今回、私たちは全国の大気汚染状況を調査し、現状の把握と問題を明らかにすることを目的として研究しました。インターネットを使って全国から調査の協力者を募集し、 協力者に測定をお願いし、自宅周辺の大気の汚染について調べてもらいましたその結果、大きな建物の近くや車線数の多い道路の近く で、濃度が高いという結果が得られましたので報告します。 | |
地球環境の問題 現在、地球環境の問題として、二酸化炭素などの増加による地球温暖化の問題。酸性の強い物質が雨に溶け込んで降る酸性雨の問題。 酸性雨の影響で木が枯れて起こる森林の減少。乾燥地帯の環境のバランスが崩れて起こる砂漠化の問題。 私たちを有害な紫外線から守ってくれるオゾン層の破壊問題。 これらが、現在深刻な地球環境の問題としてあります。 |
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この写真を見てください。この写真はフィルムケースを並べて上から撮影したも のです。 このフィルムケース、一つ一つが全国の協力者に送って戻ってきたものです。ピンク、赤、白といろいろな色があるのがわかります。 赤い色が濃くなっているほど、汚染されていることを示しています。 一体なぜ、このような結果がえられたのでしょうか?これからその説明をしていき ます。 | |
研究の目的 私たちは2つの研究目的を立てました。 1つ目はインターネットを使って全国の大気汚染の状況を調査することです。その調査結果を日本汚染地図として制作します。 また、測定した環境と汚染状況との関係を明らかにすることです。 2つ目はその原因をさぐり解決策を立てることとしました。 |
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大気汚染を引き起こす原因となるものには、 窒素酸化物 硫黄酸化物 浮遊粒子状物質など他にも多数あります。 今回の研究では窒素酸化物について調査しました。 |
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窒素酸化物について説明します。 窒素酸化物は別名エヌ・オー・エックスと書いてノックスと呼ばれています。 窒素酸化物は物質の燃焼によって発生します。空気中の窒素が高い温度で燃焼することで化学変化するのです。 この図を見てわかるように、私たちの身近なものから発生しています。 この窒素酸化物がたくさんあると、ぜんそくの症状がでたり、酸性雨が降るという影響があります。 |
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二酸化窒素には基準値が定められています。環境省は0.04ppmから0.06pp mの範囲内またはそれ以下と定めています。ここで使ったppmという単位は大変小さい割合を表すときに使う単位です。 1ppmとは人にたとえると100万人に一人という割合の意味です。 私たちが測定する二酸化窒素の濃さは0.04ppm程度ですので、1ppmよりさらに低い濃度と言えます。 | |
測定方法 フィルムケースを使って空気中の二酸化窒素を集めます。 フィルムケースの中に二酸化窒素を集める薬品をつけた紙をいれます。 この紙に二酸化窒素が着く、かんたんな測定方法です。 測定するときは雨やゴミの影響をさけるために口の方を下にして貼り付けます。 測定が終わったら、検査用の薬品をいれると赤くなるので、その色で汚染状況を判断します。 |
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この写真はフィルムケースに紙を貼り付けているところです。紙は実験用の細長いろ紙を切って使いました。 このろ紙にあとから、検査薬品をしみこませます。単純な作業ですが、今回の調査用に900個くらい製作するのは大変でした。 | |
この写真はフィルムケースを送る時に、一緒に同封した測定表です。 測定表には・測定した場所の様子・測定した場所に一番近い道路の様子・天気・測定場所の高さを書いてもらいました。 この測定表をもとに私たちはデータをまとめました。 | |
この写真は全国の協力者へ送ったフィルムケースが戻ってきたところを撮影したも のです。封筒の中には測定済みのフィルムケースと測定表が入ってます。ご覧のようにたくさんの人が協力してくれました。 | |
これは、戻ってきたフィルムケースに純水を入れている写真です。 ろ紙についている二酸化窒素を亜硝酸イオンとして純水に溶かします。フィルムケースの数が多いので、このような器具を使用しました。 この器具は正確に一定量の純水を入れることができ、大変能率が上がりました。 | |
これは検査薬を入れているところです。 検査薬はザルツマン試薬と呼ばれる薬品です。この薬品と亜硝酸イオンが反応して赤くなります。 | |
