25CD6GB差動アンプの製作

構想

SA-81の改造で、3段差動アンプは、かなり良い音が出ることがわかりました。

ちゃんとしたアンプを作ってみたいのですが、お金をかけて良い音が出るのも当たり前なので、

なるべく安くあげる poor Audio を目指して部品を集めてみます。

安い出力管としては、TV球である水平偏向出力管がよさそうです。25CD6GBを知り合いから頂きましたので、

これを使ったアンプを作ってみたいと思います。

昔、拾ってきた25E5でアンプを作って、プレートを真っ赤にして、失敗してしまったこともあるので、

いつか水平管でちゃんとしたアンプを作ってみたかったというのもあります。


■ 設計

シャーシは、ぺるけ標準シャーシを使うことにしました。

私のことですから、シャーシ加工がめんどくさくて、製作になかなか取りかからないかもしれません。

ちゃんとしたシャーシがあれば、そういう心理的なハードルが低くなるような気がします。

出力トランスは、ちょろQです。1次側が12kですので、ロードラインが寝てしまいますが、

どのみち出力を出せるトランスではありませんので、目一杯 30mA×2を流して、4W + 4W程度の

出力を目標にします。


■ 製作

年末に標準シャーシが到着しましたので、電源部から作っていきます。

電源トランスは、部品箱の底にころがっていた VF-100(VFET用?)を使います。

AC側は、110Vタップに接続し、2次側の電圧を落としておきます。

50V-0-50Vの巻き線を倍電圧整流して、整流直後ではDC240Vがえられますが、

MOSFETのレギュレータを2段用意して、B電圧 210Vと180Vを取り出しています。

レギュレータのMOSFETのドレイン側に33Ωを入れておきます。

当初これを入れていなくて、電源ON時に、コンデンサのチャージ電流でMOSFETを破壊してしまいました。

スイッチング用のMOSFETでON抵抗が低い(0.8Ω)ため、過大なラッシュ電流が流れるようです。

電源部の組み立てがおわったら、左側chのみ、入力側から一段ずつ順次組み立てて様子を見ながら進めます。

ヒーターは、トランスからAC25Vを供給していますので、終段は2本だけでも動作可能です。

初段管12SC7はヒーター電圧が12.6Vなので、左右の2本を直列にして、AC25Vにつないでいます。

アンプ部は、特に事故もおこらず、順調に組み上がりました。

片側が組み上がりましたので、通電してみます。電源トランスがでかくて、トッププレートよりも背が高い

ので、ひっくりかえしても自立しています。

8Ωの抵抗負荷で、設計通り、16V(p-p)でクリップしています。ちょうど4Wですね。


■ 動作確認

まず、終段のDCバランスをグリッド側を調整してあわせます。

各部の電圧と電流を慎重に確認します。初段のFETは2mA, 12SC7は1mA,終段は30mAと、

シミュレーション通りになってます。

オシロで波形をみて、発振が無いのを確認してから、スピーカにつないで試聴です。

最初の印象は、高音が綺麗で、残響がきれいに出るという感じです。3段差動の音なんでしょうか。

SA-81改(6DJ8-6GL7)より明るめですが、低音はなんか軽くてぼよんぼよんしています。

電源ONでハム音が全くしないのも、びっくりします。M-22改,SA-81改は、電源を入れた直後は

ぶーんという音が出ます。(ウォームアップすれば聴こえなくなりますが...)

室内楽だといいですが、オーケストラとかだと、苦しいですね。

ボリュームを上げて、音量は大きくなるけど、なんか必死という感じで余裕がないです。

4Wってこういうことなのかな...

でも、当初の目標であるテレビの音声用としては、問題なく、ものすごくスムーズな音です。


■ ARI印25CD6変則3結へ改造

アンプの弱点として、低音がゆるいという点が気になりました。ピアノの低音弦がゴムで出来たような感じに聴こえます。

さる掲示板で、SG電圧を上げずに、プレート電圧を上げて出力を上げればよいとのことで、ARITOさんがスペシャルなトランスを作ってくださいました。ありがとうございました。

一次巻線インピーダンス: 7kΩCT付

三結巻線インピーダンス: 3.43kΩCT付(一次巻線の70%)

二次巻線インピーダンス: 8Ωのみ

設計上の動作点は、P-K間 284V, SG-K間180V , Ip 48mA/本です。

届いたトランスは、このシャーシだと大きさがいっぱいです。(電源トランスがシャーシに対してでかすぎるので他のスペースを圧迫しています。)

