ですからね。

私自身としては、回路方式でこんなに音が変化するものかとびっくりしています。

出力は5W+5W程度で小さいですが、テレビの音を出している分には、何も問題ありません。

ちゃんと高域まで出ていますし、古い真空管アンプのモコモコした音でもなく、

トランジスタアンプのねっとりした感じもなく、軽やかで柔らかい感じの聴きやすい音です。

また、6GL7がオーディオ管ではないにもかかわらず、意外と素直な音であることも、収穫でした。


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