これは試薬を入れて発色させた様子の写真です。 このフィルムケース、一つ一つが全国の協力者から戻ってきたものです。赤い色が濃くなっているほど、汚染されています。 フィルムケースには番号が付けてありますので、極端に濃い赤色になると、どこで測定したものか気になり、たびたび測定表で確認しました。 | |
目で見ても色の濃さはわかりますが、より正確に濃さを調べるために色の度合いを 測る比色計で計測しているところです。比色計の原理は簡単です。 液に横から光を当てて、どの程度、光を透すかを調べる仕組みです。 今回の場合は色の濃いものほど高い数値で計測されます。 | |
調査結果 今回の調査はインターネットで募集した全国の協力者におこなっていただきました。 全国一斉測定日を平成12年10月26日の午後8時から次の日の午後8時と決めました。 フィルムケースの送付先が179件で861個のフィルムケースを送付しました。 返送されてきたフィルムケースは728個あり、回収率にして84.6%のとても高い回 収率が得られました。 |
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この地図は今回の測定でわかった大気の汚染状況を表したものです。 回収した728個のうち、室外で測ったものは546個ありました。 この546個について日本地図に点を打ちました。 点は濃度の違いで色分けしています。濃い色ほど汚染されていることを示しています。 東京・神奈川・愛知・大阪などの大都市で濃い色が目立ちます。 | |
生活環境と濃度の関係を調べるために、協力者には測定場所を分類して書いても らいました。分類は1.大きな建物がある町の中 2.商店街に近い町の中 3.郊外の住宅地 4.まわりにあまり家がない 5.家の中 の5つの分類です。 | |
このグラフは、先ほどの分類で濃度の平均をグラフにしたものです。 縦軸は濃度で単位はppmです。 赤の線は環境基準にかかる0.04ppmを示しています。 大きな建物がある町の中で測定したものは0.041ppmとなり、他に比べて高い結果となりました。 | |
自動車と濃度の関係を調べるために、協力者に測定場所から一番近い道路は片側何 車線の道路ですかとたずねました。この図のような場合には片側1車線と書いてもらいました。 | |
このグラフは、測定場所に近い車線数と濃度の関係を表したグラフです。 グラフから3車線以上の道路で0.046ppmと高い数値を示し、環境基準の0.04ppm にかかっています。車線数が減るにしたがって濃度も低くなる関係がわかりました。 | |
上のグラフは天気と濃度の関係をグラフにしたものです。 同じ日に測定しましたが、雨の地域や曇りの地域、晴れの地域とさまざまでした。 晴れと雨の場合では、濃度にかなりの差があります。 下のグラフは測定した高さと濃度の関係を表したグラフです。 階があがるにつれて濃度が低くくなっていくことがわかりました。 | |
今回の調査でわかったことは 大きな建物がある町の中ほど濃度は高くなる。 車線数が多いところほど濃度が高くなる。 雨の日は濃度が低く、晴れの日は濃度が高い。 階が上がるほど濃度は低くなる。以上の4点がわかりました。 | |
考察 私たちの調査で車線数が多いほど濃度が高いことがわかりました。 このことから自動車が二酸化窒素の濃度を高くすると言えます。 このグラフは1994年度の東京都内の窒素酸化物の排出量を表してます。 このグラフを見てわかるように排出量の約7割が自動車によるものです。 特に都市部では大気汚染の状況は深刻です。 |
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次に全国の自動車台数を調べました。 このグラフの縦軸は自動車台数、横軸は年度です。 平成3年からグラフ化して見ました。平成9年には7000万台を超えています。 年毎に自動車台数は増加の傾向にあります。この状況が今後も続くと予想されます。 | |
自動車の台数が今後も増えて行くということから、どうすれば、空気がきれいになるのでしょうか? 車の使用をできるだけひかえることが必要です。たとえば、近くへの外出には自転車を使い、 遠くへ出かける時は公共機関をできるだけ使うようにすればよいでしょう。 また、排出ガスをよりきれいにした低公害車の開発を行い、その自動車を多くの人が購入することで、今後の空気をきれいにできると思います。 |
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今回の研究でインターネットを使い、多くの協力者と同じ問題を考えることがで きたのは大きな成果でした。 研究結果より、二酸化窒素の濃度と自動車排ガスとの因果関係が明らかとなりまし た。しかし、自動車を無くすわけにはいかないので、こらからの環境を守っていく ためには一人ひとりの心がけが大切であると思います。以上で発表を終わります。 |