10mm厚のアルミ板でLアングルを作って、なんとか搭載できました。

片ch 8.5Wほど出て、出力が倍以上になりました。音も低音の嘘っぽさがうすらいで、ちょっと迫力が出てきました。発振も無いようです。

これでオーケストラ曲でも何とか破綻なく聴けるようになりました。


■ 3段差動から2段差動へ変更

唐津のOFF会で「初段FETの音だよね」という指摘がありました。そういえば、M-22改と同じような音のようにも聴こえるような気もします。

初段を真空管にすればいいのですが、全部を真空管で3段差動構成にするためには、あと2本真空管を追加することになりますが、このシャーシだと取り付けスペースを確保するのに苦労しそうです。いろいろ考えた末に、初段のFETを取り去って、2段差動構成に変更してみます。

こうして、"初段FETの音" ではなくなりました。楽器にリアリティがあります。レンジは狭くなる傾向ですが、これはこれでまとまった音です。


■ 2段差動にV-FETの初段を追加して3段差動へ

真空管3段差動AMPは、もっと大きなシャーシを調達して作る必要がありそうですので、三極管特性を持った素子ならなんとかなるのでは?と、思いまして、初段に2SK79のV-FET差動を追加してみることにします。

2SK79のspiceモデルを作って検討してみましたが、6DJ8と同じような感じで使えるようですね。

初段の電源電圧は、17.5Vとします。

改造した直後は、サ行の音に付帯音がつきまとうというか、なんか変でした。帰還抵抗R6にパラっているC5の47pFに100pFを追加して、なんとか改善されたようです。リンギングを押さえないとダメなんですね。

音としては、V-FET独特の音というか、改造した直後なので、そういう音に聴こえてしまいます。(といっても、V-FETを使ったことが無い人には意味不明な説明だとは思いますが...)

しっとり、ちょいキラキラ?という感じですかね。2段差動のナローレンジなウォームな感じが無くなって、スッキリとした感じになりました。やはり、アンプの音決めに、初段は大切なんですね。

NFB抵抗は、最初は10kにしていましたが、周波数特性はフラットになるのですが、なんだか音が詰まった感じがしたので、20kに増やしてみました。こんどは、音像がぼやけてしまいます。ということで、中間の15kに調整しました。


■ 出力トランスの含浸と、配置の変更

京都オフで、トランスが錆びているというご指摘がありましたので、ニス含浸をしてみました。

使用したのは、近所のホームセンターで買ってきた、油性カラーニス「とうめい」です。

トランスから泡が出てきているのが見えます。一週間ベランダに吊るして乾燥させました。

さらにコアの端面を保護するために、金色のスプレーを吹いてみました。

出力トランスを外したついでというか、こっちの方が大仕事になるのですが、現状では電源トランスが縦型に取り付いていますので、伏型取り付けに変更します。

まずシャーシについている全部品を取り外します。

トランスの外形図、穴開け図を事務用のノリでシャーシに張り付けて、ディスクグラインダで一気にカットしました。

火花は出るわ、あて木が焦げる、塗装も焦げるという感じで大騒ぎですが、準備の時間に比べれば、穴開けはあっけなく終わってしまいます。あと、肝心の出力トランスの取り付けも横方向に変更しますので、穴をあけておきます。

あとは、外した全部品を取り付ければいいのですが、時間がかかりました。

せっかく部品を外したので、出力管のヒーター配線をトランスから供給するのをやめて、AC100Vから供給するように変更しました。

トランスを縦取り付けしていたときは、配線やら、ネジやらがうにょうにょと出ていて、ごちゃごちゃとしていて、高圧配線も収縮チューブで被っているとはいえ触りそうで危険でしたが、それと比べて、ずいぶんとすっきりとした印象になりました。

音は、回路定数をいじってないから変わらないはず...と思っていましたが、ハムノイズが大幅に低減しました。トランスの配置を変えたため、結果としてノイズを拾わない方向になったようです。


■ 測定

・周波数特性

・最大出力: L 11.7W, R 10.6W (8Ω負荷ノンクリップ最大)

・出力ノイズ電圧(入力ショート): L 0.22mV, R 0.22mV

・ダンピングファクター: L 19.3, R 16.3 (ON/OFF法 1kHz)


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