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大分合同新聞(夕刊)1998年(平成10年)10月24日土曜日掲載

 

 「みんなが吸っている空気はどのくらい汚れているのだろうか」−。 鶴崎工業高校(大分市葛木・生野雅也校長)の生徒たちが28日、 身近な大気中に含まれる有害物質「二酸化窒素」の濃度測定を行う。 インターネットで全国に協力を呼び掛けており、当日は全国 33都道府県・計688カ所で一斉に測定し、結果を日本の大気汚染 マップにまとめる。測定を指導する同校化学工学科の塚田清隆教諭 (34)は「身近な環境を調べることで、広く環境問題を考え、 行動できる大人になってほしい」と期待を込めている。

 二酸化窒素は車や工場の排ガスなど、主に化石燃料の燃焼に伴って発生。 酸性雨や光化学スモッグの原因となるほか、気管支炎など呼吸器系に悪影響 をもたらす。環境基準は0.06ppm以下。県内の年平均値は0.008 〜0.017ppm(97年度)で、大気中の他の有害物質が横ばいか減少 傾向にある中、自動車の増加に伴い、年々増える傾向にある。
 塚田教諭は専門雑誌で見つけた二酸化窒素の簡易測定法に着目。1991 (平成3)年から測定を始め、「素人でも簡単に測定できる」と、94年か ら授業(課題研究)に取り入れた。96年からインターネットで全国に協力 を呼び掛け、今回は3回目の全国一斉測定。これまでの測定では、大都市ほ ど、また、道路に近い場所ほど濃度が高いという傾向が現れている。
 測定方法は写真のフィルムケースの中に試薬を染み込ませたろ紙を入れ、 外気に24時間さらす。ろ紙に大気を吸着させた後、試薬を加えて二酸化窒 素を化学的に発色。赤い発色の強さを分析機器で測り、濃度を計算する−と いうもの。協力者にはキットを送り、外気にさらして送り返してもらい、同 校で分析する。多少の誤差はあるが、大まかね実態は把握できるという。
 インターネットで協力を呼び掛けた結果、28日の一斉測定には全国各地 から過去最高の約130人が参加することになった。会社員、大学生、高校 生など個人のほか、学校のクラス単位の参加もあり、「環境に対する関心が 高いことに驚いた」と塚田教諭。インターネットで測定法法を紹介したこと で、学研が小学生向け学習雑誌の付録として採用するなど、全国から関心が 寄せられてる。
 測定キットの製作など準備は課題研究の授業で、梅木将一郎君(3年)ら 6人が行っている。梅木君らは11月から分析を始め、結果は塚田教諭のホ ームページで知らせ、来年1月の校内発表会で報告する。
 「簡単に二酸化窒素が測定でき、インターネットで全国の人々とつながり が持てるのが魅力」と生徒たち。塚田教諭は「環境教育の教材として今後も 測定を続けたい」と話している。


kankyo@oct-net.ne.jp

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